七百五十二話 調査隊から捜索隊へランクアップ
昼食後にみんなで会議室に向かうと、予想以上の人が参加していた。
ブランデー子爵に関する人たちだろうけど、担当部署が多岐にわたっているんだ。
そして、全員の前に二枚の紙が配られます。
一枚は前に見た十年前にブランデー子爵領で発生した災害後の河川を描いたもので、二枚目は一枚目の図よりも河川の岸壁が崩れているものですね。
この場にいる全員が、この二枚の図を見て深い溜息をついていました。
因みに、二枚とも図を書いたのはスラちゃんです。
スラちゃんは、本当に絵が上手ですね。
「あー、うん。大体何が起きているか分かっていると思う。ジン、念の為に報告せよ」
陛下は、本当に頭が痛いだろうなあ。
そして、指名されたジンさんもちょっとブルーな表情をしていました。
「えー、簡潔に報告します。十年前、災害が起きていたのを確認しました。壊れた岸壁の修理もしていますが、その工事が適当でした。その後も小規模な河川氾濫を繰り返しており、いつまた大規模な河川氾濫が起きるか不明です」
「はあ、つまりは工事費の中抜きか。災害を放置する事は、統治能力不足とも取れるな」
ジンさんの報告を聞いた陛下が、またもや溜息をついていました。
普通に考えると、このままじゃまた大規模な災害が起きるぞ。
次は、内務卿が報告します。
「補助金が出ているので工事の完成確認を行うのですが、検査官がブランデー子爵から賄賂を受け取っていました。対象の検査官は、既に捕縛しております」
「となると、この時点でブランデー子爵の贈収賄が確定した事になる。調査チーム派遣の予定だったが、捜索チームに変更しよう」
手抜き工事をして、税金も安くしてもらい懐に沢山のお金を入れる。
更に賄賂工作をして、揉み消しを行ったという事か。
話がだいぶ大きくなってきたなあ。
そして、更にレイナさんがお金を溜めている理由を話し始めました。
「ブランデー子爵邸に入る事はしていないのですが、ブランデー子爵邸は大規模な改築工事を行っておりました。恐らく、不正に集めたお金は屋敷の増改築に充てられているかと推測されます」
「先ほどレイナ様より調査依頼が御座いましたが、ブランデー子爵邸の改築工事申請は提出されておりません。軽微な改築工事なら不要ですが、今回の場合は必ず申請が必要になります」
「屋敷の違法改修か。闇ギルドに使う金ではなさそうだが、いずれにせよ駄目だな」
内務部局の担当者の報告を聞いて、陛下の表情が険しくなりました。
武装などの可能性もあるから、屋敷の改修工事は絶対に申請が必要だそうです。
贈収賄レベルの話ではなくなってきました。
「明日の体験入園に、ブランデー子爵夫妻のどちらかが来るはずだ。令状が準備できたら、直ぐに捕縛して聴取を行う。容疑が固まったら、屋敷の家宅捜索と残りのブランデー子爵夫妻の逮捕と聴取だ。恐らく、外務以外の全部の局で捜査を行わないとならないだろう。直ぐに動ける様に、関係閣僚は準備をして外務卿は万が一に備えて王都で待機だ」
「「「畏まりました」」」
ルーシーお姉様の体験入園で、かなりの大捕物になりそうな気がするよ。
閣僚が陛下に指示を出していたけど、ルーシーお姉様の護衛も強化した方が良さそうだよ。
「陛下、ルーシーお姉様の護衛を増やした方が良いかと。マジカルラット部隊を待機させておけば、他の体験入園に来た人の安全も確保できると思います」
「うむ、許可しよう。ルーカスのマジカルラットが指揮を取れば、何かあっても直ぐに対応できるだろうな。近衛騎士も増やそう。スラちゃんとレイナ達は、ブランデー子爵が何かしないか現地で監視だ」
今年生まれたばっかりのマジカルラットは出せないけど、その他のマジカルラットなら十分に戦力になる。
何より、ルーカスお兄様が体験入園のアテンドでいるってのが大きいね。
アイビー様のアマリリスもいるし、捕縛は直ぐにできます。
と、ここで陛下がスラちゃんにある命令を下しました。
「スラちゃん、贈収賄を確認する為にブランデー子爵邸への調査を許可する。タイミングは今夜だけだが、一夜でできる限り奴らの事を丸裸にするのだ」
スラちゃんは、陛下に恭しく礼をしていました。
とうとうスラちゃん部隊の出動ですね。
容疑も固まっているし、徹底的にやっていいでしょうね。
「アレク達も現地に向かう様に。今回は徹底的に押収物を探して良いぞ」
僕たちというか、主にリズ達が行う宝探しを全力でやって良いとなると、ブランデー子爵邸は本当に丸裸になっちゃうぞ。
こうして急いで準備をする事になり、更にはグロスター侯爵のおじいさまも同行する事になりました。
僕たちも宰相執務室に戻ります。
「本気で宝探しをしていいんだね! よーし、隠されているものは全部見つけるよ!」
「悪い人には、容赦しては駄目なの」
やっぱりというか、リズとエレノアは物凄くやる気をみせていました。
もちろん、サンディとイヨとメアリもやる気をみせています。
とにかく、明日の体験入園がどうなるか次第ですね。
「はあ、せっかくの体験入園が……」
ルーシーお姉様は、体験入園が大事になってどよーんってなっていました。
ある意味、記憶に残りそうな体験入園になりそうだね。
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