八百六話 もう一度国の出向機関へ
続いて、カミラさんから僕の通信用魔導具に連絡が入りました。
現地の調査で、何か見つかったのかな?
「えーっと、現地は特に開発する必要はなし。でも、水路に土砂が溜まっているからどこかのタイミングで浚渫作業が必要、だそうです」
「それは民にすまぬことをした。浚渫計画を立てねばならぬのう」
現地に大きな問題がなくて、本当に良かった。
という事で、ここからは捜査に集中できそうです。
「しかし、ジジイの孫はジジイと違って良く働くのう。私の孫も、かなりの勤勉じゃ」
「当たり前だ。儂よりも遥かに若いのだからのう。何せAランク冒険者だからのう」
今度は、先々代夫人とニース侯爵による孫自慢が始まりました。
まあ、いがみ合うよりも余程良い事です。
ここにいないカミラさんはともかくとして、サギー伯爵は祖母の発言に少し恥ずかしそうにしているけど。
「すみません、念の為に屋敷内を確認させて貰っても良いですか?」
「ええ、やって頂いて構いません。この際ですから、膿を出し切りたいと思っております」
サギー伯爵の許可を貰ったので、僕は手にしていた一つのバスケットの蓋を開けました。
中には、ポッキー達マジカルラット部隊が控えています。
「キュー、キュー」
しかし、ポッキーはお腹丸出しで鼻提灯を出しながら眠っていました。
僕の視線に気がついた他のマジカルラットが、ポッキーを揺すって起こしました。
「キュッ? キュキュ?」
「ポッキー、お仕事だよ。この屋敷の中にある悪いものを見つけてきてね」
「キュッ!」
ポッキーは了解と僕に敬礼のポーズをすると、他のマジカルラットと共にチョロチョロとバスケットから出て屋敷の天井に向かって行きました。
これで、一時間もすれば色々と調べられるはずです。
「じゃあ、僕は一旦国の出向機関に向かいます。ジンさんはどうしますか?」
「俺は屋敷に残っているぞ。念の為に、サギー伯爵から話を聞きたい」
ジンさんは、念の為にサギー伯爵の屋敷に残るそうです。
ポッキー達も調査中だし、ちょうど良いですね。
「ふむ。では、私も出向機関に向かうとしよう。所長の顔を拝みたいのでな。ジジイも、ネズミよりも働かないとならないぞ」
「あのマジカルラットは、ゴブリンキングも瞬殺するレベルじゃ。そういうババアも、自分が歳だと忘れないようにな」
そして、またもやお互いにいがみ合いながら先々代夫人とニース侯爵が立ちあがってきた。
えっ、もしかして僕が何かあった時にこの二人を止めないといけないのかな?
ジンさんとサギー伯爵が、御愁傷様って表情を僕に見せてくれた。
でも二人とも、僕を助けてくれるとは最後まで言ってくれなかった。
僕はとほほと思いながら、二人の後をついて行ってサギー伯爵家の馬車に乗り込みました。
「うわあ、これはどうなっているんた?」
「いやはや、既にスラちゃんが軍を派遣していたか」
「うむ、そのようだのう。我が家も、守備隊を派遣しようぞ」
出向機関の周囲には、多くの軍人が集まって厳重な警備をしていました。
僕達がサギー伯爵領に来たときと比べると、実に何倍もの人数です。
ニース侯爵の言う通り、ゲートを使えるスラちゃんが多くの軍人を王城から連れてきたんだろう。
先々代夫人も、護衛として連れてきた守備隊員に人員を連れてくるように命令していた。
いずれにせよ、一気に大規模な捜索に発展してきました。
そんな中、僕達は出向機関の建物の中に入っていきました。
すると、予想外の人が中にいました。
ぽすっ。
「「お兄ちゃんだ!」」
「ミカエル、ブリットも。一体どうしたの?」
「スラちゃんが手伝って欲しいって」
「宝探しをしているんだよ」
僕に抱きついてきたのは、僕の屋敷にいるはずのミカエルとブリットでした。
更に、ルカちゃんエドちゃんにレイカちゃん達、辺境伯家の双子ちゃんとメイちゃんリラちゃんも出向機関に来て宝探しをしていました。
一応、引率としてルシアさんも来ているみたいです。
どうやら、スラちゃんの勘で色々な物があると予測したみたいです。
その証拠に、次々と応接セットのテーブルの上に証拠品が積み上がっていってました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます