八百六十八話 新人職員と共にスラム街での炊き出し
教皇猊下はこの後教皇国で会議があるそうで、僕は担当者と共にゲートで教皇猊下を送りました。
そして、午後に炊き出しを予定しているので、カレン様も一緒に手伝ってくれることになりました。
この炊き出しにはナッシュさんとスタンリーさんも参加して、住民の意見を集める事になっています。
他にも新人の職員が参加予定で、住民と直に接する良い機会にするそうです。
ミカエルとブリットは参加するけど、他の子たちは残念ながらお昼寝の時間です。
昼食を食べて準備ができたところで、目的地のスラム街の教会に移動します。
カレン様がいることを考えて、道中は王城の軍の待機場に集まってゲートを使って一気に移動します。
「こ、これが双翼の天使様が使うという空間魔法なのか……」
「あっという間にスラム街に着いてしまった。こんなにも凄いものなのか」
「やっぱり、初めて体験する人はそうなっちゃいますよね……」
ナッシュさんやスタンリーさんを始めとする職員は、いきなり目的地に着いて唖然としちゃいました。
スラちゃんが自分も長距離転移魔法が出来るよと触手をふりふりとアピールしていたけど、残念ながら新規職員には気づいて貰えなかった。
因みに、カレン様の護衛としてポニさんたちを辺境伯領から呼び寄せました。
ポニさんたちはとっても強いし、万が一強盗などが現れても大丈夫です。
炊き出しと無料治療の準備も完了したので、さっそく始めましょう。
「ふふふ、教皇国で私たちが活躍する前準備が整ったわね」
「張り切らないといけないわね」
「だあ! お前らは、カレン様と新人職員の護衛をしていろ! ここで、大惨事を引き起こすつもりか!」
いきなり包丁を手にしたレイナさんとカミラさんを、ジンさんが必死の形相で止めています。
うん、流石にここで破壊王のデス料理を披露するのはマズイと思います。
僕も二人の背中を押して、カレン様のところに連れて行きました。
新人職員は何が何だか分からないみたいだけど、僕的には一生知らない方が幸せだって思います。
その間に、カレン様と従魔のヒカリと共に、リズ、エレノア、ミカエル、ブリットが治療を始めます。
「ミカエルちゃんとブリットちゃんは、随分と治療が上手になりましたね」
「「本当? えへへ!」」
二人はカレン様に褒められて、かなり上機嫌です。
僕の目から見ても、二人の治療の腕はグングンと上がっているもんね。
みんなで手分けして治療をするので、かなり効率よく回っています。
その間にも、新人職員が治療を受ける人から様々な意見を聞いていました。
炊き出しの方も、中々良い感じで回っています。
そんな中、ある意味大活躍している部隊があります。
「ブルル」
「あっ、不審者です!」
「捕まえる」
「うわあ!」
ブッチーが、治療の列に並んでいた不審者の服を掴んで引っ張ってきました。
サンディの鑑定によって正体も直ぐにバレて、拘束されて兵に連行されます。
同じような感じで、ポニさん部隊が大活躍していて、新人職員はポカーンとしていました。
今日も、ネズミホイホイ作戦は大成功ですね。
「これは、ある意味凄い事をしています。住民サービスを王族や貴族自ら行い、更に様々な意見を王城の職員自ら聞いています。これだけでも、かなりの王都の住民へのサービスになっています」
「尚且つ、聖女様や王女様がいる状況に加えて沢山の人が集まっているので、犯罪者も沢山集まる。集まった犯罪者を、軍と連携して一網打尽にすると。一石二鳥どころではないですね」
ナッシュさんとスタンリーさんは、この作戦の意図を目の前で実感して貰いました。
僕としては、そこまで理解してくれただけでも大満足です。
こうして、三時過ぎには無事に炊き出しと無料治療が完了しました。
僕たちは王城に戻って、新人職員は会議室に集まって住民からの意見を集約し始めました。
会議室には僕とジンさんもいて、カレン様とリズたちは宰相執務室で休んでもらってます。
「おっ、やっているな」
「「「へ、陛下!」」」
と、ここで陛下が会議室に入ってきました。
新人職員が一生懸命意見を纏めているのを、関心したように見ていました。
「今日の炊き出しは、王城にいるだけでは見ることのできない住民の生の意見を聞けたはずだ。我々の仕事の先には、常に王国の国民がいる事を忘れてはならぬぞ」
「「「はい!」」」
陛下は新人職員の元気の良い返答を聞いて、満足そうにして会議室を後にしました。
書類ばっかりに目がいく、頭でっかちな職員になって欲しくないのもありそうです。
つい最近、自分の意見が通らなくて上司を殴った職員がいるもんね。
今日炊き出しに参加した新人職員は、馬鹿な職員にはならないキラキラした目を持っていました。
多くの不審者を捕まえたし、今日の炊き出しも大成功ですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます