八百八十三話 総務課に話を聞きに行きます

 その日の午後、いよいよ総務課に突撃することになりました。

 メインはお話を聞くというのもあってリズたちもやる気満々なのですが、一つだけ問題がありました。


「あの四馬鹿に、誰が話を聞くんだ?」

「「「……」」」


 ジンさんの呟きに、誰もが黙り込んでしまいました。

 というのも、総務課に行くことになった最大の理由が自分勝手な貴族のわがままな主張の為です。

 かくいう僕も、あの四人とまともに話をしたくありません。

 既にあの四人と一悶着を起こしたので、相手も意固地になる可能性が高いです。

 ということで、この二人も同行することになりました。


「そういう輩の為に、儂らがおるのだ。アレク君は気にしなくて良いぞ」

「うむ、その通りだ。場合によっては、軍の特別訓練に参加させるのも良さそうだな」


 グロスター侯爵のおじいさまとカーセント公爵が任せろって言ってくれたので、僕はとっても安心しました。

 ということで、宰相も書類を手にして僕たちと一緒についてきました。

 ちゃんとしたお仕事なので、シーラさんも一緒についてくるそうです。

 全員で、下の階に移動します。


「おい、何で俺らがあんたと同席できないんだ!」

「「「そーだ、そーだ!」」」

「当たり前だろうが! 上司は上司で、その他のものと分けて話をするのだぞ?」

「「「「納得できん!」」」」


 うわあ、総務課に入ったらいきなり四人が上司に噛みついていたよ。

 これには、僕たち全員ドン引きです。

 ここで、素早く動いた人たちが。

 シーラさんが、怒のオーラを隠さない四人の後ろで腕組みをしていたおばちゃんたちに視線を合わせました。


 だっ、ガシッ。


「「「「なっ!」」」」

「おい、特別調査チームが来たよ!」

「あんたらは別室だよ。さっさとついて来るんだよ」

「これ以上ギャーギャー言うなら、また特別コースを用意するよ!」

「それが嫌なら、さっさとついてきなさい!」


 ズルズルズル。


 課長に抗議をしていた四人は、おばちゃんに襟首を掴まれて会議室に引きずられて行きました。

 課長も明らかにホッとしているけど、僕だってあんな理不尽な人とは一緒にいたくないですよ。

 更に、お二人のやる気にも気をつけちゃいました。


「ほほほ、これは活きの良いものですな」

「うむ、どんな話が出てくるか楽しみだな」


 おばちゃんたちに引きずられていく四人の後に、不敵に笑うグロスター侯爵のおじいさまとカーセント公爵の姿がありました。

 更に、ニヤリとしたシーラさんと念の為にスラちゃんまで一緒についていきます。

 あーあ、宰相執務室最強の人を敵にまわしちゃったよ。

 これは、大変なことになりそうですね。

 そして、特別コースって言葉が出てから四人は黙っちゃったけど、おばちゃんたちも完全に怒っちゃったね。

 僕たちは、会議室に引きずられる四人をただ見ているだけでした。


 バタン。


「いやあ、皆さまお待たせ……宰相、何かあったのか?」


 内務卿が既に疲れ果てている僕たちを見て、ぽかーんとしちゃいました。

 頭を抱えながらも、宰相が何があったかを説明します。


「いや、馬鹿四人が上司に組み付いていて、課員とうちのメンバーで引き剥がして会議室に押し込んだところだ」

「はあ、またですか。この前も同じ事をして、事務員に会議室まで引きずられていました……」


 おおう、既に内務卿も騒動を実際に見ているとは。

 更生の機会を提供しても、もうどうしようもないレベルになったんですね。


 ドタバタ、ドタバタ。


「じゃあ、俺たちは普通に仕事をするぞ。貴重な時間を貰うんだ、手短に終わらせるぞ」

「「「はーい!」」」

「じゃあ、アレク君は私と一緒に課長と係長から意見を聞くぞ」


 会議室がドタバタしていて凄いことになっていそうだけど、僕たちは僕たちの仕事を始めました。

 結果的に、あの四人が余計な事をするので効率が落ちているという意見が多かったです。

 総務課としてもどう効率をあげられるかという案があったそうで、課長や係長も把握していたそうです。

 でも、あの四人が自分の意見を採用しろと騒いでいて、改革どころじゃなかったそうです。

 そして僕たちが全員の話を聞き終わったところで、会議室に入ったあの四人とおばちゃんの聴取が終わったみたいです。

 四人はというと、後ろ手に拘束されていて最初の勢いは完全にそがれてかなり項垂れていますね。

 何があったかというかは、カーセント公爵が教えてくれました。


「まあ、簡単に言うと軍の特別訓練に参加決定だ。期間は半年で、場合によっては延長もあり得る」

「えーっと、拘束もされているけど何かしたんですか?」

「儂のことを殴ってきたのだよ。へなちょこパンチなので、全く痛くなかったがな」


 うわあ、よりによって副宰相を殴るなんて……

 カーセント公爵は未だに屈強な肉体を誇るので全く怪我はないけど、傷害罪に公務執行妨害も適用されます。

 刑罰適用後に、軍でしごかれるのは間違いなさそうです。

 因みに、四人が抜けても総務課に全く影響はないので、四人が連行されても引き留めるものは全くいませんでした。

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