六百八十八話 早朝からの謎の来訪者
翌朝、起きるとちょっとしたひと騒動が起きていました。
スラちゃんが、僕達の事を急いで起こしてきました。
「な、何が起きたんだ？」
「眠いよー」
リズ達も、寝間着のまま眠たい目を擦りながら僕の後をついてきました。
すると、屋敷の庭で大騒ぎしている二組の女性の集団と、一組のハラハラとしている集団が。
大騒ぎしている集団を、必死で兵が止めていました。
「あの人、悪者だよ！」
「悪者！」
「ミカエル、ブリット、まだ分からないから指ささないの。でも、あの人達は一体なんだろう？」
ミカエルとブリットの勘が働いているのを見ると、二人の女性に何らかの問題があるのは間違いなさそうです。
ぱっと見は細身でスタイルも良いのに、とっても残念な人に見えます。
とはいえ、クエスト男爵家の門兵が通したとなると、少なくともクエスト男爵家に関係がある人物みたいですね。
「ふわあ。ったく、朝っぱらから大騒ぎしやがって。誰だ、あの化粧のキツイのは」
「ジン、言い過ぎよ。確かに化粧がキツイのは認めるけど」
「香水の匂いもキツイわね。キチンとマナーを学んでいるのかしら」
ジンさん達も、寝間着のまま庭にやってきました。
レイナさんとカミラさんは、二人の女性の事をボロクソに言っています。
一体誰なのかなと思ったら、この人が姿を見せたら一気に事態が動きました。
「うーん、まだ眠いよ。って、あの人って確か……」
「あっ、マテオ！ あの人はどこにいるのー！」
「直ぐに私の所に出しなさい！」
「わあ！」
眠そうなマテオ君が姿を現したら、化粧が濃くて香水の臭う二人の女性が、兵の静止を振り切って一気に詰め寄ってきました。
うん、これは一旦止めないと。
というか、僕もとっても怖いし。
バリバリバリ。
「「「ギャー！」」」
事情を聞かないといけないので、僕は軽い電撃を二人の女性に浴びせました。
ついでというので、女性に付き添っていた人もダークケージで動けなくなって貰います。
「マテオ君、この二人は知っているの？」
「はい、兄の婚約者です」
「「「婚約者！」」」
おお、皆一斉に声をあげちゃったよ。
あの捕まった長男次男に、こんな婚約者がいたとは。
ても、何で婚約者がここにいるんだ？
「だから、あの人を出しなさい。争いが終わったら、結婚するって言ったのよ」
「いいや、私の旦那様が争いを収めたのよ。あの人を出して」
えっと、色々と言いたい事はあるけど確認しないといけない事があるぞ。
ジンさんも気がついたみたいです。
「よう、お前ら。何で争いが終わったって知っているんだ？」
うん、僕も何で一連の騒動が終わったって知っているのか気になりました。
クエスト男爵領の人なら分かるけど、婚約者って事なら少なくともクエスト男爵領にはいなかったはずだよ。
「そんなもの、隣の領にいて話を聞いたからに決まっているでしょうが！」
「あの執事の使いが連絡してきたのよ。そろそろ、争いが終わるってね」
「「「えっ！」」」
今朝二回目のビックリタイムです。
あの執事の使いって事は、闇組織と繋がりがあるのでは？
直ぐにカミラさんが、通信用魔導具を取り出して王城に連絡を取りました。
「レオ君、こいつら全員王城に連れてきてだって。場合によっては、辺境伯様にも連絡するそうよ」
「でしょうね。本当に、何が何だか……」
「「離せ、この野郎！」」
僕は早速王城の軍の待機所にゲートを繋ぎ、王城からやってきた兵がギャーギャーと騒ぐ二人と連れを連行していきました。
もしかしたら、昨日僕達が屋敷に来る前にあの執事が二人に連絡を取ったのかもしれません。
これで、一つの問題は解決しました。
「本当に、何だったのだろうか？」
「うーん、僕も良く分かりません。兄の婚約者は、確か王都の貴族でしたので」
「うん、益々分からん」
ジンさんの呟きに、マテオ君も苦笑しています。
確かに、何で王都の貴族がクエスト男爵領の周辺にいたのでしょうか？
これは、取り調べが進まないと状況が分からないですね。
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