八百九十九話 デンバー男爵家の情報

 翌朝、ブライトさんたちとヘイリーさんを含めて訓練を行います。

 確認したら四人とも魔法の才能があったので、剣技だけでなく魔法の訓練もすることになりました。


「ふふふ、久しぶりに教え甲斐のある人材が現れたわね」

「そうね、張り切って教えないとね」


 なぜかお隣からレイナさんとカミラさんたちもやってきたけど、みんなが優秀な先生であるのは間違いありません。

 ということで、早速訓練開始です。


「まてー!」

「捕まえるぞ!」

「ギャウ!」


 庭の一角では、ドラちゃんを含めたちびっ子軍団の追いかけっこが始まりました。

 といっても、身体能力強化を使っての鬼ごっこなので、かなり凄いことになっています。

 マジカルラットも混じっているけど、一番大変なのは間違いなく大勢に追いかけられているドラちゃんでしょうね。


 ガキン、ガキン!


「えい、やあ!」

「そうそう、どんどんと打ち込んでくるのよ」

「私たちを斬り殺すつもりで、真剣に打ち込んでくるのよ」


 ブライトさんとヘイリーさんも、良い太刀筋でレイナさんとカミラさんに木剣を打ち込んでいます。

 いきなり強くはならないと思うけど、地道に訓練を続けていきましょう。

 因みに、四人は午前中はルシアさんとアレクサさんの引率でちびっ子軍団と共に薬草採取を行い、午後は勉強を行う予定です。

 チセさんや侍従のお姉さんたちも問題ないと言ってくれているの、とっても心強いですね。

 では、僕たちはお仕事をする為に王城に向かいます。


「四人とも真面目にやっているか。それなら問題はなさそうだな」


 宰相も、僕の報告を聞いて満足そうに頷いていました。

 優秀な若者が増える分なら、王国としても問題ないと思っているそうです。

 ティナおばあさまも心配して様子を聞きにきたけど、一安心していました。


「エマさんとオリビアさん経由で先々代夫人に聞いたのですけど、ケイマン男爵領は湖に接していて漁業も盛んだそうです」

「ふむ、それは良い事だな。レイクランド湖からの魚の搬入計画を立てているが、そちらで取れる魚類の確認をして王都へ運ぶのもよさそうだ」


 引き続き魔導船で何を運ぶかの議論を続けていて、サギー伯爵領に魔導船の中継地が作られる予定だからちょうど良いかもしれません。

 宰相は前商務卿でもあるから、国内の産業が発展するのは大歓迎です。

 それで、税収増にもつながる訳ですから。

 そして、話はあのデンバー男爵家の件になりました。


「この件は少し問題になりそうだから、内務卿と話をする。どうやら、家督争いをしているのは間違いなさそうだ」


 既に通信用魔導具で陛下や閣僚に話をしているけど、直接話した方が良いということになりました。

 さっそく宰相と共に内務卿の執務室に行くけど、ついでなので決裁の終わった書類も持っていきます。

 内務卿の執務室について内務卿の秘書に書類を渡し、全員ソファーに座りました。


「色々情報を集めたが、どうもきな臭い話も出てきた。デンバー男爵はいま重病らしく、そう長くないと言われている。そして、正妻の子どもは四人いるが、互いに後継者を名乗っているそうだ」

「通常は、嫡男が爵位を継ぐはずじゃないんですか?」

「どうやら、嫡男は無能だといって自分こそが爵位を継ぐに相応しいと主張しているという。嫡男は嫡男で、自分が後継者だと譲らないでいる」


 うーん、何というか物凄く面倒くさい事になっているよ。

 これでは、血で血を洗う事になっちゃうのではないかな。

 僕の懸念は、内務卿の懸念でもあった。


「そして、お互いに犯罪者グループと手を組んでいるという情報を得た。闇ギルドではないが、闇ギルドが無くなったので別の犯罪者グループが勢力を伸ばしている。犯罪者グループにとっても、資金を得て勢力拡大をするチャンスだろう」

「屋敷内で騒動が収まってくれれば良いのだけど、町中で何かあったら住民を巻き込むことにもなる。軍務卿経由で、屋敷の監視をするようになった」


 これは、思った以上に大きな問題になってきた。

 場合によっては、デンバー男爵家が無くなってしまうレベルの争いになるかもしれない。

 うーん、この辺の情報はブライトさんが一番詳しそうなので、帰ったら話を聞いてみよう。

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