八百八十四話 ミカエルがちょっぴりお兄ちゃんになった日
他の部署の状況は調査中なので、僕たちは引き続き聞き込みを続けることになりました。
既に何回も各部署をまわっているので、リズたちも顔を覚えて貰っていてとても仕事がやりやすいです。
でも、今日は安息日なので仕事はお休みです。
屋敷でゆっくりのんびりしようとしたら、ちょっとした事件が起きました。
バタン!
「お兄ちゃん、大変大変だよ!」
「赤ちゃん産まれるよ!」
応接室でゆっくりとしていたら、ミカエルとブリットが焦りながら入ってきた。
一瞬赤ちゃん? って思っちゃったけど、ミカエル付きの侍従が出産間際だったんだ。
予定日よりも少し遅れたけど、遂に陣痛が始まったんですね。
既に用意してある出産用の部屋に移動したらしく、スラちゃんも中に入って万が一に備えてスタンバイしているそうです。
「まだ赤ちゃんが産まれるまで時間がかかるから、みんなはいつも通りにしていてね」
「スラちゃんもいるから、治療も大丈夫よ」
「きっと元気な赤ちゃんが産まれるから、心配しなくていいわ」
「「うん……」
侍従のお姉さんとジュリさんが不安そうなミカエルとブリットを慰めているけど、ミカエルにとっては赤ちゃんの時からずっと一緒だった侍従なので、無事に赤ちゃんが産まれてくるか不安そうです。
「あかちゃ?」
「うまれう?」
「そうだよ、赤ちゃんが産まれるんだよ」
「可愛がってあげようね」
そんな僕の横では、メイちゃんとリラちゃんが不思議そうな表情をしている弟に簡単な説明をしてあげていました。
同じ侍従の子どもとして、可愛がってあげてほしいですね。
そして、僕の屋敷にこの人たちもやってきました。
「お母さんが、将来の勉強のためにって言っていたわ」
「私も、あの侍従とは付き合いが長いですから」
「きっと、無事に赤ちゃんが産まれますよ」
エマさんとオリビアさん、それにルシアさんが屋敷にやってきました。
そういえば、ソフィアさんやレイナさんたちも以前に勉強のためにって手伝いに来ていたっけ。
教会から助産師のシスターさんもやってきて、準備万端です。
「赤ちゃんが生まれるまで時間がかかるから、みんなで遊びましょうね」
「「「「はーい!」」」」
「うん……」
あらら、リズかみんなを遊びに誘ってもミカエルはショボンとしたままです。
仕方ないなあと、ブリットがミカエルの手を引っ張って庭に連れて行きました。
ミカエルもずっと一緒にいた侍従なので、不安になっちゃったみたいですね。
庭に出ても、ミカエルは野良猫と一緒にお昼寝をするドラちゃんの側に座っているだけです。
ここは、お兄ちゃんである僕が話をしてあげましょう。
僕もドラちゃんの側に行って、ミカエルの隣に座ります。
「ミカエル、赤ちゃんが無事に生まれるか不安なんだ?」
「うん……」
「ふしゅー、ふしゅー」
ミカエルは、変な寝息を立てるドラちゃんの頭を撫でながらぽつりと呟きました。
でも、不安になるってことは、ミカエルの心が成長している証拠でもあります。
僕は、ミカエルの頭を撫でながらできるだけ優しく話しかけました。
「ちょうどミカエルくらいの時にメイちゃんとリラちゃんが生まれたけど、僕も無事に生まれるかとっても不安だったんだよ」
「えっ、お兄ちゃんも?」
「そうだよ。それに、不安に思う事もとっても大切だよ。ミカエルが、ちゃんと成長している証拠だからね。みんながついているから、きっと元気な赤ちゃんが生まれるよ」
「うん!」
ようやくミカエルも笑顔になってくれて、僕もホッと一安心です。
といっても今日はミカエルものんびりすることにしたみたいで、ドラちゃんや野良猫を撫でながらリズ達と遊んでいるメイちゃん達を見ていました。
そして、夕食を食べ終えてみんなでお風呂に入り終えた時でした。
「みんな、赤ちゃんが生まれたわよ!」
「「「やったー!」」」
エマさんがお風呂上がりの僕達に声をかけると、一斉に歓声が上がりました。
でも、ミカエルだけは違っていました。
ビックリした顔のまま、涙をポロリと涙を流していました。
そんなミカエルの事を、エマさんが優しく抱きしめました。
「無事に赤ちゃんが生まれて、ミカエルちゃんはホッとしちゃったんだね」
「うっぐ、ひぐ……」
ミカエルは、何度も頷きながらエマさんをきつく抱きしめていました。
不安が大きかった分、一気に解放されて気持ちが緩んじゃったんだね。
そんなミカエルのことを、みんなも優しく抱きついていました。
まだ赤ちゃんも生まれたばかりで侍従も疲れているので、明日の朝改めて様子を見に行くことになりました。
こうして、僕の屋敷に新たな命が誕生しました。
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