九百二十六話 結婚式とブーケプル

「それでは、神に新しい夫婦が誕生することを報告する」


 司祭様が厳かに言葉を発すると、教会内が一斉に静まり返った。

 もちろん、新郎新婦のキースさん、エマさん、オリビアさんも真剣な表情をしています。

 来賓も、特に辺境伯様、イザベラ様、先々代夫人も真剣な表情で新郎新婦を見守っていた。


「汝、キース・サギーは、エマ・ホーエンハイム、オリビア・ホーエンハイムを妻とし、終生愛することを誓いますか?」

「誓います」

「エマ・ホーエンハイム、並びにオリビア・ホーエンハイムは、キース・サギーを夫とし、終生愛することを誓いますか?」

「「誓います」」


 愛の宣誓が終わり、そしてお互いに指輪を交換します。

 そして、いよいよメインイベントとなります。


「それでは、お互いに誓いの口づけを」


 司祭様の言葉のあと、キースさんは新婦二人のベールを上げます。

 そして、それぞれに誓いの口づけをしました。


「おお、ここに新しい夫婦が誕生しました。いま一度、盛大な拍手を」


 パチパチパチ。


「「「おめでとー!」」」


 一瞬照れた表情を見せたけど、新郎新婦は改めて気を引き締めて深々と一礼しました。

 教会中から大きな歓声が上がり、同時に大きな拍手が教会内に鳴り響いた。

 辺境伯様は表情を緩めて何度も頷いていて、イザベラ様はハンカチで目じりに浮かんだ涙を押さえていた。

 先々代夫人はというと、号泣が止まらないのかハンカチではなくタオルみたいなもので顔を覆っていた。

 そして、新郎の両腕に新婦が手を組み、ゆっくりと退場していきます。

 再び大きな歓声が上がっているけど、中には新郎を冷やかしている人もいた。

 何にせよ、これで無事に結婚式は終了です。

 次は、お待ちかねのブーケトスなので、教会内から順に来賓が出て行った。

 因みに、ブーケトスはもはや辺境伯領でお馴染みの形式になった。


「今回新婦が手にした二つのブーケは、辺境伯家の双子ちゃんも一生懸命に作りました。なので、ボロボロになると双子ちゃんが泣いちゃうかもしれません」


 手先の器用さを生かしてリズがブーケを二つ作っていたけど、もはやブーケ職人としても生計を立てていけそうです。

 もちろん双子ちゃんも一緒に花を選んだりしていたので、猛者たちがブーケを巡って争ってボロボロになったら双子ちゃんだけでなくレイカちゃんたちも大泣きは必死です。

 なので、いつも通りブーケプルを行います。

 しかも、今回はブーケが二つあるのでチャンスも二倍です。

 独身男性もオッケーなのが辺境伯領のルールなので、せっかくということで多くの男性もブーケプルに参加します。

 ちなみに、ローリーさんは結婚が決まっているので辞退していました。

 準備が出来たところで、司会のアナウンスが開始を告げました。


「準備もできたみたいですね、それでは紐を引っ張って下さい」

「ああ、外れた」

「私も駄目だったわ」

「ははは、まあ外れるだろうな」


 特に女性陣から大きな不満の声が聞こえてきた中、見事に当たった人が。


「あっ、当たったぞ!」

「おー! 俺もだ!」


 何と、今回は二つとも男性が引き当てました。

 うん、外れた独身女性の恨めしい視線が降り注いでいるけど、男性二人は仲間に手荒い祝福を受けていたので視線に気づく余裕が全くなかった。


「当たった方、おめでとうございます。幸せが訪れますように」


 司会も、普通に終わりにしていました。

 こればっかりは、運だから仕方ないですね。

 では、今度は町中のパレードの準備です。

 オープンタイプの馬車や騎馬隊などが、わらわらと準備を始めました。

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