七百話 精神が不安定なお姉さん
次の週には、共和国に外遊で向かいます。
来週には外遊も終わるので、気を引き締めます。
因みに、今日はルーシーお姉様が婚約者のジェットさんに会いに行く為に、一緒についていきます。
どよーん。
「はあ……」
共和国について会議室に入ると、ビシッとしているサンラインさんとジェットさんに加えて、全身から負のオーラを隠さないでいる外交担当のクレイモアさんがいました。
うん、誰もがクレイモアさんに注目していますね。
ここは、一番話を知っていそうなクレイモアさんの弟さんに、何でお姉さんがこうなっているのか聞いてみましょう。
「ジェットさん、お姉さんどうしちゃったのですか? どす黒いオーラが出ていますけど」
「実は、先ほど姉の部下におめでたが分かりまして。表面上は何とか持っていたのですが、やはり先を越されたショックがありまして。更に昨日は別の部下の結婚式でして、そこでも結婚相手を見つけられませんでした」
「「「あー、そういう事か」」」
うん、これはいつもの事ですね。
クレイモアさんを王国での結婚式に招待しても、いつも結婚相手を探していたっけ。
取り敢えず、話を進めちゃいましょう。
流石にクレイモアさんがしょんぼりモードなので、ジェットさんとルーシーお姉様が外務担当同士の話し合いに参加する事になりました。
ジェットさん曰く、仕事は真面目にやるので大丈夫だとの事です。
「アレク殿下も、本当にお忙しそうだ。王国の腐敗の一掃に、大活躍中だとか」
「主に動いているのは、僕じゃなくてリズ達なんですけどね。中々の効果が出たので、来年も特別調査チームを稼働させる予定です」
「リズ殿下の危機察知能力が素晴らしいのも、特別調査チームが稼働している要因ですな。我が国も、現在腐敗防止対策をしております」
リズ達の勘は、本当に凄いもんなあ。
僕じゃあ、到底見つけられない物までみつけるもんね。
ただ、共和国が進めている僕達みたいな勘に頼らない対策も絶対に必要ですね。
「実は、共和国でも闇ギルドの活動が活発になっております。末端の構成員を捕まえる事が多いのですが、奴らはどうも資金集めに奔走している様ですな」
「私達の国でも、闇ギルドが資金集めをしていました。また、貴族のコントロールをしようとしている例もありました」
「闇ギルドが資金を欲しているのは間違いないでしょう。ともかく、奴らの動きを注視しなければなりません」
共和国でも、闇ギルドが活動を活発化させているんだ。
資金を集めて何をするかが全く分からないけど、とにかく闇ギルドをどうにかしないと駄目だね。
その後も、僕はサンラインさんと色々な話をして会談は無事に終了しました。
「しかし、アレク殿下もようやく秘書をつけられたか。アレク殿下は本当にお忙しいので、キチンとスケジュール管理をしたほうが良いですよ」
サンラインさんは、チラッとローリーさんを見て秘書の話をしてきました。
ローリーさんがきっちりと僕のスケジュールを管理してくれるので、本当にありがたいです。
秘書さんの能力って凄いなあと、改めて感じました。
さてさて、問題の外交担当同士の話し合いはどうなっているのでしょうか。
僕達は、皆がいる部屋に向かいました。
「うう、どうせ私は弟にも先を越される三十路の独身ですよ……」
「「「……」」」
そこには、何故か号泣しているクレイモアさんの姿がありました。
外交担当同士の会談は全く問題なく終わり、ジェットさんとルーシーお姉様が仲良く話し始めたそうです。
すると、クレイモアさんのスイッチが再び入ってしまったそうです。
「すみません、このまま姉を連れて帰ります。多分、今日は仕事にならないかと」
「そうだな。王国との会談も終わったし、今日は帰ってよいぞ」
うん、今日のクレイモアさんは精神的に不安定だから、ゆっくりと休んだ方がいいですね。
クレイモアさんとジェットさんのお家には僕も何回も行っているので、ゲートを繋いで二人を見送りました。
「ルーシーお姉様、今日は残念でしたね。また後日、ジェットさんとゆっくりと会いましょう」
「うん、それは大丈夫なの。それよりも、クレイモアさんが私の将来のお義姉様になる方が不安になったわ」
ルーシーお姉様の遠い目が、とっても印象的でした。
何とかクレイモアさんに良い人が現れてくれないかと、僕も切に願いました。
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