七百六話 心配性なお兄ちゃんに激怒した妹

 二日後、僕達はブランターク男爵領に来ました。

 ここでも、冒険者活動をしながら街の人に意見を聞きます。

 領主が急に変わったり魔物溢れが発生したりと、最近まで大変な思いをしていたよね。

 きっと良い意見が聞けると思います。

 その前に、ランディさんにご挨拶しないと。

 僕達は屋敷に向かいました。


「ルルー、何か問題起きていないか?」

「お兄ちゃん、大丈夫だよ。何も問題ないよ」

「「「……」」」


 屋敷に入ってメイド服を着たルルーさんが僕達を出迎えた瞬間、またもやジンさんが心配なお兄ちゃんモードになりました。

 もういつものやり取りなので、皆もジンさんを見て呆れています。


「皆さん、遠い所からありがとうございます。領民の意見を聞いてくれるのは、僕にとってもとてもありがたいです」

「私も、皆さんと一緒に同行しますわ」


 ジンさんとルルーさんの事をスルーして、ランディさんとクラヴィーアさんが僕達を出迎えてくれました。

 因みに、ルルーさんも僕達と一緒に同行してくれるそうです。


「お兄ちゃん、もう行くよ。皆を待たせちゃ駄目でしょう!」

「あっ、ああ……」


 あーあ、とうとうルルーさんがプンプンモードになっちゃったよ。

 ジンさんもルルーさんに怒られて、思わずしゅんってしちゃったね。

 でもいつもの事なので、特に気にしないでおきましょう。

 という事で、先に街に出て情報を集めます。


「やっぱり物流は大事だよな。物がなければ生きていけねーよ」

「水も大事だよな。井戸を掘ってくれたのが大きいぞ」

「仕事があるのはありがたいな。お館様が計画的に開発をしているから、常に仕事があるぞ」


 確か前世の授業で、衣食住の大切さを学んでいます。

 ブランダーク男爵領は住は足りているので、衣食を充実させていますね。


「もう少し、安全な街になってくれればいいわ。冒険者が多いから、ちょっと怖い時があるのよ」

「まだ魔物の恐怖はあるわ。やっぱり、命は大事だからね」


 安心して暮らせる街を作る為に、もう少し警備を強化してもいいかもね。

 後は、街道の動物や魔物の駆除を増やしても良いかも。


「うーん、やはりまだ安全には課題がありますわね。巡回を増やさないとなりませんね」

「守備隊の人数も限られますし、そこは仕方ないかと。お金も貯まってきたので、少し増やすのも良いかもしれませんね」


 僕が集めた意見を通信用魔導具で宰相に送っていると、クラヴィーアさんとルルーさんが話し合っていました。

 やっぱり安全は大切なので、直ぐに対策を考えていました。

 その後は、森に移動して薬草採取です。


「とー!」

「えい」

「「「グルアア!」」」


 ブランダーク男爵領の森は中級以上なので、適度に動物や魔物が出てきます。

 僕達は全く気にしないけど、やっぱり初心者にはキツい森ですね。


「いっぱいとれた!」

「リラも!」


 とはいえ、護衛がいれば沢山の薬草が採れます。

 メイちゃんリラちゃんは、スラちゃんとプリンと一緒に沢山の薬草を集めていました。

 中には希少な薬草もあるので、ある程度腕がある冒険者なら簡単にお金を稼げますね。

 こうして、薬草採取も無事に終わったので、冒険者ギルドで換金後に屋敷に戻りました。


「うーん、やはり警備が一番の課題ですね。中級以上の冒険者は人格に問題のある人は少ないのですが、それでも対策をきっちりとした方が良いですね」


 僕達が街から集めた意見をランディさんに見せると、クラヴィーアさんとルルーさんと同じ感想を漏らしていました。

 辺境伯領は街の巡回回数も多いから、やっぱり差が出てくるよね。


「場合によっては、辺境伯様に兵の派遣をお願いするかもしれません。また、冒険者向けに街道の動物の駆除を依頼するのも良いかもしれませんね」

「幸いにして冒険者の数は多いですから、討伐系は対応出来そうですね」


 暫定的な対応を話して、今日の所はこれで終わりですね。

 さてさて、あとはあの人を止めましょう。


「お兄ちゃん、毎回来る度に過剰に心配しないでよね。侍従からも、シスコンなお兄様ですねって言われるんだよ!」

「はい……」

「さっきも森の中の動物や魔物を全部狩ってくるって言ったけど、本当にやりすぎです! 私も、もう大人なんだよ!」

「はい……、はい……」


 またもやルルーさんによる説教が始まってしまい、ジンさんは正座をして項垂れていました。

 あと一時間はルルーさんの説教は終わらないと判断したので、僕達は応接室でゆっくりとする事にしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る