七百十話 波乱な謁見の始まり

「さて、時間だな。ルカとエドも、頑張って並ぶのだぞ」

「「はい!」」


 僕達が謁見の間に入る時間になったので、陛下がルカちゃんとエドちゃんの頭を撫でながら話をしていた。

 ルカちゃんとエドちゃんも、元気よく手を上げていますね。


「じゃあ、スラちゃんとプリンはエリちゃんの護衛宜しくね」


 控室に残るエリちゃんの護衛として、スラちゃんとプリンが残る事になります。

 二匹とも、触手をふりふりとして任せろって言っていますね。

 アマリリスとルーカスお兄様のマジカルラットもいるし、たとえゴブリンキングが十体現れようとも楽勝できますね。

 僕達は、係の人の後に続いて謁見の間の袖口に行きます。


「皆様静粛に、王族の入場となります」


 僕達が袖口から入って行くと、貴族の礼をとる当主の姿がありました。

 よく見ると、ミカエルも頑張って貴族の礼をしているね。

 ルカちゃんとエドちゃんも、頑張って気をつけをしています。


「続いて、閣僚並びに新閣僚の面々が入場します」


 僕達がいつものポジションに着くと、反対の袖口から閣僚が入ってきます。

 うん、ジンさんがカチコチに固まった表情でロボットみたいな歩き方で入ってきたぞ。

 王族の皆が、ジンさんを見て思わず吹き出しそうになっちゃった。


「皆様、これより陛下が入られます」


 おっと、閣僚がポジションに着いたら早速陛下が入ってきたぞ。

 いつもよりも、ちょっと早いタイミングだね。

 僕達も臣下の礼をとりますを


「皆の者、面を上げよ」


 陛下の声で、一同顔を上げます。

 おや?

 子爵のいる辺りに、緑色のツンツン頭の若者がいるよ。

 なんか怪しそうな雰囲気だし、よりによってミカエルの近くにいるなあ。

 ミカエルの側には同じく子爵のハンナさんがいるけど、ちょっと気に留めておこう。


「これから新閣僚の発表を行うが、その前に経緯を話そう。その為に、皆を集めた」


 あれ?

 陛下が、先に閣僚交代の経緯を話し始めたよ。

 となると、あの過激派を抑え込む為なのかな。


「我が国は、現在改革の真っ最中である。古き時代に作られた法律や制度を、今の時代にあった形に直している。残念ながら、制度は急に変えられない。制度を変えることによる影響を調査し、影響を最小限にしなければならない。その為に、順を追って対応している」


 おっと、いきなり法改正について話し始めたよ。

 間違いなく、あの過激派を抑える為だね。

 あの緑色のツンツン頭の若者が、ちょっと不機嫌な表情をしているよ。


「我々の行う政治は、常に国や民がいることを忘れてはならない。国の安定をはかり、常に前進する政治でないとならない。しかし、残念ながら政治を自分の勢力を伸ばすための椅子取りゲームとしか考えていない者がいる。非常に嘆かわしい事だ」


 陛下の話を聞いて、少し周りがざわざわとしている。

 こんな話が出てくるのは、バイザー伯爵の処分通達以来だもんね。

 当の緑色のツンツン頭は、苦虫を噛み潰したような表情をしているよ。

 ミカエルの側にいたバザール子爵のハンナさんもミカエルもその事に気がついていて、かなり警戒しているぞ。


「そして、何とも嘆かわしい事に闇ギルドの甘い言葉に乗ってしまい事件を起こした者がいた。当たり前だが、闇ギルドとの取引は厳禁だ。その事を忘れないように」


 既にガンコ侯爵の起こした事件は広く知られているし、クエスト男爵家の件もある。

 ここで何か態度を変えるのなら、闇ギルドとの取引が疑われるのだけど。

 うん、あのツンツン頭が未だに苦々しい表情を変えていない。

 他にも何人か態度がおかしい貴族がいるから、鑑定で貴族名を調べておこう。

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