八百九十六話 荷物講習と武器講習

 休憩を取りつつ訓練場に集まった僕たちは、荷物講座で使用するものをアイテムボックスやマジックバッグから取り出します。

 ついでなので、武器のサンプルも用意しておきましょう。

 すると、スラちゃんがとんでもない武器を取り出してきた。


 シュッ。


「スラちゃん、これってあの大きいハンマーだけじゃなくてハルバートや巨大な戦斧まであるよ……」

「たまに、各地の武器屋を見に行った時に気に入ったものを購入していたぞ。普通に扱えるから問題ないだろう」


 スラちゃんはバスターソードも扱うし、本当に大きな武器が好きだよね。

 参加者は、スライムが巨大な武器を取り出した様子を見て物凄くビックリしています。

 更にリズたちが巨大な武器をぶんぶんと振るから、余計に奇妙な目で見られてしまいました。

 こういう時は、さっさと始めちゃうのが良いですね。

 ジンさんも苦笑しながら、一歩前に出ました。


「では、荷物講座と武器講座を始めるぞ。正しい荷物を揃えるということは、自分の命を守る事に繋がる。特に、野外で活動する場合は水や食料が何よりも大事だ。テントや寝袋を揃える事も大切だが、水が無くなったら命の危険に繋がる」


 ジンさんの真剣な言葉に、全員が集中して聞いています。

 生死にかかわることなので、思う事もあるのでしょうね。


「ナイフは持っていた方が良いと、よく言われるだろう。ナイフは確かに便利で、調理や解体だけでなく、火をおこすために木を細く削ったり時には武器として使用できる。自分によくあったナイフを選ぶことが大切で、ある程度の実績を積んだら武器屋などで選ぶと良いだろう」

「事前にどんな準備が必要かを確認するのも、冒険者としてとても大切な行動です。併せて重要なのが、服装選びです。例えば森では木の枝や草で腕や足を怪我する場合がありますから、長袖長ズボンが必要になってきます。見た目を重視する装備ではなく、実用性を重視するようにして下さい」


 ジンさんと僕が話した内容を、新人冒険者はメモを取ったりしています。

 その後も、当たり前だけど重要な事を話して荷物講座は終了です。

 荷物はそのままにして、次は武器講座です。


「様々な格闘スタイルがあるから、どの武器が良いかは人それぞれだ。だが、魔法使いタイプも格闘タイプもダガーは持っておけ。魔法使いタイプは杖だけ持つのもいるが、身を守る意味でもダガーは有効だ」

「剣も、刃の長さによって扱い方が違います。ジンさんの様な大剣と僕のショートソードでも、剣技は全く違います。幾つかの武器を試して、自分にあった武器を選びましょう」


 ということで、ここからは実際に武器を手にとってどんな武器が良いかを試します。

 既に自分の武器を手にしている人にも、どういう使い方が良いかをアドバイスします。

 ティナおばあさまと近衛騎士も参加して、新人冒険者に的確なアドバイスをしています。


「ねーねー、エレノアちゃんは、どんな武器を使っているの?」

「私は杖を使っているよ。アレクお兄ちゃんが、誕生日にプレゼントしてくれたんだよ」


 六歳くらいの女の子がエレノアに質問しているけど、今思えばとんでもない武器をエレノアにプレゼントしたよなあ。

 エレノアが持っているダガーも魔鉄製のとんでもないものだし、リズもずっとファルシオンを手にしているよね。


「うーん、もう少し丁寧に剣を手入れした方が良いわね。これは、一旦武器屋に預けた方が良いわ」

「やっぱりそうですよね。父から、お前にはこの剣で十分だと言われまして……」

「お金があるなら、冒険者ギルド内の武器屋で新しい剣を購入した方が良いわ。質も考えると、この剣では不足しているわね」


 そして、一時期俺様な態度を取っていた男の子の剣を、ティナおばあさまがダメ出ししていました。

 うーん、見た目だけであまり良い装備を渡されていないみたいだ。

 一緒にいる二人も、大した武器ではないみたいです。

 何か、特別な事情がありそうですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る