七百七話 準備はしっかりと

 一週間後に貴族を集めて、新閣僚を発表する事になりました。

 既に各貴族に案内を送っていて、貴族当主が王城に来れない場合は必ず代理を立てる様に周知しています。

 恐らく、闇ギルドへの対応も含めて話をするのでしょう。


「アレク君もリズちゃんも、謁見用の服を準備しましょうね。二人とも、去年よりも大きくなったからね」

「「……」」


 僕とリズは、ご機嫌なティナおばあさまの部屋にいます。

 またもやベッドの上には、僕用とリズ用の新作の服が並んでいました。

 更に、やる気満々のティナおばあさまの侍従が控えています。


「て、ティナおばあさま、僕はまだ昨年作って貰った服が着れますよ」

「り、リズなの、おばちゃん」

「二人とも、何を遠慮しているの。ほら、直ぐに終わるから採寸しちゃいましょうね」


 僕とリズは着せ替え人形になるのが分かっていたのでティナおばあさまに遠慮していたのだけど、当のティナおばあさまはニコニコしながら強引に進めていた。

 しかも服の採寸だけでなく服に似合う髪のセットやアクセサリー合わせまでしていたので、またもや僕とリズはぐったりとしてしまった。


「「はあ……」」


 食堂に行くと、もう二人ぐったりとしている人がいた。

 ルーシーお姉様とエレノアだ。

 二人も、謁見用ドレスのサイズ直しをしていたみたいだ。


「エレノアは体がどんどん大きくなる頃だから、毎年ドレスは作り直しになるよ」

「その度に、着せ替え人形は嫌なの……」

「リズもなの……」


 エレノアは僕とリズと同じ年だから、この先暫くは毎年新しいドレスを着ないといけない。

 リズも一緒になって、ずーんって落ち込みながらテーブルの上に突っ伏していた。


「うう、最近ちょっと胸が痛いの……」


 ルーシーお姉様は最近お胸が大きくなったので、身長の伸びと合わせてドレスを作り直しています。

 でもルーシーお姉様、皆の前で胸をもみもみするのは止めた方が良いですよ。


「今回は私も学校を休んで謁見に参加するよ。私も服を作り直したよ」

「私もですわ。まだまだ、縦にも横にも成長が続いていますわ」


 ルーカスお兄様もアイビー様も、謁見用の服は作り直しです。

 ルーカスお兄様はどんどんと身長が大きくなっていて、体格もガッチリしているもんね。

 アイビー様は、その、だいぶお胸が大きくなってきました。

 確かに、縦にも横にも大きくなっていますね。


「今回は、ルカちゃんとエドちゃんも参加するんだよね。頑張ろうね」

「「がんばるー!」」


 僕達が謁見デビューした年になったので、今回はルカちゃんとエドちゃんも謁見に参加します。

 まあ僕達の時と違って、立っていれば良いだけだもんね。

 エリちゃんはまだ赤ちゃんなので、控室でお留守番です。


「僕も参加する?」

「ミカエルも謁見に参加するよ。爵位はジンさんと同じだから、サンディと一緒にいてね」

「はーい」


 ミカエルもバイザー子爵家当主だから、勿論謁見には参加します。

 でも、ミカエルはまだ五歳だから、じっと話を聞いてくれれば良いよね。

 ブリットは、エリちゃんと一緒に控室でお留守番です。

 ジンさん達の子どものレイカちゃん達も、控室にお留守番です。

 サンディはロンカーク伯爵家当主なので、辺境伯様と一緒にいる予定です。

 サンディは、僕達よりも先に着せ替え人形になっていたっけ。

 サンディの疲れた表情を見て、女性陣は一気に元気を失っていたなあ。


「今から疲れてどうするの? 謁見当日は、アレク君とジン以外はやることないのよ」

「そうよ。二人以外は立っていれば良いのよ」

「「えっ?」」


 ここで、王妃様とアリア様から思いがけない追撃がありました。

 あの、何で僕とジンは謁見でやる事があるの?


「あれ? 話を聞いていないかしら? 二人は副宰相格として、壇上に上るのよ」

「二人とも功績はバッチリだし、何も問題ないわ。肩書が変わるだけで、特にやる事が変わる訳でもないわ」


 王妃様、アリア様、僕もジンさんもそんな話は全く聞いていませんよ。

 今でも宰相補佐官という、大層な肩書が付いているんだよね。


 ガチャ。


「おお、そういえばその話をしていなかったな。今回宰相が新任なので、周りを固める人選をした。アレクとジン以外にも、数人副宰相を任命する予定だ。アレクは既に実務をやっているし、ジンも現場対応で活躍しているから何も問題ない」

「あの、陛下、そんな重大な話は先に話をして下さいよ」

「ははは、昨日決まったばかりだからな。副宰相には決定権はないし、実質的に相談役だ。カーセント公爵やグロスター侯爵みたいな、経験豊富な者が就くぞ」


 陛下、僕をそんな凄い人達と一緒にしないで下さいよ。

 ニヤリとした陛下を見て、僕は思わずガクリとしちゃいました。


「俺、数年前まで平民だったはず……」


 そして、ジンさんは久々に壊れちゃいました。

 僕も、ジンさんの気持ちは分かるけどね。

 でも、旧宰相の孫娘と新宰相の娘を嫁に貰っているんだから、副宰相になっても特に問題ないと思うんだけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る