八百三十六話 学園も春休み

 学園が春休みになったので、ルーカスお兄様とアイビー様も卒園式と入園式の準備以外は公務を行っています。

 因みに、三年生になるルーカスお兄様は副生徒会長になるのが決定していて、卒園式と入園式では司会進行を務めるそうです。

 今日のルーカスお兄様は宰相執務室で書類整理を行っていて、アイビー様は王妃様とアリア様と共に来賓の面会を行います。


「いやあ、ルーカス殿下がいるとアレク君が大人しくなって良いなあ」

「宰相、それってどういう意味ですか?」

「ははは……」


 ルーカスお兄様が宰相の元気の良いセリフを聞いて思わず苦笑しているけど、僕は別にルーカスお兄様がいても普通にお仕事をしますよ。

 その証拠に、早速書類整理の第一弾が完了しました。


 どん!


「宰相、よろしくお願いします」

「アレク君よ、今日くらいはゆっくりしても良いのではないかい?」


 宰相が自分の目の前に置かれた書類の束を見て何かを行っているけど、特に気にせず作業を進めましょう。

 僕が書類整理を早く進めるのには、ちゃんとした理由があります。


「今日はルーカスお兄様と一緒に入園式の打ち合わせに行くので、出来るだけの書類を進めていきます」

「ははは、こりゃいいわね。こいつがサボらない様に、沢山書類を処理をしていきな」

「トホホ、そんな……」


 シーラさんも僕の話した理由に大笑いだったけど、何だかんだいって宰相はあっという間に書類整理を終わらせます。

 今日学園に行くのは昼食後なので、まだまだ時間があります。

 そんな事を思っていたら、通信用魔導具に連絡が。


「何だろう? あっ、ティナおばあ様が今日の学園での話し合いに同行するそうです。王妃様の代わりみたいですね」

「警備の問題もあるし、話さないと行けないことは沢山ありますね」


 うーん、ここはもう一人重要人物に話し合いに参加して貰いましょう。

 ということで、リズ達と一緒にいるとある人に連絡を取りました。


「えーっと、カミラさんから返信が来ました。今は軍にいるけど、時間になったらスラちゃんがジンさんを送ってくれるそうです」

「確か、押収物の鑑定を進めているんだっけ。山ほど押収したから、鑑定を進めるのも大変だろう」


 ドクターの死刑は確定しているけど、まだ、ピエロの存在が残っている。

 押収物の鑑定を進めても、中々ピエロに辿り着かないそうです。

 うーん、ドクターが前に言っていたけど、近い内に会うという言葉が良く分からないんだよなあ。

 何にせよ、警戒しておくことにこした事はありません。


 ドサッ。


「宰相、追加です」

「アレク君は、話しながらでも普通に書類整理をするのう」


 こうして午前中は宰相の愚痴を聞きながら、沢山の書類整理を終えました。

 元気を補充する為に、昼食を食べないと。

 僕達は、いつも通り食堂に向かいました。

 すると、予想外の人たちが食堂にいました。


「あら、昼食の時間なのね。ルーカス、お疲れ様」

「母上、終わったのですか?」

「午前中はね、午後もあるわよ


 来賓の面会をしていた面々も、昼食を食べながら休憩中です。

 王妃様は既に昼食を食べ終えて、少しのんびりとしていました。


「沢山食べるのよ」

「あー、もぐもぐ」

「ふふ、美味しそうに食べていますわね」


 アリア様とアイビー様は、交代しながらエリちゃんに食事を食べさせていました。

 エリちゃんはご飯が大好きなので、世話をする方としてはとっても助かっています。

 今日も、美味しそうにもりもりと食べていますね。

 そんな事を思っていたら、ティナおばあさまがお茶を飲みながら話しかけてきました。


「ルーカス、アレク君、もう分かっていると思うけど、ルーシーの入園式はルーカスと同じレベルの警戒をするわ。ジンが来たら話をするけど、軍も動員するわよ」

「まだ闇ギルドの脅威が消えた訳ではないので、警備強化は仕方ないですね」

「私の時は、まさかの学生が襲撃してきましたから。色々な事を想定しておいた方が良いですね」


 僕もルーカスお兄様も、直ぐにティナおばあさまが言いたいことを理解しました。

 ここは予算をかけてでも警備を強化しないと、何かあったらルーシーお姉様だけでなく他の人にも迷惑をかけてしまう。

 その辺も含めて、午後の打ち合わせで話さないといけないね。


「「もぐもぐ、おいしー!」」

「良かったわね。いっぱい食べるのよ」

「「うん!」」


 当のルーシーお姉様は、ルカちゃんとエドちゃんに昼食を食べさせていた。

 ルーシーお姉様も打ち合わせに参加するけど、今はある意味リフレッシュしていますね。

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