八百九十三話 結婚式で使う花びらを集めます

 今日はみんなで冒険者活動をするけど、辺境伯家からとある依頼を受けました。

 それは、ジェイド様とソフィアさんの結婚式の時にもやった内容です。


「沢山の花びらを取るぞ!」

「「「おー!」」」


 冒険者がギルド内でミカエルをはじめとするちびっ子軍団が威勢の良い声を上げています。

 今日は、薬草を取りつつエマさんとオリビアさんの結婚式で使用する花を集めることになりました。

 二人の結婚式は秋だけど、今の季節なら花も沢山咲いています。

 マジックバッグに入れておけば、綺麗なままで保存できます。

 因みに、初心者向けの依頼でもあるので、僕たちの他にも冒険者登録をしたばっかりの新人も一緒にきます。

 エマさんとオリビアさんは侍従の赤ちゃんのお世話を手伝っていて、王家からはティナおばあさまとエレノア、それにルカちゃんとエドちゃんが来ています。

 いつもの森に向かって歩いて行くのだけど、新人冒険者の興味は僕たちと一緒についてきている従魔に注がれていました。


「わあ、ドラゴンがいるよ!」

「雲みたいなものもいる!」

「スライムとネズミは、とても可愛いわ」

「「「ヒヒーン!」」」


 ポニさんたちも一緒にいるけど、特に飛竜のドラちゃんは人気が高かった。

 ドラゴンが目の前にいるってのは、新人冒険者たちにとって貴重な経験となっていた。

 しかし、ミカエルたちのドラちゃんへの評価は辛辣だった。


「ドラちゃん、そんなに強くないよ」

「マジカルラットの方が強いんだよ」

「雲さんの方が、もっと強いよ」

「グルル……」


 ミカエルたちの残念な評価に、ドラちゃんはかなり項垂れていました。

 子どもの素直な感想は、時に残酷なものがありますね。

 とはいえ、事実は事実なのでドラちゃんはもっと訓練を頑張ってもらいましょう。

 こんな話をしながら、僕たちは森に到着しました。


「じゃあ、最初は薬草を沢山集めましょうね」

「キュー」

「「「はーい」」」


 ルシアさんとポッキーの声に、ちびっ子軍団が元気の良い声をあげました。

 新人冒険者には、いつも通りリズが薬草採取の仕方を教えています。

 僕は、ポニさんたちと一緒に周囲の監視にあたります。

 天気も良いし気温もちょうど良いので、冒険者活動するにもやりやすいですね。


「グルル!」

「はいはい、もっと頑張りましょうね」


 ドラちゃんはというと、ティナおばあさまのスパルタ特訓を受けています。

 高速で空を飛んだり全力で地面を走ったりと、中々のものですね。

 屋敷ではできない特訓だから、頑張ってもらいましょう。

 そして、ある程度薬草を集めたら、今度は花びらを沢山集めます。

 ここで、従魔が大活躍します。


「キュー」

「キュキュ」

「「「キュー!」」」

「わあ、とっても可愛いわ」

「ちょこちょこと動いている」


 マジカルラットが一斉にわーっと木に登り始めて、花びらを集め始めました。

 ほっこりする光景に、特に新人冒険者の女性陣が目をキラキラとさせています。

 そして、マジカルクラウドの雲さんも、風魔法で高いところにある花びらを切り落として拾いやすくしています。

 ちびっ子軍団も、新人冒険者と一緒に沢山の花びらを集めていました。

 しかし、相変わらずドラちゃんへの特訓は続いていました。


 シュイーン、ズドドドーン。


「「「ブルル!」」」

「ほらほら、もっと機敏に避けないと魔力弾に当たっちゃうわよ」

「が、ガオッ……」


 ポニさんたちが、ドラちゃん目掛けて複数の魔力弾を放っています。

 相変わらずティナおばあさまの厳しい激が飛んでいるけど、ドラちゃんは僕たちと一緒に花びら集めをするつもりでついてきたので聞いてないよって表情です。

 そして、みんなが花びらを集め終わる頃には、ドラちゃんは疲労困憊でヘロヘロになっちゃいました。

 ちょっと可哀想に思えたので、先にゲートで屋敷に送ってあげました。

 僕たちが集めた花びらは、冒険者ギルドにあるマジックバッグで保管される事になりました。

 そして


「「「沢山花びらを集めたよ!」」」

「もう集め終わったのね、偉いわ」

「ご褒美を用意してあるわ、食堂に行きましょうね」

「「「わーい」」」


 屋敷に戻ると、エマさんとオリビアさんが元気に報告するミカエルたちを出迎えました。

 ドラちゃんが屋敷に一足早く帰ってきたので、ご褒美のおやつを用意してくれているみたいです。

 因みに、ドラちゃんは既に一足先にご飯を貰っていて、今はまた庭の片隅で野良猫と一緒にお昼寝をしていました。

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