七百五話 皆で久々の森へ
さてさて、久々の森だけど特に変わった所はないみたいですね。
春になって、沢山の薬草が生えていました。
「「「グルルル」」」
そして、何故か飢えたウルフが僕達を待っていました。
「なんでウルフが飢えているんでしょうか?」
「今年は餌となる小動物が少なかったんだよ。春先の天候不良の影響だな。なのに、ウルフの繁殖数が多かったみたいだぞ」
そっか、僕は殆ど王城に居て気が付かなかったけど、辺境伯領では天気がよくなかったんだね。
ジンさんも、冒険者から話を聞いたみたいです。
餌不足になれば、飢えるのは当然だね。
「だから、ウルフは適当に狩っても全く問題ない。というか、ある程度は狩って良いだろう」
「飢えたウルフが、人を襲うことがありますね」
という事で、まずは目の前に現れたウルフを倒します。
どうやって倒すかなと思ったら、既に皆が動いていました。
シュイン、シュイン、シュイン。
「「えーい!」」
ズドーーーン。
「うん、上手くウルフの頭だけ狙えたね」
「「えへへ」」
まずは、ミカエルとブリットが合体魔法でウルフの頭を消滅させていました。
前回はウルフ自体を消し飛ばしたから、二人の魔力制御も上がっています。
カミラさんも、ニコリとしながら二人の事を褒めていました。
シュイン、シュイン。
「次、いきます」
「終わったら、物理攻撃をして下さい」
ドーン、ドーン、ドーン。
続いて、エレノアとメアリが的確にウルフの頭めがけて魔法を放ちます。
氷魔法と土魔法なのに、物凄い音がしているね。
「ちょやー!」
「えい!」
「やー」
ザクッ、ザクッ、バキン!
最後に、残ったウルフをリズ達物理攻撃班が倒します。
うん、とっても良い連携攻撃です。
久々とは思えないですね。
「とまあ、上達するとパーティ内の連携攻撃ができます。まずは訓練あるのみですね」
「ほわあ。凄い、凄すぎです」
「でも、キチンと魔法と物理攻撃を分けているよ」
僕が四人に簡単に説明したけど、四人ともとってもビックリしていました。
でも、鍛えていけばこのくらいはできるようになるよ。
「じゃあ、新人は血抜き講座をやるぞ。血抜きの経験が少ないのも参加だよ」
「その後は、リズが薬草採取のやり方を教えるよ」
「「「はい!」」」
そして、おばちゃんとリズによる血抜き講座と薬草採取講座が始まりました。
僕達が仕事で忙しい間に冒険者登録をした人も結構いて、沢山のウルフを倒したので血抜き講座にはちょうど良かったみたいです。
勿論、アシスタントとしてスラちゃんとプリンがついています。
その後は、リズによる薬草採取講座ですね。
「ほらほら、教わるのは悪い事じゃないぞ」
「記憶が曖昧な奴も、話を聞いていろ」
冒険者のおじさんが、周りの冒険者に声をかけています。
そのお陰で、おばちゃんとリズ達の周りには沢山の冒険者が集まっていました。
「辺境伯領は、初心者冒険者が活動するのにちょうど良いですね」
「そうだな。真面目に一年も勉強すれば、他の領地でもそこそこやれるだろう」
辺境伯領は相変わらず好景気なので、周囲の村から来る人も沢山います。
僕が不在の間は、ミカエル達が教会や炊き出しの時に治療をしていたそうです。
なので、辺境伯領では、子どもも生き残れる確率が上がっています。
「結局、住民を大事にしないと税金は取れないし、税金が取れないと事業も出来ないぞ」
「おっ、ジンが貴族らしい事を言っているぞ」
「すげー珍しいな」
「俺だって、とんでもないメンバーに囲まれていたからな。そこそこは、貴族らしい事は言うさ」
ジンさんの言う通り、結局は住民を大切にしないと事業ができないんだよね。
公共事業が進んでいけば、更に住民も集まる。
今の辺境伯領みたいに、良い領地が増えれば良いんだけどね。
そんな事を話しながら、僕達は薬草採取を行いました。
「よっし、これで終わりだな」
「凄い、こんなに沢山の薬草が採れるなんて」
「もっと少ないと思っていたよ」
こうして、無事に薬草採取は終了しました。
午前中だけでも予定量より沢山採れて、皆ビックリしていました。
辺境伯領は人も多いし、治療研究所もあるから薬草が幾らあっても問題ないんだよね。
きっと、皆は薬草を冒険者ギルドに卸して、その金額にビックリするだろうね。
「じゃあ、午後は少し休んでから王城に行くよ」
「「「はーい」」」
僕達も、冒険者ギルドの食堂で昼食を食べています。
何だか、この味も久々な気がするね。
午後も頑張ってお仕事をしないとね。
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