九百三十六話 手間のかかるお兄ちゃんとおじいちゃん

 無事に結婚式のフォローも終わったので、次は王都での五歳の祝いが大きなイベントとなります。

 とはいっても、貴族の子弟が対象なので関係者で五歳になる人はいません。

 来年は、ルカちゃんエドちゃんもいますけどね。

 もちろん、お仕事なのでしっかりとやります。


「はぁぁ、ルルーに子どもが……」

「クラヴィーアに子どもが、心配だ……」

「駄目だこりゃ。暫く使い物にならないわね」


 しかし、ジンさんだけでなく宰相まで気持ちがどよーんとしていました。

 普通は身内の妊娠発覚は吉報なんだけど、シスコンのジンさんと家族思いの宰相にとっては胃が痛い出来事みたいです。

 シーラさんも思わず匙を投げ出すレベルだけど、二人とも五歳の祝いの担当というか責任者に近い立場なのに使い物にならないので、思いっきり余波が僕に押し寄せていました。

 幸いにして他の人が手伝ってくれているので何とかなるけど、流石にきついのでこの人をスラちゃんに呼んで貰いました。


 ズゴゴゴ!


「ジン、お父様、流石に腑抜け過ぎると思うのですが……」

「二人とも、お仕置きが必要ですね……」

「「へっ?」」


 たまたま実家に行っていたレイナさんと宰相の奥さんを呼び寄せたら、へんにゃりとしている二人の姿を見て大激怒していた。

 そして、シーラさんの案内で二人を会議室にズルズルと引きずり込みました。

 暫く、お説教の時間が続くはずですね。

 きっとお説教が終わる頃には二人とも復活しているはずだし、僕はこのまま作業を続けましょう。


「今年は、昨年よりも五歳になる貴族の子が少ないんですね。これなら、警備も少し楽になりそうです」

「特に問題のある貴族家はなさそうですし、その点も安心材料です。ただ、来年はこうは行かないので、今年は終わった後の反省と改善をしっかりとしないと駄目ですね」


 ナッシュさんと当日の手順の整理を行うけど、来年は王家に辺境伯家にジンさんのところがある。

 間違いなく、ドタバタするのは目に見えていました。

 そして、何気なく司会が僕になっているのは、きっと目の錯覚だと思いたいです。


「間違いなく、この前の結婚式の対応が好評だったからだと思いますよ」

「ローリーさん、この前の結婚式の司会がなくても毎回司会なんですよ……」


 結婚式のスタッフの指名依頼をやった結果、うちの結婚式も司会をして欲しいという依頼が来ていたのだ。

 でも、もう今年は冒険者活動する暇もなさそうだし、申し訳ないけど断ろうとしていた。

 そうしたら、いま手の空いているリズたちがやると意気込んでいて、結局僕抜きで結婚式のスタッフをする事になりました。

 なんだかんだいって、リズのハキハキとした明るい話し方も好評なんだよね。

 そして、ミカエルを始めとしたちびっ子軍団のフラワーボーイとフラワーガールもとても評価が良く、ちびっ子軍団にも依頼がきているそうです。

 最低でも、ティナおばあさまの許可が出ないと駄目ですけど。

 さてさて、未だに会議室がドタバタとしているから、二人が仕事にもどるのはもう少し先になりそうですね。

 何とか内務卿に提出できるだけの状態に持っていけたので、僕は書類を手にして内務卿の執務室に向かいました。

 そして三十分後、宰相執務室に帰ってくると会議室から真っ白に燃え尽きた二人が運び出されました。

 うん、これは酷い。


「えーっと、何があったんですか?」

「あまりにも情けなかったから、スラちゃんに頼んでルルーとクラヴィーアのところに連れて行ってもらったのよ。そうしたら、二人ともものすごく怒ったのよ」

「『私たちのことよりも、自分のことを心配して下さい!』って感じなのよ。さすがに、直接強く言われてショックを受けたみたいだけどね。でも、頑張らないと生まれてくる子どもにも会わせないと言ってあるから大丈夫でしょう」


 というか、レイナさんも奥さんもかなり怒っていますね。

 まだトドメのレイカちゃんが出てきていないあたり、二人は手札を残しているんですね。

 そして、燃え尽きた二人も昼食を食べると何とか復活しました。

 本当に、手のかかるお兄ちゃんとおじいちゃんですね。

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