転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

八百九十八話 まさかの貴族の名前が出てきました

　ジュースも各自受け取ったところで、お互いに自己紹介を始めます。

　最初に、あの俺様態度を出していた貴族の子弟です。

「改めて、デンバー男爵家五男のブライトと申します。そして、私の護衛を兼ねるシダーとレアです。我々は、アレク様と同じく今年十歳になります。色々とご迷惑をおかけし、申し訳ありません」

　ブライトさんは、青髪を短髪にしていて緑のショートヘアのシダーさんが男性で、茶髪のロングヘアの女性がレアさんです。

　そして、家名を聞いて僕たちはもしかしてって思っちゃいました。

「あのブライトさん、もしかしてデンバー男爵家って……」

「はい、先日各方面にご迷惑をおかけしたデンバー子爵家の分家になります」

　あの自分勝手な理論で周りを巻き込んで散々嫌な目にあった、あのデンバー子爵家の分家とは。

　もしかしたら、ブライトさんがあの態度を取っていたのはそのせいもあるのかもしれません。

　続いて、もう一人の男性です。

「皆さま、初めまして。ケイマン男爵家四男のヘイリーと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」

　丁寧に頭を下げたヘイリーさんは、銀髪に近い肩に少しかかる髪でとってもイケメンです。

　サギー伯爵領に接する小さな男爵領の出身で、領内は比較的安定しているそうです。

　僕たちの事を知っているのは、王都での五歳の祝いで会った事があるからだそうです。

　うーん、僕は挨拶を受ける人と嫁を進める人が多くてあんまり覚えていないんだよね。

　そして、二人がなぜ辺境伯領に来たのかを聞く事になりました。

　といっても、ヘイリーさんの理由はそこまで深刻ではありません。

「僕は四男なので、家督を継ぐわけではありません。長男には既に男の子が生まれていますし。学園にも通う予定なのですが、それまで勉強と将来の資金を得る為に冒険者活動が盛んな辺境伯家にやってきました」

　ティナおばあさま曰く、独り立ちする前に資金を得る為に冒険者活動する貴族の子弟は普通にいるそうで、王都でもそこそこいるそうです。

　地方では、地元で活動するか辺境伯領のように大きな都市にくるのが一般的らしいです。

　未成年なので普通に実家にも帰れるし、その辺は自由らしいです。

　そして、ブライトさんの理由は少し驚愕的なものでした。

「僕たちは、その、実家を追い出されました……」

「「「追い出された？」」」

　僕たちは、一瞬ブライトさんの言ったことが理解できなかった。

　色々と疑問はあるけど、そのまま話を続けて貰いました。

「実は、僕は側室の子になります。長男などは子爵家の子どもで、僕の母は男爵家になります。家督を誰が継ぐかで少しごたごたがあり、既に母が亡くなっているのもあって僕の立場が弱くなりました。そして、家督争いに関与しないようにと兄達が僕を追い出しました」

「う、うーん。貴族主義の貴族などでは家督争いを避けるために早めに分家にしてしまうという例があったけど、追い出すのはちょっと信じられません」

「正直なところ僕もそう思いましたが、僕に発言権はありません。幼いころから支えてくれた二人のみ、護衛として連れて行くのを許してくれました。そして、貴族らしく我々のように振舞えと、そう言い残しました」

　ティナおばあさまも唖然とした表情を見せていたけど、あの自分勝手なデンバー子爵の親戚だと妙に納得してしまいます。

　そして、ブライトさんの兄は正しく父親の血を引いているのか。

　そして、デンバー男爵家らしい貴族の振る舞いだと、確かに高圧的になりそうです。

　ティナおばあさまが王城に連絡を取って確認するとスラちゃんの怪しい人物リストに入っているらしく、次に問題を起こすのではとの回答があった。

　辺境伯様にも話をしておいた方が良いということになり、僕たちは辺境伯家に向かいました。

「騒ぎを起こし、大変申し訳ありません」

「謝罪を受け入れよう。しかし、あのデンバー子爵の親戚か。悪く言うようで申し訳ないが、我が家も先日被害を受けていてある意味納得してしまったよ」

　ブライトさんの謝罪を、辺境伯様も頷きながら受け入れていました。

　というのも、デンバー子爵の関係者だと謝罪すらしないと思っていて、その点ブライトさんはあの一派とは少し違うと思っていたみたいです。

　当面デンバー男爵家の動きを注視する事で意見は一致し、話題は四人の身の振り方となりました。

「二人とも、まだ勉強も必要だ。冒険者活動をしつつ、勉強をしないとならないだろう。ブライト付きの二人も、護衛としての勉強が必要だ」

「うーん、だったらうちで勉強しますか？　幸いにして勉強する教材は揃っていますし、部屋も空いています」

「貴族の子弟なのだから、下手な宿に泊まるよりも良いだろう。アレク君は日中仕事でいないのだから、ルシアをアレク君の屋敷に向かわせよう」

「だったら、うちのアレクサも行かせよう。子守で退屈たと言っていたからな」

　ということで、四人は当面僕の屋敷に泊まることになりました。

　リズチェックとスラちゃんチェック、それにジンさんチェックもパスしたし、みんな問題なさそうです。

　それよりも、僕たち的にはデンバー男爵家の家督争いが気になります。

　王都で大きな問題が起きなければいいなと、そう思っちゃいました。