八百四十話 不正な冒険者?

 僕が仕事の間も、炊き出し作戦は続けています。

 ルーシーお姉様も既に入園式の準備が終わったので、アイビー様と共に忙しく対応しています。


 カリカリカリ。


「アレク君は、本当に真面目じゃのう。それにしても、たくさんの犯罪者を捕まえたのう」

「闇ギルドの構成員はいなかったんですけど、犯罪組織は沢山捕まえました。僕とジンさんは、野菜を切っていただけですけど」

「ほほほ、それでよい。上に立つものがあれやこれや動いては、下のものが混乱する」


 今日はニース侯爵も宰相執務室に来ていたけど、軍は大変だけど中々の成果は出たと思う。

 学園周辺の巡回も強化しているし、王都の治安も向上してばんばんざいです。


「レイナさんとカミラさんは、周辺の警戒にあたって貰っています。その、いつも料理をしたがるので……」

「我が娘ながら、冒険者もしているのに料理ができないなんて本当に情けない。とはいえ、事故を起こすわけにはいかないからな」

「そうじゃのう。我が孫ながら、未だに料理ができないなんて。食材ごとまな板をぶった切った時は、流石に度肝を抜かれたぞ」


 今日もレイナさんとカミラさんは、遊撃隊として炊き出しの周囲を動いています。

 宰相とニース侯爵が思わず嘆いているけど、周囲に被害を出さないわけにはいかないので、こればっかりは仕方ないですね。

 幸いにしてレイナさんとカミラさんの子どものレイカちゃんとガイルちゃんは料理の才能がありそうなので、本当に母親に似なくて良かったよ。

 と、ここでカミラさんから通信用魔導具に連絡が入りました。


「えーっと、何々? 不良冒険者を多数捕まえたので、冒険者ギルドにも連絡したってありました。うーん、普通の不良冒険者なら良いんですけどね」

「アレク君、儂が冒険者ギルドに向かおう。この時期じゃ、怪しいと思ったら直ぐに動こう」


 という事で、ニース侯爵が冒険者ギルドに向かう事に。

 スラム街での炊き出しだから、どんなトラブルがあるか分からないよね。

 さてさて、書類確認が終わりました。


 ドン!


「宰相、確認を宜しくお願いします」

「ははは、今日も沢山の書類の山があるのう」

「良いことだよ。閑古鳥が鳴くようじゃだめだよ」


 僕は僕で、普通にお仕事を進めないとね。

 宰相は炊き出し現場に行きたいらしいけど、お仕事をサボる口実にもみえちゃった。

 でも、シーラさんがいる限り、宰相がお仕事をサボるのは無理そうです。

 こんな感じでお仕事を続けていたら、またもやカミラさんから通信用魔導具に連絡が入りました。


「またカミラさんからだ。えーっと、色々と面倒くさい事になっているので、カーセント公爵とグロスター侯爵のおじいさまも冒険者ギルドに向かったそうです」

「うーん、何があったのだろうか? 報告を待つしかないな」


 うーん、どうも普通の冒険者のトラブルじゃないみたいです。

 これだけの人が集まるということは、ただ事ではないです。

 ここで、宰相宛にも通信用魔導具で連絡がありました。


「ふむふむ、夕方にも会議を行うそうだ。どうやら闇ギルド関連ではないが、少々面倒くさい案件みたいじゃな」


 闇ギルド関連じゃなくてホッとした反面、どんなトラブルがあったのか気になります。

 いずれにせよ、破壊王が炊き出しに加わっていないのは確実で、そっちも安心しています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る