九百一話 やりすぎないようにしましょう

 翌日、辺境伯様が内務卿経由でデンバー男爵家に連絡をすると、迷惑をかけたと返信があったという。

 形式上の謝罪だったけど、とりあえずブライトさんはこれで大丈夫です。


「僕が勉強で使っていた参考書です。これで勉強してみて下さい」

「それでも難易度は高そうですが、頑張ります」


 ヘイリーさんは物すごい決意を持って参考書を受け取ったけど、学園入園前のレベルだからそこまで難しくないよ。

 それよりも、今日はこの人たちが講師なのが心配です。


「久々に教え甲斐のある生徒だわ」

「ふふ、そうね。この際だから、礼儀作法まで教えましょう」


 今日は王城に行かないレイナさんとカミラさんたちが、四人プラスちびっこ軍団の勉強をみることになりました。

 リズたちがご愁傷さまという表情を見せているけど、やっぱりテスト連発はキツかったらしい。

 今日はそこまでの用事もないし、各部署の改革案もでたので現地視察もありません。

 難題はデンバー男爵家の件だなと溜息をつきながら、僕達は王城に向かいました。


「デンバー男爵家が、不穏な動きを見せているのは間違いないか。現時点では動けないが、動けるだけの証拠を掴んだら屋敷の偵察に入ろう」


 別件で宰相執務室に来た陛下が、遂に屋敷の偵察について言及しました。

 因みに、屋敷の場所はブライトさんから聞いているので、スラちゃんはいつでも動けます。

 マジカルラット部隊も動けるみたいなので、スタンバイしてもらいましょう。


「しかし、次から次へと犯罪組織が生まれてくる。いたちごっこで、中々難しいのう」


 お菓子をバリバリと食べながら、陛下が愚痴をこぼしていました。

 僕たちも炊き出しの時に不審者を良く捕まえるし、本当に面倒くさいんだよね。

 この件はもう少し待ちになったけど、陛下は別件が気になっていた。


「ジンよ、今日はレイナ達が四人を教えていると聞いたが、やり過ぎていないだろうな?」

「それは何とも言えません。ただ、良い生徒を見つけたと言っていました」

「エレノアの同学年になるのだから、優秀な人材に育てるのは問題ない。帰ったら、様子を見てやれ」


 四人は基本的な教育しか受けていないので、僕たちのレベルにはいきなりついてこれないと思います。

 礼儀作法も教えると言っていたけど、レイナさんたちは意外とスパルタだもんなあ。

 そんなこんなで、お仕事をしていきます。

 因みに、ナッシュさんとスタンリーさんはリズたちが集めた情報を分析するのに大忙しです。

 お任せしてすみませんと言ったら、このくらいの仕事なら全然大丈夫と言ってくれました。


「「「「ふへぇ……」」」」


 そして念の為にお昼に屋敷に帰ったら、ヘロヘロになった四人の姿がありました。

 その瞬間、僕とジンさんはあちゃーってなっちゃいました。


「おい、どのくらいの勉強をしたんだよ……」

「レベルを確認する為のテストをしただけよ。学園入試レベルだけど」

「基礎はまあまあできているから、弱点を潰していけばいいわね。当分は冒険者稼業と並行で、勉強と礼儀作法をみっちりやればいいわ」


 レイナさんたちは、さも当たり前といった感じで言っていました。

 レイナさんたちの勉強を乗り切れば普通の勉強なんて楽勝だけど、何事も程々にしないと。

 因みに、午後は礼儀作法と護衛としての心得がどこまでできているかを確認するそうです。

 これは当分は大変なことになりそうだと思いつつ、僕とジンさんは王城に戻りました。

 ついでということで礼儀作法にはなぜか庭でお昼寝をしていたドラちゃんも強制参加だったみたいで、王城から帰ってきたら更にもう一匹ヘロヘロになっていました。

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