八百六十五話 ママって言って欲しかった……
会議の翌日、さっそく炊き出しと無料治療をスラム街で行います。
明日はナッシュさんと新しい人がくるので、明日と明後日は僕は炊き出しに参加しません。
リズたちとジンさんたちがいれば炊き出しと無料治療は可能だし、従魔とポニさんたちがいれば不審者をどんどんと捕まえられます。
そして、いつもの如くこの子らがヤル気を見せていました。
「がんばるぞー!」
「「「おー!」」」
ミカエルを先頭に、ちびっ子軍団が威勢よく声を上げています。
今日はご褒美に僕の作ったプリンがあるので、いつもよりもヤル気が違います。
ということで、さっそくスラム街にある教会で準備を始めます。
「かの有名な双翼の天使様に加えて、勇敢な天使様と救国の勇者様までおられるなんて……」
「こんな古い教会ですが、どうぞ宜しくお願いいたします」
教会のシスターさんが僕たちを見てもの凄く感激しているけど、僕たちはそこまでではないですよ。
膝をついて手を組んで祈り始めそうになったので、流石にそれはやめてもらいました。
そして、今日はとある従魔を連れてきたけど、スラム街の子どもたちに大人気でした。
「グルルル……」
「わあ、ドラゴンだ!」
「思ったよりも小さいよ」
治療をするミカエルたちの護衛としてドラちゃんを連れてきたけど、ドラゴンを滅多に見ることのない王都の子どもは大はしゃぎです。
というか、ドラちゃんと遊んでいる子どもを見て、親の方がハラハラしていました。
ハラハラしているくらいなら、何も問題ありません。
「ブルル」
「おっ、コイツだな」
「げっ!」
ポニさんと一緒にいたジンさんが、目の前でスリをした男を捕まえました。
他にもどんどんと不審者を捕まえているので、不審者を搬送する軍人がとても忙しそうです。
もちろん、レイナさんとカミラさんは炊き出しを作ることはありません。
リズとエレノア、それにルカちゃんとエドちゃんの護衛についています。
これなら、破壊王のデス料理が披露されることもありません。
こうして、本日の炊き出しは無事に終了しました。
スラム街の情報も集められたし、不審者も沢山捕まえました。
昼食は炊き出しのもので食べたので、デザートのプリンを食べるのを兼ねて王城に行って食堂に向かいました。
「あーう」
「エリちゃんも、プリン食べる?」
「あー!」
ちょうど食堂では王妃様、アリア様に加えてエリちゃんもいて、お兄ちゃんが食べているプリンを見て食べたくなっちゃったみたいですね。
添加物一切なしのプリンなので、赤ちゃんでも安心して食べられます。
エリちゃんは、スプーンを自分で持って美味しそうにプリンを食べています。
他の子も、ニコニコ顔でプリンを食べています。
多めに持ってきたので、大人の面々も僕のプリンを食べています。
そこに、遅めの昼食を食べに来た陛下がやってきました。
そして、ちびっ子軍団が食べているプリンを見て、ルカちゃんとエドちゃんに一言。
「ルカにエドよ、余にもプリンを食べさせてくれ」
「「やー」」
うん、いつもの光景ですね。
ルカちゃんとエドちゃんは、あえてニコニコしながら嫌って言っています。
陛下も二人の行動が分かっているので、深くは追及しません。
そして、陛下のターゲットがエリちゃんに向きました。
「エリ、余にもプリンを食べさせてくれ」
「やー」
あれ?
いま、エリちゃんは喋らなかった?
しかも、お兄ちゃんの真似をしてにこりとしながら嫌って言っています。
この光景を見た王妃様とアリア様が、思わずガクリとしてしまいました。
「まさか、エリが一番最初に喋った言葉が嫌だなんて……」
「せめて、『ママ』って言って欲しかったわ」
うん、ショックを受けているお二人の言わんことは良くわかります。
確かミカエルの時は、僕の事を呼んだのが初めて喋った言葉だっけ。
それが、エリちゃんはプリンは渡さないぞという意思表示が最初でした。
その後も陛下が話をするけど、全部やーって答えていました。
「まさか、エリが喋るとは。ところでアレクよ、炊き出しはどうだった?」
「何も問題ありません。不審者もそこそこ捕まえました」
「うむ、当分は週一で行うのが良いだろう」
陛下も、気持ちを切り替えて昼食を食べ始めました。
何も問題ないのが一番ですね。
そして、陛下が更に僕に一言。
「ところでアレクよ、プリンはないのか?」
「念の為に、取っておきました」
「ははは、流石はアレクだ」
多分こんなことになるんじゃないかなと思って、プリンは多めに作っておきました。
ちなみに、午後から普通に宰相執務室で仕事を始めたけど、他の人にもプリンは配りました。
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