第八百九十一話 ベンド伯爵との会話

 ノーラさんが応接室を出て二十分ほど時間が経って、部屋のドアがノックされました。


 コンコン。


「失礼いたします。旦那様が、皆さんとお会いしたいと申しております」

「うむ、そうか。では、我々も向かうとしよう」


 宰相が代表して侍従に返答し、僕たちは席を立ちました。

 そして、屋敷内を歩いてベンド伯爵の私室に入っていきます。

 すると、ベッドに寝ている男性を見守るように、ノーラさんとリズ達が椅子に座っていました。


「ベンド伯爵、久しぶりだな」

「どうしたのかい、だいぶ体が弱っているね」

「おお、ベリー公爵とシーラか。ははは、久しぶりにあったのに無様な姿を見せたな」


 ベンド伯爵は、体はやせ細っているけど声はしっかりとしていた。

 宰相とシーラさんも、ベンド伯爵の声を聞いて少し安心した表情をみせていた。

 この辺りは、リズ達の治療のお陰でしょう。

 リズに顔を向けると、やり切ったとドヤ顔をしていました。


「情けない事に、我が一族には体の弱い者が多く生まれる。息子には、本当にすまない事をしたと思っているよ」

「難しいものだ。お主だって、学生の頃から体が弱かったもんな」

「ははは。そういえば、奥さんは、ベンド伯爵を甲斐甲斐しくお世話していいた令嬢だったもんな」

「ああ、妻には本当に世話になった。まさか、私よりも先に逝くとは思わなかったがな」


 同級生の懐かしい話を聞いて、ノーラさんは少しビックリしていた。

 自分の両親が結婚した背景に、そんな秘密があったとは思わなかったのだろう。

 何だか、ほっこりするお話ですね。


「とりあえず、色々な事が重なったがベンド伯爵領に来て良かったと思っている。お主は早く体を治して、娘の婿相手を探さないといけないな」

「そうよ、宰相なんていつも孫のレイカちゃんにそっけなくされても、デレデレとしながら話しているのよ。ベンド伯爵も、早く孫を抱っこしないとね」

「ははは、本当にそうだ。娘の婿探しに孫を抱くこと。うん、新たな目標が出来た。こりゃうかうかと寝ていられないな」

「「「ははは!」」」


 こうして、暫くの間三人の楽しそうな話し声が部屋の中に響いていました。

 元気そうなベンド伯爵を見て、シーラさんも僕たちも一安心です。


「皆さま方には、本当にお世話になりました。父も、早く動けるようにとリハビリを頑張ると言っております。治療のお礼は、直ぐにはできませんが必ずいたします」

「手違いでこちらが押しかけたのだ。治療は、迷惑料と思ってくれ。私も、昔のことを思い出して楽しかったよ」

「ノーラさんも、暫くは大変かと思うけど頑張ってね。リズ様たちの治療は、バッチリだからね」


 庭先でノーラさん達に挨拶をして、僕たちは王城に戻りました。

 何だかんだ色々とあったけど、無事に色々と解決してホッとしました。

 そして、宰相執務室に戻ると直ぐに僕と宰相そしてジンさんは会議室に呼ばれました。

 会議に行く前に、スラちゃんが辺境伯様と先々代夫人をそれぞれの領地に送り届けていました。


「そうか、無事にベンド伯爵は良くなったか。それは、とても良い事だ」


 宰相からの報告を聞いた陛下も、ベンド伯爵が元気になったのと聞いて満足そうに頷いていました。

 そして、デンバー子爵の件になると、全員気を引き締めました。

 報告は、軍務卿が行いました。


「では、報告いたします。現在デンバー子爵は判決確定まで拘留しておりますが、屋敷に手紙を送る事は許可されています。罪状によって可能なのですが、デンバー子爵はその制度を悪用しました。デンバー子爵は、外部との連絡が取れない重犯罪者用の拘置施設に移して、二十四時間監視をしております」

「制度上は、問題ないものを使っての犯罪か。今後は外部とのやり取りの制限など、法整備を進めないとならないな。残りの三名も、同時に捕まえた者の不祥事を理由にして重犯罪者用の拘置施設に移すように」

「畏まりました。直ぐに対応いたします」


 事件の真相はまだ調査中だけど、あのデンバー子爵が犯した罪は大きい。

 陛下も、今後どうするか色々と検討を指示していました。

いずれにせよ、デンバー子爵には厳しい処分が待っています。

 完全に自業自得なので、誰もが当たり前だと思っています。

 屋敷も多数の兵によって捜索が行われているらしく、更に残り三人の屋敷にも共犯の疑いで捜索が入るそうです。


「闇ギルドが崩壊したいま、国内に問題が出ている。引き続き、気を引き締めて対応するように」

「「「畏まりました」」」


 こうして、会議は終了し僕たちは執務室に戻りました。

 デンバー子爵が何をしたいのか全く分からないけど、当分は聴取の結果待ちですね。

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