九百十四話 みんなで王都の教会前の炊き出し

 今日はお仕事の一環で、大教会前で炊き出しを行います。

 もちろん新人職員も一緒についてくるけど、今日はブライトさんやヘイリーさんも一緒に参加します。

 残念ながら回復魔法持ちはいなかったけど、その分炊き出しを頑張ってくれる事になっています。


「今日はドンドンと治療しちゃうよ!」

「ブリットも!」


 回復魔法持ちは沢山いるし、何よりもミカエルたちが張り切っていました。

 僕とジンさんはというと、いつも通りスラちゃんと一緒に料理班です。


「じゃあ、私も腕を奮おうかしら?」

「そうね、やる気を出さないと!」

「だー! お前らは大人しく列の整理をしていろ!」

「「「うん?」」」


 いつものジンさんとレイナさん、それにカミラさんの漫才が繰り広げられているけど、ブライトさんたちは何が何だか分からなかった。

 破壊王のデス料理は、知らない方が精神衛生上とても良いですよ。

 既に治療大得意のリズたちが無料治療を始めているし、僕もドンドンと野菜を切っていきます。


 トントントン、トントントン。


「アリサさんは、包丁をとても上手に使いますね」

「アレク様、ありがとうございます。こう見えて、お菓子作りが趣味ですのよ」


 新戦力のアリサさんに負けじと、何故かスラちゃんが張り切っていました。

 ブライトさんたちも順調にスープの入ったうつわを配っているし、今のところ何も問題ないないですね。


「「「ヒヒーン」」」

「おっ、コイツね」

「じゃあ、お説教コース確定ね」

「えっ、はっ?」


 ポニさんたちも新戦力に負けじと頑張っているので、ドンドンと不審者が捕まっていました。

 やる気が溢れているので、物陰に隠れている不審者も捕まえていきます。

 もちろん町の人から意見を集めるのも忘れずにやっていて、新人職員が忙しそうに動いていた。

 実は教会に新しいシスターも入ったので、勉強を兼ねて炊き出しと無料治療を手伝っていました。

 ブリットもシスター服を着て手伝っているから、町の人から見たら新人シスターにも見えますね。

 既に治療はベテランの域に達しているけどね。


「うーん、今日はそんなに忙しくないね」

「炊き出しの方が、人が多いの」


 途中からリズとエレノアが暇そうにしていたけど、思った以上に治療を受ける人が少なかった。

 というのも、元から治療を受ける人はスラム街の人が多く、時々スラム街での炊き出しと無料治療をしているので、相対的に治療が必要な人が少なくなっていた。

 とても良いことなんだけどリズたちは動くのが好きなので、炊き出しを配る方に移動していた。

 そして、ある意味もっとも活躍していたのは、このペアだった。


 ふわっ。


「キュー!」

「なっ!」


 しゅっ。


 マジカルクラウドのクモさんに乗ったポッキーが、不審者の背後や頭上からこっそりと近づいて短距離転移を使ってドンドンと兵の前に連れて行った。

 まるで暗殺者のような早業に、不審者はなすすべもなかった。

 犯罪組織を潰しても次から次へと生まれるから、本当にしつこいですよね。


「わー、まてー!」

「捕まえるぞ!」

「グルル」


 そして、ドラちゃんはいつも通り子どもたちの相手をしていた。

 今日は教会の前のスペースが使えるので、追いかけっこをしています。

 これはこれで子どもたちに好評なので、ある意味お手柄といえましょう。

 こうして予定通り午前中で炊き出しと無料治療を終え、新人職員はさっそく意見の集約を始めていた。

 もう何回もやっているから、随分と慣れてきました。

 集めた意見を僕の通信用魔導具で閣僚に送り、これで全部完了です。


「初めての炊き出しはどうでした?」

「大変でしたけど、良い経験になりました」

「今まで知らなかった王都の様子を見る事もできて、良い勉強になりました」


 ブライトさんとヘイリーさん達も、充実した表情を見せていた。

 今後もこうした福祉事業を体験して、色々な経験を積むことになります。

 もう少し頑張れば、特別調査部隊に参加できますね。

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