六百九十三話 いきなり手柄をあげちゃった

 という事で、翌日から特別調査チームが稼働しました。


「悪い人を捕まえるぞ!」

「「「おー!」」」


 早速というか、リズ達が元気良く声を上げていました。

 現場に行って確認するメンバーに、当初のリズ、エレノア、サンディ、イヨに加えて、ルーシーお姉様とメアリも参加する事になった。

 ジンさん達も一緒なので、あくまでもジンさんバリアを突破した人じゃないと一緒に参加できません。

 更に、スラちゃんとプリンも捜査に参加します。

 因みに、ルーカスお兄様とアイビー様は新学期の生徒会準備で学園に行くので不在です。

 更に職員がつくまでは、僕一人で事務仕事をする事になりました。

 どうしてこうなった……


「リストを元にチェックすれば大丈夫よ。現場で誰をリストアップしたかを共有するだけだから、弟くんがいれば十分よ」


 ルーシーお姉様も、書類を手にやる気満々です。

 まあ、現場の統制をジンさん達がしてくれれば大丈夫ですね。


「行ってくるねー」

「気をつけてね」


 という事で、早速リズ達は僕のお膝元である宰相管理の部署に向かっていった。

 暫くは何も起こらないだろうな。


 カリカリカリ、ペラペラ。


「宰相、最近は書類の間違いが少なくなりましたね」

「新人も、業務に慣れてきたのだろう。とても良い傾向だ」


 不正発覚の原因となった書類の虚偽記載も無くなり、単純な記載ミスのみになっていた。

 とっても良い事だし、書類整理がはかどります。


 バン!


「た、大変です。秘書課で、レイナ様と職員が言い争いになっています」

「えっ、まだ三十分ですよ?」


 リズ達の付き添いの近衛騎士が、宰相執務室に駆け込んできました。


「むう、儂の通信用魔導具にもカミラから連絡が入ったぞ。アレク君、行ってみるか」

「そうですね。いきなり何があったのかな?」

「ご案内します」


 近衛騎士だけでなく、カミラさんからも連絡が入るなんて。

 結構大事になってそうだよ。

 僕と宰相は、近衛騎士の後をついて一階下の秘書課に向かいました。


「このくそ野郎が! 女性を食い物にしやがって!」

「ぐふっ、ぐが、い、息が……」

「おい、レイナ。一旦止めろ。拘束して話を聞くぞ」


 秘書課に着くと、とんでもない事が起きていました。

 普段はとても優しいレイナさんが、鬼の形相で太った男性の首を締めていたのです。

 ジンさんだけレイナさんを止めていたけど、他の女性陣はレイナさんを止めるどころか首を締められている太った男性を睨みつけていました。


 バリバリバリ。


「あばばばば……」


 スラちゃんのサンダーバインドが決まってから、レイナさんはようやく太った男性から離れました。

 しかし、サンダーバインドだから継続ダメージだし、スラちゃんも怒っているって事ですね。


「おじいちゃん、実はね……」

「はっ? なんじゃと!」

「えっ! そんな事が!」


 カミラさんから話を聞いたら、宰相と僕は物凄く驚いちゃいました。

 あの太った男性は秘書課の課長で、昏睡強姦の容疑があるそうです。

 秘書課に着いた途端、リズ達が課長を指差して大悪人と叫んだそうです。

 たまたま秘書課にレイナさんと学園時代から仲が良い秘書がいて話を聞いたら、こんな事があったと泣きながら話したそうです。

 レイナさんの同級生も被害にあっていて、レイナは当然激怒します。

 その間に、リズ達が課長の机を調べたら、色々な薬が出てきたって訳です。

 近衛騎士も、鑑定が使える者を呼びに行ったそうです。


「えっと、睡眠薬に催淫薬に避妊薬と。とんでもない物が出てきましたよ」

「近衛騎士の鑑定が済み次第、コイツは重犯罪者の牢屋にぶち込みだな。他にも協力者がいるかもしれんぞ」


 机の上に置かれた薬を鑑定したら、ため息が出てしまいました。

 直ぐに宰相も、色々と指示を出していました。


「さて、次は誰と協力していたか話を聞かせてもらわないとな。こんな大事、一人でできる訳ないもんな」


 シャキン。


「あばばばば」


 今度は、ジンさんが聖剣をキラリと抜いて課長の前に突き出しました。

 制限に魔力が込められていき、黄金色に輝いていきます。

 レイナさんの同級生イコール、ジンさん達全員の同級生が被害にあった事になるもんね。

 というか、スラちゃんのサンダーバインドの影響で、課長は痺れて喋れない気がするけど。


 シュイーン。


「はい、これで大丈夫だよ」

「もう、お薬の影響はないの」

「あっ、ありがとうございます……」


 そして、リズ達はというと被害にあっていた人を治療していた。

 でも、体は治せても心のケアも必要だよね。


 ザッザッザッ。


「ここに女性の敵がいると聞きましたが」

「あっ、お母様だ」


 そして、何故か完全フル装備の王妃様が近衛騎士と共に秘書課に現れました。

 気のせいか、近衛騎士も全員女性なんですげど。

 ジンさんが聖剣を突きつけている課長を見るやいなや、王妃様から般若のオーラが溢れ出ました。


「王妃様、アレクサンダー殿下の鑑定結果と一致しました」

「ご苦労さまね。コイツを死刑囚牢に入れて、厳しく尋問するように。また、コイツの関係者が把握でき次第、特別調査チームと連携して一人残らず捕縛する様に」

「「「はっ」」」

「あばばばば」


 あっ、課長の入る際が重犯罪者牢から死刑囚牢にランクアップしちゃった。

 貴族令嬢に対する犯罪なので、かなりの重罪になるそうです。

 結局、課長はサンダーバインドをかけられたまま連行されていきました。

 スラちゃん曰く、あと三十分はサンダーバインドは解けないそうです。

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