九百二話 炊き出しで起きた事件

 二週間ほどは特に問題も起きず、その代わりに四人は集中的に冒険者活動や勉強を受けていた。

 連日ヘロヘロになっていたけど効果は絶大で、今は監視しているという名目で辺境伯様の仕事を手伝って統治とは何かを勉強をする程になった。

 もちろん、毎日の基礎勉強はかかしません。

 なぜか毎回ドラちゃんが巻き込まれていたけど、野良猫と一緒にお昼寝ばっかりだから良いのではという結果だった。

 しかし、遂に事件が起きてしまった。


「はいどーぞ」

「熱いので、気を付けて下さいね」


 それは、いつもたまに行っている王都スラム街での炊き出しでした。

 この日も炊き出しと無料治療をしつつ、周辺の状況を集めていました。

 因みに、王族は全員お勉強になっていて、特にルカちゃんとエドちゃんは相当ショボーンとしていました。

 エレノアも礼儀作法の勉強をする事になり、今日は不参加です。

 といっても他のちびっこ軍団は普通にいるし、ポニさんたちもいます。


「すげー! ドラゴンだ!」

「カッコいい!」

「グルル」


 そして、大興奮の子どもたちに囲まれて得意げなドラちゃんもいます。

 戦力としてはバッチリで、お昼前まではいつも通り不審者を捕まえつつ改善情報や不審な情報を集めていました。

 ところが、ここでとある情報が入りました。


「うーん、複数の不審な情報が集まったわね。近くの建物に怪しい人物が出入りしているらしいわ」

「もしかしたら、捕まえた連中の中にその不審者が含まれているかもしれないわね」


 今日も当然の如く炊き出し班から外れて巡回班に回ったレイナさんとカミラさんの情報に、僕とジンさんは顔を見合わせてしまった。

 取り急ぎ捕まえた者の尋問を急いでもらうことにして、ポッキーを呼び寄せてマジカルラット部隊に周辺の捜索をお願いした。

 閣僚にも通信用魔導具で情報を送信したら、軍を派遣して貰える事になった。

 こうして、万が一に備えて準備をしつつ、無事に炊き出しは終わりました。


「「「じゃーねー」」」

「グルル!」


 ミカエルを始めとするちびっこ軍団とドラちゃんを屋敷に送り、早速打ち合わせを行うことになりました。

 というのも、あまり良くない結果が判明したからです。


「捕まえた奴の聴取結果から、この近くに犯罪組織のアジトがあるのは間違いない」

「ポッキーの調査でも、ある二階建ての建物の中に犯罪者の溜まり場があったのを見つけました」

「キュッ」


 ジンさんと僕の調査報告を聞いて、全員が頷きました。

 既に軍が建物の監視をしていて、いつでも突入できるようにスタンバイしています。

 しかもポッキーが現場に一回行っているので、転移魔法を使って奇襲も仕掛けられます。

 護送、周囲の警戒、住民への警備も終えたので、一気に奇襲を仕掛けることになりました。


「じゃあ、ポッキー頼んだぞ」

「キュッ!」


 ジンさんの命令に、ポッキーが敬礼ポーズをします。

 先発隊として、マジカルラット部隊とスラちゃんとプリンが向かいます。

 不審者が百人いても、余裕で対応できますね。

 ところが、ここで予想外の事になりました。


 シュッ。


「あー! ブッチーも行っちゃったよ」


 何と、周囲の警戒のために残っていたポニさんたちもポッキーに近づいて転移魔法で現場に行ってしまいました。

 うーん、先発隊が完全に過剰戦力となっていまった。

 思わぬ事態に、僕とジンさんは顔を見合わせて苦笑するしかありません。


「な、なんだコイツら?」

「急に現れたぞ?」


 ドタバタ、ドカンドカン、バリバリバリ。


「「「ギャー!」」」


 近くの建物から不審者の叫び声が聞こえて来たけど、きっと先発隊は大暴れしているんだろうな。

 そして、ドタバタが静まり返って少ししたら、僕たちの前にポッキーが現れました。


 シュッ。


「キュッ!」

「うん、僕にも分かります。制圧完了ですね」

「じゃあ、護送を始めよう」


 ジンさんは、思わず苦笑しながら兵に指示を出しました。

 そして、建物の中から次々と先発隊に倒された不審者が運び出されました。

 うん、全員歩くことすらできないほどにボコボコにされていますね。


「じゃあ、ここからはお宝探しだね!」


 そして、現場検証を兼ねながらリズたちは張り切って不審なものを探し始めました。

 僕とジンさんも建物の中に入るけど、中を見てびっくり仰天です。


「ジンさん、すごい武器の数ですよ」

「どう考えても普通じゃないな。何に使おうとしたんだ?」


 建物の一室には、木箱に入った大量の武器が見つかりました。

 統一されたものではなくて中古品を集めたのだと思うけど、それでも凄い数です。

 これはちょっと異常事態だと思い、再び閣僚に連絡をしました。

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