転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

九百五話 デンバー男爵の葬儀の行方

　ブライトさんは心身の休養をしてもらうことにして、事件への対応は軍と内務部門で対応する事になりました。

　正妻とブライトさんの兄弟が行った事件はかなり根深く、やはりというかデンバー男爵家の資金流入が新興犯罪組織の成長に寄与していました。

「拠点は殆ど潰しましたが、正直なところここまで大きな犯罪組織になっているとは思いませんでした。間違いなく、デンバー男爵家からの資金が大きく寄与しております」

「他の犯罪の予兆を止めることはできたが、残念ながらデンバー男爵家にとっては良くないことだな。跡目争いもそうだが、ここまで犯罪組織に関与しているのは残念なことだ」

　今は会議中で、ジンさんと共に軍務卿からの報告を聞いています。

　陛下も、こればっかりは頭がかなり痛いみたいです。

「処分に関わらず、デンバー男爵の葬儀と埋葬は許可しよう。もちろん、葬儀を取り仕切るのはブライトだ。そのくらいの配慮は、余とてしてやらないとならない」

　デンバー男爵の遺体は検死が終わったけど、一連の事件の関係でまだ軍の元にあります。

　冷凍魔法で保存して棺に収められているので、後は葬儀の手はずさえ整えば大丈夫なはずです。

　ブライトさんに話をしないといけないのだけど、ここは僕が話をした方が良さそうです。

　屋敷に帰ったら、辺境伯様にも立ち会ってもらってブライトさんに説明しよう。

　会議が終わった後、仕事をしながらそんな事を思いました。

「そういうことなら、私も同席しよう。ここは、大人の私が説明した方がブライトも理解するだろう」

　仕事が終わって先に辺境伯様に話をしたら、色々な事を引き受けてくれました。

　ジンさんも話に立ち会うそうなので、僕たちは準備を整えてから辺境伯様の屋敷に向かいました。

　ブライトさんの他にも、シダーさんとレアさんも着いてきました。

「ブライト、そなたの父であるデンバー男爵の葬儀の段取りをしないとならない。縁のある教会へ連絡をするのと、誰を呼ぶのかを決めないとならない。もちろん、そなたが全てを背負う必要はなく、シダーとレア、そして屋敷の信頼できる者に指示をするのが良いだろう」

「配慮頂き、ありがとうございます。昔から付き合いのある教会がありますので、そちらに声をかけてみます。また、捕縛されていない侍従は信頼できる者ですので、一度屋敷に戻って話をしてみます」

　辺境伯様の話を聞いて、ブライトさんは直ぐにどうするかを考えていました。

　デンバー男爵家の使用人は、執事をはじめとして多くの者が犯罪組織に関与しているという罪で捕まっています。

　そういう意味では、残った人たちはある程度信頼できる人と言えましょう。

　屋敷への捜索は続いているけど、葬儀の話をするのは陛下からも問題ないと言われています。

　参加者については、こんな意見もありました。

「もしかしたら、デンバー子爵などは葬儀に参加しないかもしれない。なにせ、当主が捕まっているからな。私たちも葬儀に参加するから、参列者が少ないなどは心配しなくて良い」

「あ、ありがとうございます……」

　辺境伯様も葬儀に参列してくれることになったけど、僕とジンさんたちも葬儀に参列する予定です。

　そして、辺境伯様はブライトさんに語りかけました。

「色々と思うところはあるかもしれないが、そなたが父を立派に神の世界に送り出してやるのだ。それが、そなたの最後の親孝行というものだ」

「ありがとうございます。私は父と確執があった訳ではありませんので、しっかりと天に送り出してやりたいと思います」

　ブライトさんは、辺境伯様の目をしっかりと見てハッキリとした口調で答えていました。

　まだ心は落ち着いていないと思うけど、決意は固いみたいです。

　それなら、僕たちは上手くサポートできればいいですね。