八百六十六話 新しい人が配属されます

 いよいよ、ナッシュさんが配属される日になりました。

 僕はもちろんだけど、この人が一番そわそわしていました。


「ナッシュ君、ちゃんとやれるかな……」


 ローリーさんは、朝からずっとそわそわとしている。

 まあ、恋人が職場に来るのだから仕方ないです。

 他の人たちも、仕方ないねといった表情を見せています。

 そして、新しい机が二つ用意されています。

 もちろん、ナッシュさんともう一人の異動してくる人の分です。


「宰相、ナッシュさんと新しい人はいつ頃来るんですか?」

「十時くらいって聞いているぞ。人事のものが、二人を連れてくる」


 ということは、二人が来るまでまだ一時間あるんだ。

 ローリーさんは、少し落ち着いて普通に仕事をしています。

 そして、十時になって二人がやってきました。

 うん、またローリーさんがそわそわとしていて何だか微笑ましいです。

 更に、特別調査チームの面々も集まっています。

 堂々とルカちゃんとエドちゃんに、ねこちゃんと一緒のエリちゃんもいます。

 もちろん、ベビーシッターはジンさんです。


「ナッシュ・バイツです。改めまして、どうぞ宜しくお願いします」

「「「宜しくね!」」」


 ナッシュさんが挨拶をすると、リズたちも大歓迎って声を上げています。

 ルカちゃんとエドちゃんに至っては、ナッシュさんはカッコいいお兄ちゃんって扱いです。

 エリちゃんも、良くわかってないけど大きな拍手をしています。

 そして、異動してきたもう一人がこの方でした。


「スタンリーと申します。経理部門からやってまいりました。どうぞ宜しくお願いいたします」

「「「わー、パチパチ」」」


 もう一人が、平民出身の官僚のスタンリーさんです。

 三十手前で茶髪をオールバックにして、背が高いのもあってかできる人って感じです。

 リズたちだけでなく、ルカちゃん、エドちゃん、エリちゃんも歓迎しています。

 ということは、全然良い人ですね。

 この二人で、僕が担当していた業務を分担してくれます。

 さっそく席に着いて、お仕事開始です。


「お兄ちゃん、前に王都の冒険者ギルドで聞いた意見をまとめたよ!」

「どれどれ? 王都は各地から冒険者が集まるから、色々な意見が出てくるね」

「辺境伯領から来ている人もいたよ。今年は、もう少ししたら意見を聞くんだ」


 リズが僕に出したのは、昨年学園の教科書作りの参考にする為に集めた意見だけど、その後も何回か言って意見を集めていました。

 中々面白い結果が得られたので、今年も王都の冒険者ギルドに行って意見を集めてくる予定です。

 宰相にも私だけど、ふむふむと言って閣僚の閲覧資料にする事になりました。

 続いては、スラちゃんがとある資料を差し出してきました。


「えーっと、この前暴れた貴族の仲間リストって、これまた凄いとリストを作ったなあ……」


 スラちゃんがドヤ顔でいるのもわかります。

 あの貴族はもうそろそろ停職期間が終了するけど、既に総務の屈強な女性事務員の下につくのが決まっています。

 総務の女性事務員曰く、根性を叩き直そうと気合を入れているそうです。

 そして、その貴族の仲間が全員分かれば、対策もしやすいです。

 これも、宰相経由で陛下に報告する事になりました。

 さて、書類も出来上がりました。


 ドサッ。


「今日は書類の量が少ないですね」

「いやいや、十分な量だろう」


 宰相の机の上に確認の済んだ書類を置いたけど、宰相は苦笑するばかりです。

 そんな僕の仕事を見て、ナッシュさんとスタンリーさんが一言。


「やっぱりものすごい仕事量です。普通の職員がこなす仕事量ではありません」

「正直なところ、あと数名職員がいても問題ないかと。ローリー殿に秘書として窓口になってもらい、専用のチームを作る必要があります」


 うん、何だか話が大きくなってきました。

 それだけ、沢山の仕事をしていたからなあ。

 僕もまだまだ普通に仕事をするし、あとどれだけ人を増やせるか確認することになりました。

 今度は、ねこちゃんに乗ったエリちゃんが僕のところにやってきました。


「あー、ぷー」

「うん? プリンを食べたいの?」

「ぷー!」


 昨日食べたプリンがお気に召したみたいだけど、もう昼食の時間だからそこでプリンを食べましょう。

 しかし、「やー」の次は「ぷー」を覚えたのか。

 エリちゃんが「ママ」って呼ぶのは、いったいいつになるのかな。

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