八百九十五話 座学は何とか終了しました
大人しくなってくれたのは好都合なので、このまま説明を始めましょう。
ジンさんが、登録時に配られる冊子を手にして話し始めました。
「登録時に配られたこの冊子は、必ず一読するように。そして、常に手元に置くように。ランクに関することや冒険者が守らないといけないこと、また魔物や薬草に関することも持っている。特に、守らないといけないことは当たり前のことばかりだ。冒険者とて一つの仕事だ、何でもやっていい訳ではないぞ」
ジンさんの話した事を、なんと全員真面目にメモを取っています。
あの、俺様って感じの態度を取っていた貴族の師弟もです。
きちんとメモを取るのはいいことなので、このまま話を続けます。
「どんな仕事でも、最初は小さい仕事を成功させて実績を積み上げて大きな仕事を得る事になる。冒険者とて同じだ。そのために、冒険者ランクを設けている。しかし、初心者とて真面目に依頼をこなせばそれなりのお金を稼ぐことができるぞ」
この辺りはいつも講習で説明しているし、特に辺境伯領は初心者向けの依頼も沢山ある。
薬草採取も真面目に行えばかなりのお金になるし、需要も旺盛だ。
ここからは、僕にバトンタッチして説明します。
「冒険者は自己責任の職業と言われていますが、それは違うと断言します。自分勝手な行動が周りの人を巻き込み、結果として大きな被害を出したのを目の当たりにした事があります。他人に迷惑をかけない、他人の成果を奪わない、他人を傷つけないなどは、冒険者以前に人として当然のことです。その事を肝に銘じましょう」
僕が当たり前の事を説明すると、はあっと感嘆の声が上がりました。
普通に生活していれば誰かしらから教えて貰う事だけど、いまいち理解していない人もいるんだよね。
この場にいる人は、その点は問題なさそうです。
その後も、冒険者というよりかは人としての基本を話す事が殆どでした。
「冒険者に限らず、自分の能力を正しく把握する事はとても大切だ。虚構を張っていれば、あっという間に対応できなくなる。中々難しいが、ありのままの自分を知る事だ」
そして、ジンさんの言葉に俺様って態度の男の子は衝撃を受けていました。
きっと、何か思う事があったのかもしれません。
今のうちに気づいて正してくれるのなら、僕は問題ないと思いますよ。
座学はこれで終わったので、一斉に実技を行う訓練場に移動します。
ここで、荷物講座と実技が行われます。
すると、あの俺様って態度を取っていた男の子がジンさんに近づいて行きました。
「その、威張った態度を取ってすみません。貴族なのだから、舐められないようにと言われまして……」
「誰に言われたか知らないが、貴族であっても、舐めた態度を取る奴はことごとく失脚している。今のうちに気が付いて良かったと思えば良い」
ジンさんは、その男の子の頭を少し強めに撫でていた。
僕も、影響が少ない今のうちなら修正できると思いますよ。
そして、別の男の子はリズとエレノアに話しかけていた。
因みに、この男の子は質の良い冒険者服を着ています。
「あの、つかぬことをお伺いしますが、エリザベス様とエレノア殿下でしょうか?」
「そうだよ。でも、冒険者活動している時は普通に呼んでね」
「エレノアもなの。公務以外は、普通に接して問題ないの」
リズとエレノアが普通に返答したので、男の子はもうびっくり仰天です。
とはいえ今は講習中なので、詳しい話は講習が終わってからにして貰いました。
「二人とも、特に問題なさそうですね」
「二人、はな。後で親の名前を聞いて、問題ない貴族が確認する必要があるだろう」
「そうね、私も確認した方が良いと思うわ。特に、あの威張っていた子の親はちょっと気になるわね」
ジンさんとティナおばあさまは、既にこの後の対応を考えていました。
何にせよ、僕としては目の前の講習を無事に終わらせる事に集中した方が良いですね。
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