九百三十五話 三人の絆が詰まった披露宴
準備ができたので、さっそく披露宴を始めましょう。
「それでは、新郎新婦の入場です。皆さま、大きな拍手で迎えて下さい」
「「「わー!」」」
お色直しをした新郎新婦が、多くの拍手と歓声に迎え入れられました。
新郎もそうだけど、新婦もとても良い表情をしていますね。
そして、各テーブルに挨拶をして二人は自席につきました。
では、ここから結婚にまつわるヒストリーを披露します。
「ここで、今回の結婚にまつわるちょっとした裏話を皆さまにお話します。新郎、新婦、そして亡くなられた奥様は昔から仲が良い事で有名でした。しかし、奥様は体が弱く自分の死期を悟っていたそうです。そこで、新郎は奥様と結婚する決意を示し、奥様は新婦に亡くなったら旦那を宜しくと伝えていたそうです」
僕は、この話を聞いた瞬間に絶対に伝えるべきだと思いました。
お互いがお互いを思い合っている、とても素晴らしいことだと思っています。
「そして、今日新婦が身につけたウェディングドレス、そして今着ているドレスは亡くなられた奥様のものとなります。まさに、三人で結婚式を迎えています」
会場で、来賓のすすり泣く声が聞こえています。
そして、新郎新婦と亡くなった奥様の親族席は、もう嗚咽が止まらない状態です。
新婦もハンカチで涙を押さえていて、新郎が支えている状況でした。
「亡くなられた奥様は、とても明るい方だと聞いております。是非、披露宴も明るく楽しく行いたいと願っているはずです。それでは、三人によるウェディングケーキ入刀です」
ルーカスお兄様、アイビー様、ルーシーお姉様が、とても立派なウェディングケーキを運んできました。
そして、新郎新婦は想いを馳せながら、ケーキ入刀を行いました。
もちろん、会場中から割れんばかりの拍手です。
そして、歓談の時間になってようやくひと息つきました。
ふう、ようやくひと息つきます。
僕も、ミカエルたちがいる子ども用のテーブルに向かいました。
「「「おつかれー」」」
「はは、ありがとうね」
ジュースを飲んでご機嫌なミカエルたちに迎えられ、ネコちゃんには約束通りの特製お肉が振舞われていました。
ネコちゃんは、結婚式で新婦を守ったヒロインですもんね。
そして、すぐさまカレン様が話しかけてきました。
「アレク様、とても素晴らしい司会でしたわ。私もこのエピソードを聞いた時は、何と素晴らしいことなのかと感動しましたわ」
「僕も、この話は絶対にしないと駄目だと思いました。スラちゃんの描いた絵もとても良い笑顔でしたし、全てを受け入れた新郎がカッコいいと思いました」
「そうですわね。きっと亡くなった奥様も、天国からお二人を笑顔で見守っているはずです。とても素晴らしい話なので、是非とも教皇猊下にお伝えしなければと思いました。このような素晴らしい結婚式に携われて、私は幸せですわ」
貴族という立場もありながらこの様な選択を行った新郎新婦、そして家族にカレン様はとても感動していました。
では、順番が来たみたいなのでみんなで新郎新婦と家族に挨拶に行きましょう。
「はい、ではご挨拶しましょうね」
「「「おめでとーございます!」」」
「ガゥ!」
「「みんな、ありがとうね」」
アイビー様の合図でちびっ子軍団がお祝いの言葉を言うと、新郎新婦も思わず笑顔がこぼれます。
ネコちゃんも、新郎新婦にすりすりしていますね。
そして、僕は新婦の妹さんであるエマさんとオリビアさんの同級生と話をしました。
「アレク様、今日は本当にありがとうございました。思い切って、アレク様にお願いして正解でした。こんな素晴らしい結婚式になるとは、私たちも思ってもいませんでした」
「僕も、素晴らしい結婚式のお手伝いができて本当に良かったと思っています。良い経験になりました。特に三人の秘話には、僕も感動しました」
「きっと、亡くなったお義姉様も、一緒に結式を楽しんでいるはずです」
涙の痕が見えたけど、それでも妹さんはとても良い笑顔でした。
新郎新婦のところに集まっている同級生もみんな笑顔で、特に話を知っている人は口々に良かったなと言っていました。
そして、ルーカスお兄様、カレン様、リズのところには親族が集まっていて、こちらも笑顔でありがとうとお礼の言い合いをしていました。
こうして、素敵な結婚式は無事に幕を降ろしました。
ちなみに、この三人の秘話を聞いた教皇猊下と枢機卿はとても感動し、お互いを思いやる大切さを説いた説法として直ぐに採用していました。
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