九百四話 意気消沈
下手に伝えるよりも正直に伝えた方が良いと思ったので、僕たちは報告も兼ねて王城に行き、そして辺境伯領からブライトさんを連れてきました。
辺境伯様も同席してくれる事になり、陛下と閣僚が集まっている会議室に集まりました。
「陛下、皆さま、この度はデンバー男爵家の醜態をさらすこととなり、大変申し訳ございません」
「まずは謝罪を受け入れよう。犯罪組織と手を組んでいた事は、デンバー男爵家としての罪となる。まずは話を進めるとしよう」
会議の冒頭、ブライトさんが陛下に謝罪をしました。
陛下も罪の大きさを把握しているので、厳しい表情だった。
そして、同行した兵により様々な事が報告された。
「報告いたします。デンバー男爵の死因は、毒死であることが確定しました。しかも、複数の毒によります」
兵の報告を聞いたブライトさんが、唇をかみしめて膝の上に置いた両拳を握りしめていました。
泣きそうな表情を、ぐっと我慢していました。
しかし、この後の報告が衝撃的でした。
「事件の主犯は、デンバー男爵夫人となります。そして、デンバー男爵夫人は自身の子どもから毒薬を受け取り、デンバー男爵に飲ませました」
全員が、あまりの内容に衝撃を受けていました。
まさか、あの横に大きい夫人が主犯だったとは。
これには、ブライトさんもビックリしていました。
「デンバー男爵夫人は、長年デンバー男爵と確執を抱えていました。そして、息子の跡目争いを利用して、デンバー男爵家を支配するのを目論んでいました。息子は息子で夫人から色々と精神的な支配を受けていて、息子同士で殺し合うように仕向けていました」
そういえば、あのデンバー男爵夫人はデンバー男爵の葬儀のことなど一切進めていなかった。
それに、デンバー男爵の遺体が搬出されるよりも息子が連行されるのを気にしていたっけ。
いくら跡目争いが起きていても、普通母親は息子を止めに入るはず。
家臣を四分割するほどの事態なのに、止めることもしなかったのはそういうことでしょう。
実際に、どの息子が次期男爵になっても徳をするのは母親です。
「また、側室の殺害にも夫人は関与していました。側室は毒殺された模様で、これも夫人の指示によります」
「えっ……」
何となく想像できたけど、ブライトさんが受けた衝撃はとても大きかった。
それにしても、本当にやりたい放題していたんだ。
この辺の情報は、執事から持たされていました。
もう、この場にいる全員が溜息が出るばかりです。
「当分、ブライトは辺境伯預かりとしよう。この状況では、爵位を継げるかどうかも分からないぞ」
「畏まりました」
ブライトさんに話を聞くことは殆どないので、引き続き辺境伯領での生活が続きます。
今後のことを考えると、ある程度のお金は必要ですね。
そして、またもやビックリする事が会議室に入ってきた兵によってもたらされました。
「報告します。エリザベス殿下を含むメンバーにて、二箇所目の犯罪者組織の拠点を制圧しました。拠点より、デンバー男爵夫人と犯罪者組織のやり取りを示す書類が発見されました」
「図らずも、夫人が犯罪者と繋がっていた証拠が見つかったのか。夫人の聴取如何では、夫人の実家も調べないとならないな」
陛下も、思わず頭を抱えそうになるレベルの話です。
というか、これはさっき手柄をポッキーたちに取られたからリズたちとレイナさんたちが張り切ったんだ。
当面は各所から押収した書類の精査と、拘束した者の尋問がメインになります。
しかし、一家揃って犯罪者組織に加担していたとなると、デンバー男爵家に厳しい処分が下されるのは間違いありません。
改めて現実を知ってしまったブライトさんは、酷く落ち込んでしまいました。
「ブライトよ。今回の件で、そなたは酷く落ち込むだろう。打ちひしがれるだろう。しかし、そなたを支える存在もいる。アレクたちも、そなたを支援するだろう。今は心を休め、静養に努めた方が良いだろう」
「ご配慮頂き、感謝いたします」
陛下も、かなり落ち込んでいるブライトさんを気遣っていた。
会議はこれで終わり、辺境伯様とブライトさんを送りつつ、シダーさんとレアさん、それにヘイリーさんにも何があったかを話しました。
「我々にもお伝え頂き、感謝申し上げます」
「ブライト様の様子を、私も注視いたします」
「僕も、ブライトさんと話をしてみます」
三人とも、ブライトさんを支えてくれそうです。
侍従のお姉さんにも軽く話を伝えて、様子を見てくれると言ってくれました。
これで大丈夫だと思い、僕は王城に戻りました。
「そんな事があったんだ。酷い話だね」
「本当だわ。自分の父親と母親を毒殺された事になるのよ。ショックも、凄い物があるはずよ」
「私も、話をしてみるわ。一人で抱え込まない様にしてあげないと」
王城に帰ってきていたリズやレイナさん、カミラさんも犯罪者拠点を潰した喜びよりもブライトさんを優先してくれました。
プリンを除いたスラちゃんやポニさん、それにポッキーたちも屋敷に帰ってブライトさんの様子を見てくれるそうです。
その後も僕とジンさんは会議に参加していましたが、一連のことでかなり疲労が残ってしまいました。
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