六百九十四話 お兄ちゃん付きの秘書?

 特別調査チームが稼働して、一時間も経たない内にかなりの大物を引き当ててしまった。

 連行されていく秘書課の課長の後を、女性の近衛騎士がついて行った。


「こんな事になっているとは。本当に謝罪のしようもないですわ」

「お、王妃様、お顔を上げて下さいませ」


 レイナさんの同級生の元に王妃様が行って、深々と謝罪していました。

 同級生はかなり困惑していたけど、王妃様も思う所はありそうですね。


「因みに、係長もしくは課長代理や補佐はいますか?」

「あの、私が係長です……」


 そして、王妃様の声にレイナさんの同級生がおずおずと手を上げました。

 一斉に、他の人の視線が集中しました。


「あなた、名前は?」

「エーベンブルク子爵家のモリスと申します」

「では、内務卿に報告しますが、秘書課の課長は不法行為により職務解任。課長代理にモリスを充てる事とします」

「えっ!」


 黄色のウェーブの髪でスタイル抜群のモリスさんは、王妃様から言われた事を把握できないでいました。

 とはいえ、課長が捕まったのだから、この配置は妥当だと思うよ。


「後で、エーベンブルク子爵家には王家より正式に謝罪をいたします。慰めにもならないかと思いますが、慰謝料も支払いましょう。勿論、他に被害を受けた者もそうです。秘書課に居にくいという方は、部署異動も行いましょう」

「王妃様、色々とありがとうございます」


 キチンと保証しないといけないし、宰相も既に閣僚にも連絡していた。

 そんな中、一人の小柄で青髪のセミロングの女性がおずおずと手を上げてきた。

 この女性も、幼い感じの割にスタイルが良いです。

 というか、秘書課の女性は全てスタイルが良いですね。


「お、王妃様、ローリーと申します。申し訳ないのですが、部署異動をお願いしたく。やっぱり色々と思い出してしまって……」

「勿論、対応しますわ。では、ローリーは暫定的に秘書課から特別調査チームへの出向扱いとして、後程正式に調整しましょう」

「はっ、はい。ありがとうございます」


 という方で、ローリーさんが一時的に特別調査チームの一員となりました。

 話を聞くと、何と学園を卒業して配属されたばかりだそうです。

 庶民出身で、職を失う事をあの課長が脅迫したそうです。

 この話を聞いた王妃様を加えた女性陣が、僕達も抑えきれないレベルで大激怒しています。


「王妃様、ローリーさんの心のケアの為にエマさんとオリビアさんを呼んでも良いですか?」

「ええ、お願いね」


 という事で、早速エマさんとオリビアさんを呼び寄せて、簡単に話をしました。


「ローリーちゃん、もう大丈夫だからね。そのクズ課長が許せないよ!」

「とっても成績優秀で、生徒会にも入れたかった程なんですよ。私も久々に本気で怒りましたわ」

「あの、その、ちょっと……」


 あっ、失敗しちゃった。

 怒れる女性陣を増やしただけだったよ。

 そして、このタイミングで課長への尋問結果が出ました。


「確認できました。人事課と繋がっていました。自分が昇進で有利になるようにと、人事課長や係長に他の人物に接待していたそうです」

「そう、ありがとうね。では、人事課に向かうわよ」

「「「おー!」」」


 うん、これはもう王妃様達を止められないね。

 ジンさんも怒っているし、もう僕にはどうしようもないよ。


「王妃様、僕はローリーさんと宰相執務室に戻って、リストの整理を行います」

「流石はアレク君、冷静になっているわね。宜しくね」


 こうして僕は、ローリーさんと共に人事課に向かっていった集団を見送っていました。

 うん、人事課の該当者が生きて捕まるか、とっても不安です。


「ローリーさん、あの化け物から守れなくてごめんなさいね」

「いえ、私も早めに先輩に相談すれば良かったです……」


 モリスさんがローリーさんの事を慰めていたけど、絶対に課長から公言しない様にと圧力をかけられていたのだろう。

 まだ荷物も殆どないし、バッグ一つで上の階の宰相執務室に向かいました。


「ただいま戻りました」

「お、お邪魔します……」

「あっ、話は聞いています。こちらにどうぞ」


 宰相執務室に戻ると、既にローリーさんの席も用意されていました。

 ローリーさんは、職員に案内されて席に着きます。

 僕付きの職員になるので、僕の隣の席ですね。


「ローリーさん、この部屋にいれば絶対に安心よ。何せアレク殿下がいますから」

「既に宰相にも指示を出しているほど優秀だし、可愛い婚約者もいますもんね」

「はっ、はあ……」


 女性の職員が集まってお喋りタイムになったけど、いきなりの事でローリーさんはまだ追いついていないみたいです。

 それに、僕は他の女性に手は出さないですよ。

 そもそも、まだ九歳なんですから。


「ローリーさん、お茶を飲んだりお菓子を食べたりしてゆっくりして下さい。直ぐに、慌ただしくなりますから。少ししたら、特別調査チームの話をしましょう」

「ありがとうございます」


 職員の人も、ローリーさんに他愛のない話をしています。

 さて、完全に予想外の事が起きちゃったけど、調査任務は続けないとね。

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