七百四十五話 ちびっ子講師は華の騎士様の孫?
新人冒険者講習も無事に終わったので、僕達は冒険者ギルドにある食堂に移動しました。
ここの食堂で食べるのも、ちょっと久々です。
「あいよ。たんとお食べ」
「「わーい」」
おばちゃんが置いた焼き肉定食から出る良い匂いに、ミカエルとブリットは大喜びです。
僕は焼き肉定食を食べる前に、通信用魔導具でティナおばあさまに無事に講師を終えたと連絡します。
スキンヘッドの件は別に問題でも何でもないので、何も書かないでおきます。
すると、直ぐに返信がありました。
「あっ、ティナおばあさまやルーカスお兄様達も、お茶会が終わったからこっちに来るって」
「おばちゃん来るんだ!」
折角の休日なのに午前中にお茶会があったから、ティナおばあさまも他の人も精神的に疲れちゃったみたいですね。
さっそくということで、僕は王城にゲートを繋いでみんなを迎えにいきました。
「うう、ずっとニコニコしているのは疲れたの……」
「うん、そうね。笑顔でいたから、顔の筋肉が痛いわ……」
全員騎士服に着替えてこちらにやってきたけど、いきなりエレノアとルーシーお姉様が疲れ切ってテーブルに突っ伏していました。
他の人も、やっぱりお疲れ気味ですね。
因みに、ティナおばあさまとルーカスお兄様達だけかなと思ったらルカちゃんとエドちゃんもついてきました。
なので、折角だからレイカちゃん達とメイちゃんリラちゃんも呼び寄せました。
「今日はお母様の生まれた公爵家の方が来たから、私たちは強制参加だったよ」
「とても良い人だったのですが、『子どもは何人いても良い』とか気の早い話をされましたわ」
あー、うん、ルーカスお兄様とアイビー様の愚痴も良く分かります。
王妃様の実家は、孫をかなり楽しみにしているんだろうなあ。
王妃様も孫を楽しみにしているだろうし、本人達を目の前にして話は盛り上がっただろう。
「ジン、アレク君とリズちゃんの講師は大丈夫だったの?」
「全く問題なかったですよ。良い感じでトラブル起こした馬鹿もいたけど、無難に乗り切っていましたよ」
「そう、ありがとうね」
ジンさんは、未だに多くの冒険者に囲まれながら食事をしているスキンヘッドを親指で軽く指さしていました。
他の参加者からも良かったと概ね好評だったし、ギルドマスターからも合格を貰ったもんね。
すると、あのスキンヘッドが何故かもじもじしながらこちらにやってきた。
うん、大男がもじもじするととっても気味悪いのですが……
そして、スキンヘッドは僕じゃなくてティナおばあさまに話しかけてきた。
「あ、あの、華の騎士様ですよね? ファンなんです! あ、握手してくれますか?」
「ふふ、握手くらい良いですわよ。ところで、孫の講師はどうだったかしら?」
「あっ、ありがとうございます。うん、華の騎士様の孫?」
スキンヘッドは、笑顔で握手をしてくれたティナおばあさまの顔を見て固まってしまった。
そして、ギギギと音を立てるみたいに僕の方を向いてきました。
僕とリズは、敢えて笑顔で答えます。
「ティナおばあさまです」
「リズのおばあちゃんだよ!」
「はっ? えっ? おばちゃん?」
あっ、スキンヘッドが僕たちの方を向いたまま固まっちゃった。
そして、ティナおばあさまと握手をしたまま、僕とリズとティナおばあさまの間を何回か振り向きました。
ジンさん達もルーカスお兄様達も、もちろん僕たちの周りにいる人も、スキンヘッドに向かってうんうんと頷いています。
スキンヘッドの顔が真っ青になり、滝のように全身からだらだらと汗をかいていました。
だっ。
「す、す、すみませんでした!」
「ふふ、これから気を付けてくれれば良いのよ。今の内に失敗するだけ良かったわね」
「はっ、はっ、はいー!」
スキンヘッドは、綺麗な土下座をしました。
ティナおばあさまが優しく声をかけて、この場は直ぐに収まりました。
そしてスキンヘッドは、トボトボとしながら元の席に戻って行きました。
「まさか散々煽っていたちびっ子講師が、実は憧れの人の孫だったとは。くくく、これは傑作だな」
「ジン、人聞きが悪いわよ。まあ、私もちょっと演技をしたけどね」
おお、ジンさんとティナおばあさまがお互いに悪い顔をしているよ。
まあ、あのスキンヘッドにとっては良い薬になったでしょうね。
「折角だから、冒険者登録している者で薬草採取をして、冒険者登録していないちびっ子どもは辺境伯家に行って遊んでくるか」
「「「さんせー!」」」
こうして、ジンさんの一言でみんなの午後の予定が決まりました。
冒険者登録していないちびっ子は、今年の秋になったら冒険者登録する予定だもんね。
それでも、辺境伯家の双子ちゃんとかと遊べるからみんなも良い笑顔です。
ではでは、昼食を食べたらちびっ子達を辺境伯家に送らないとね。
それまでは、目の前にある焼き肉定食を堪能しましょう。
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