八百七十四話 保育部屋を作る事に
「「はあ……」」
「どうしたの二人して。溜息なんてついちゃって」
「誰のせいだよ。誰の……」
教皇国に行った翌日、僕とジンさんはへんにゃりとしながら宰相執務室でお仕事をしていました。
デスポーションの影響がだいぶ残っていて、僕もジンさんも夕食を半分残しました。
スラちゃんとプリンもへんにゃりとしていて、今日はどこにも行きたくなさそうです。
当のレイナさんはなんのことだか分かっておらず、昨晩もモリモリと夕食を食べたそうです。
「ジンよ、娘の作ったポーションはそんなにやばかったのか?」
「やばいってもんじゃないですよ。目の前で、死刑囚が死にかけましたから。スラちゃんの作った上級ポーションで中和したら、煙みたいなものも出てきましたし」
「そ、そうか。以前も我が家のオーブンを全損させたことがあるし、そのくらいはするだろう」
ジンさんが何があったかを教えてくれたけど、レイナさんは何回も実家にある調理器具を壊していたそうです。
だからこそ、父親である宰相はレイナさんの行為をよく理解していたみたいです。
お父さんは、娘の料理に苦労していたみたいですね。
ともかく、本番はもう少し先なのですが、その際にも僕とジンさんは破壊王のデス料理に立ち会わないとならないそうです。
というのも、何かあった際にレイナさんとカミラさんを止められるのが僕とジンさんらしいです。
はあ、気が重いよう……
そして、話は別の件になりました。
「内務卿が中心となって、保育施設を王城内に作る事になったようだな」
「女性にも優秀な人材が多いので、やめない環境を作る事になったそうです」
「とても良い事だ。子育てが得意な侍従もいるし、優秀な人材を引き留めるのは私も大賛成だ」
きっかけは、内務卿の直属の部下が結婚することになり子どもができたらどうしようかと悩んでいることだった。
僕の身近でも近々結婚する近衛騎士のジェリルさんとランカーさんの存在があるし、他人事じゃないもんね。
既に予算を取っていて、王城一階の開いている部屋を改修中だそうです。
僕の業務はナッシュさんとスタンリーさんが行ってくれるそうなので、へんにゃりとしている二人と二匹で現場を見に行く事になりました。
「おお、ここだな。中々良い感じに仕上がっているな」
「絵本に遊び道具に、走り回るスペースもありますね」
「子どもは元気が一番だからね」
現役の母親でもあるレイナさんも着いて来たけど、辺境伯様や僕の屋敷にある子ども部屋に近い構造です。
更に近くのトイレに、子ども用のものを増設しているそうです。
元々ここは袋小路みたいな場所になっていて、殆ど使用されていなかった場所です。
ここなら良い場所になるなと思っていたら、文句を言う貴族が僕たちの目の前に現れました。
「おい、ここをガキの為じゃなくて俺達の控室にしろ!」
「そーだー! 意味のない者を作るな!」
「俺達を優先しろ!」
「「「うん?」」」
保育室入り口で大声で叫ぶ小太りの貴族が何人かいて、ギャーギャーと騒いでいます。
うん、この貴族は誰だろう。
ジンさんもレイナさんも、知らない貴族でした。
でも、ここは決まっている事をいわないと。
僕は、ジンさんと共にその貴族の前に歩み寄りました。
「副宰相のアレクサンダーです。この件は閣議決定したものですよ。それに一階は共用部なので、貴族の控室にはできません。そもそも、貴族の控室に利用できる場所は限られていますし」
「「「ぐっ……」」」
だっ。
あらら、僕の存在を明らかにして正論を言ったら、尻尾を巻いて逃げちゃいました。
でも、あの貴族たちは要注意ですね。
宰相執務室に戻ったら、直ぐに宰相に報告しました。
「馬鹿な貴族もいるもんだ。王城のルールも理解していないとは」
「直ぐに逃げちゃったので、貴族の名前まで分かりませんでした」
「それは仕方ないだろう。王城内の控室の件も絡むので、内務卿にも連絡しないと」
宰相も問題だと判断して、直ぐにシーラさんが内務卿の執務室に向かいました。
うーん、一難去ってまた一難って感じになりそうです。
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