九百四十三話 新事業の認可

 新年の謁見が終わって通常業務が始まると、辺境伯様は領地に戻らずに会議に出席しました。

 辺境伯領で行う、ある事業の認可の為です。

 僕とジンさんも、会議に出席しています。


「書類は揃っている。では、事業を認可しよう」

「ありがとうございます」


 実は辺境伯領の領都の人口が多くなってきたので、新たな町を作る計画を立てました。

 場所は領都と帝国との国境の町の間で、ちょうど中間点にあたる場所です。

 せっかくなので、大きな町にする計画です。

 これは、帝国で万が一何かあった際に領都の防壁になる機能も持たせています。


「アレクとジンでは報告するものとして問題があるから、グロスター侯爵を監督者として命ずる」

「畏まりました」


 僕とジンさんは辺境伯領に住んでいるから、辺境伯様に有利な報告をする懸念もあるという。

 念の為ということで、グロスターのおじいさまに事業監督者になってもらいました。


「この事業をモデルに、王都の新たな衛星都市を作る。魔法使いがどれだけ役に立つかを調べるので、アレクたちもどんどん動いて良いぞ」


 あの、陛下のその言い方だととんでもないことになりそうですけど。

 主にリズあたりが。

 スラちゃんは、既にやる気満々って感じです。

 どうやって、みんなに説明しようかと思ったら、辺境伯様が今後の計画について話をしてくれた。


「最初にある程度の土地を平らにしたら、そこからは測量が終わるまでやることはないよ。まあ、必要な木材の切り出しや加工はあるかもしれないけど、職人の手も限られているからね」


 そっか、魔法できるところは限られているし、建築に関してはプロの手が必要だ。

 僕たちは、出来ることを頑張れば良いんですね。

 あと、リズたちへの説明は辺境伯様がしてくれるそうです。

 会議はこれで終わったので、僕たちは執務室に戻ります。


「じゃあ、リズもいっぱい頑張らないとね! 荷物運びもやっちゃうよ」

「エレノアも、怪我人が出たら治すよ!」


 辺境伯様がリズたちに説明したら、やっぱりリズたちはとても盛り上がっていた。

 久々に、フルパワーで動ける事業だもんなあ。


「でも、あくまでも辺境伯様とジェイド様が主体の事業だし、監督者のグロスターのおじいさまに迷惑をかけないでね」

「「「はーい」」」


 ここは聞き分けの良いリズたちなので、素直に了承していた。

 とはいえ、色々な物を作らないといけないから、お金も沢山掛かりそうですね。


「そこは大丈夫だよ。税収も増えているし、きちんと予算配分してあるよ」

「というか、かなりの税収になるから国庫に納める分を差し引いてもかなり余る。新しい街づくりは、ちょうど良いタイミングとも言えよう」


 陛下も言葉を続けたけど、お金の問題が解決しているのなら全然問題ないですね。

 さっそく明日から活動開始するみたいなので、僕としてもとても楽しみです。

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