九百十五話 中々帰ってこないなあ

 炊き出しの後は、リズたちが王城を案内する予定です。

 その間は、いつも通りに宰相執務室で仕事を行います。


「にゃー、にゃー!」

「グルル」


 またもやアリア様がお仕事でいないので、執務室でエリちゃんを預かっています。

 エリちゃんもだいぶ喋るようになってきて、友達のネコちゃんと仲良くお喋りしていました。

 しかし、ネコちゃんも飛天虎だけあって本当に大きくなったね。

 小さな赤ちゃんだった頃が全く思い出せないくらいの成長ぶりです。

 そして、エリちゃんはネコちゃんと兄姉以外でも大好きな存在があった。


「ろー、ろー!」

「エリちゃん、抱っこですね」


 エリちゃんはとことことローリーさんのところに歩いていき、両手を広げて抱っこのアピールをしていた。

 ローリーさんはエリちゃんに限らず他の赤ちゃんメンバーにも好かれている、とっても優しい雰囲気があります。

 ネコちゃんもローリーさんに懐いているし、動物にもとても優しいです。

 この執務室には護衛の兵も待機しているし、お世話係の侍従だけでなく子育て経験が豊富なシーラさんもいるのでとても安心です。

 ちょうどローリーさんもお仕事が終わったタイミングなので、抱っこするにも都合が良かったですね。

 さて、そろそろ今日の仕事を終える時間帯なのに、リズ達が帰ってきません。

 一体何をしているのかなと思ったら、何かをやり切ったという表情のリズ達と疲れ果てているブライトさん達の姿があった。


「リズ、随分と時間がかかったけど何をやったんだ?」

「あのね、閣僚や陛下にみんなを紹介していたの。他にも、偉い人と会ったんだよ」

「お母様にもあったの。炊き出しのことも褒めていたよ」


 王城に数回しか来た事がないのに、大物とずっと話をしていたなんて。

 そりゃ、精神的に疲れるはずです。

 メアリも苦笑しながら頷いていたので、リズ達の言っている事は間違いではなさそうだ。

 心の準備なしに偉い人のところに行って、更に王城中を案内していたそうです。


「それでね、来週リルムちゃんが来る時にも一緒にいる事になったんだ」

「エレノアのお友達を紹介してあげたいの」


 リズにエレノアよ、リルムはアダント帝国の皇女様って説明をキチンとしたのかな?

 もしかしたら、王国にいるどこかの貴族の令嬢だと思われているかもしれないよ。

 メインは僕も立ち会う定期的な二国間会議だけど、その間は一緒に遊んでいそうですね。


「じゃあ、これで終わりなら帰るぞ」

「「「はーい」」」


 そして、ジンさんの声で今日の業務は終わり、僕たちは屋敷に帰っていきました。

 午前中の炊き出しと午後の王城見学と、今日はかなり中身の濃い一日だったはずです。

 相当疲れたのか、ブライトさん達は屋敷に着くなり早々にお風呂に向かっていきました。


「ねーねー、僕も王城に行くの?」

「ミカエルとブリットも、来週は王城に行くよ。リルムが二人に会いたいんだって」

「「やったー」」


 ミカエルとブリットはリルムに何回も会っているし、優しいお姉ちゃんって印象です。

 レイカちゃんたちも一緒に参加するみたいだし、中々賑やかな事になりそうです。

 帝国との会談が終われば教皇国と共和国とも話し合いをしないとならないし、暫くは忙しい日々が続きそうです。

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