八百四十一話 破壊王のデス料理
そして夕方前になって、予定通り会議が開かれる事に。
僕たちに加えて、炊き出しをしていた面々も会議に参加していました。
その中に、久々に会った人がいました。
「ランさん、お久しぶりです」
「アレク様、お久しぶりでございます」
ルーシーお姉様と一緒に新入生になる、孤児院在住のランさんです。
何故この場にいるのかは、ルーシーお姉様が教えてくれました。
「たまたま今日炊き出しをしていたスラム街にある教会は、ランちゃんの住んでいる孤児院を経営していたの。だから、一緒に炊き出しをしようって事になったのよ。そうしたら、最近怪しい行動をしている冒険者がいるって教えてくれたのよ」
「あっ、はい。一ヶ月ほど前から、教会の周囲に怪しい動きをしている冒険者が複数いました。シスター様も怪しいと思っておりまして、ちょうど炊き出しが行われるのでご相談しようと思っていました」
本当にたまたまがつながって、色々な情報が一気に集まったんだ。
念の為に、ランさんのいる教会ではポッキー達が警戒にあたっているそうです。
ポッキー達に勝てる不審者は、殆どいないだろうね。
そして、どんな情報が集まったのかジンさんが教えてくれた。
「いわゆる、新興の犯罪組織だな。昔闇ギルドが素行の悪い冒険者を組織にスカウトしていたが、そいつらもその真似事をしていた。最近冒険者はノーマークだったから、頭から抜け落ちていたよ」
たまたまその新興の犯罪組織の拠点が教会の近くにあって、素行の荒い冒険者が出入りしていたという。
そして、戦力が整っているので犯罪組織を一網打尽にしたという。
「儂らは冒険者ギルドに行って、捕まえた奴らの身分紹介じゃな。結構な数がいたので、骨の折れる作業じゃったぞ」
「犯罪者も数が多かったから、今回は儂らが出て正解だった。ジンの判断は良かったぞ」
「冒険者ギルドには、捕まえた奴らと同じようなのがいないか調査を依頼しておる。数が多いから、少し時間がかかるのう」
ニース侯爵、カーセント公爵、それにグロスター侯爵のおじいさまも、今日は大変だったって表情をしています。
なんにせよ、無事に事件が解決して良かった。
しかし、ある意味報告の本番はこれからだった。
「だけど、ちょっと目を離した隙に尋問で問題があって……」
「素直に尋問に応じていたのですが、捕まえた者が恐慌状態になってしまいました」
ジンさんとルーカスお兄様がとある事を報告すると、会議室内がざわざわとざわめきました。
特に炊き出しを行っていた面々が、顔を青くして下を向いています。
あのリズやエレノアでさえ、顔色がよくありません。
しかし、きょとんとしている女性が二人います。
これって、もしかして……
何があったのかは、リズとエレノアがかなり低いテンションで話してくれた。
「その、レイナさんとカミラさんが、捕まえた人達の前で料理を始めたの……」
「目の前で真っ黒になった料理を見て、捕まえた人がやめてくれって叫んでいたの……」
またもや会議室内がざわざわとざわめきました。
特に宰相とニース侯爵が、信じられないのを見たという表情で娘と孫を見ていた。
破壊王の料理を目の前で見るなんて、捕まった者もとんでもない恐怖だっただろうなあ。
「さ、最近料理をしていなかったし、捕まえた者を監視するだけだからちょーっと暇になったのよ」
「炊き出しも手伝えないし、練習するくらいならいいかなって」
「目を離した僅か五分間で、まな板は砕け、魔導コンロの上にあった鍋はまっ黒焦げ、オマケに皿の上には炭化して何が何だか分からない物が置いてあったぞ!」
「「「……」」」
破壊王二人の誤魔化しは、ジンさんが正直に現場の状況を話した事で打ち砕かれました。
僅か五分間で起きたイリュージョンに、全員が絶句しています。
僕だって、破壊王の料理は見たくないよ。
そして、この場の方針が陛下によって強引に決められました。
「うん、余は何も聞いてない。そんなデズ料理の事は余は知らんぞ」
「「陛下、デズ料理って!」」
こうして、抗議は無視されて破壊王の料理は会議に報告されなかった事になりました。
破壊王が作るデズ料理、言葉からして怖すぎます。
「き、今日は怖かったわ……」
「と、とても貴重な体験をしました……」
ルーシーお姉様とランさんも、今日の衝撃的な体験はきっぱりと忘れて下さい。
脳に影響が出ますよ。
因みにその一、やっぱり新しい犯罪組織が孤児院に報復襲撃をかけたけど、ポッキー達によって建物に侵入する事なく捕まったそうです。
因みにその二、破壊王のデズ料理を尋問の道具に使えないかと軍で協議されたらしいけど、人道的に問題があるという事で宰相並びに軍務卿とジンさんの三人の許可がないと使われない事が決まりました。
因みにその三、いつもは元気いっぱいでご飯大好きなちびっ子軍団だけど、夕食時は元気がなく全員が食事を残していたそうです。
それは、孤児院の子ども達も同様だったそうです。
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