六百八十六話 執事の部屋から出てきたもの
そんな感じの話をしていたら、執事の部屋の捜索に立ち会っていたアイビー様がこちらにやってきました。
「アマリリス達が、何かを見つけたみたいですわ。こちらに来て下さるかしら」
「今直ぐに行くよ。一体何を見つけた事やら」
ルーカスお兄様が直ぐに返事をして、僕達は執事の部屋に向かいました。
ティナおばあさまや辺境伯様も、僕達と一緒についてきます。
ごそごそごそ。
「あっ、お金見つけた!」
「メモもあったよ!」
「キュー」
執事の部屋には、アマリリス達に混じって捜し物をしているミカエルとブリットの姿がありました。
どう考えても、ポッキーが長距離転移でミカエルとブリットを連れてきたのでしょう。
テーブルの上には沢山の金品が並んでいて、どう見てもただの執事が集めるにはおかしい量です。
そんな中、アイビー様が一枚のメモをルーカスお兄様に見せました。
「ルーカス様、こちらのメモを読んで下さい」
「なになに? 集めた金品は全てピエロ様に送る。領主を上手く操れれば、追加の資金を送る。って、このピエロってまさか!」
「「「えっ!」」」
僕達が見たメモには、ビックリする記載が書かれていました。
姿を消している闇組織の実質的トップになった、あのピエロの文字が書いてありました。
これには僕も含めて、その場にいた全員がビックリしました。
「となると、あの執事がピエロと接触している可能性があるわね。第三者経由かもしれないけど、これは大きな情報だわ」
ティナおばあさまは、早速通信用魔導具を使って王城に連絡しました。
何かしらの情報を、あの執事が持っている可能性は高そうです。
間違いなく、執事に対する取調べは厳しくなりそうですね。
「しかし、凄い数の金品だな。跡目争いのドサクサに紛れて、集めるだけ集めたのだろう」
「僕もそう思います。特に、お金が多いって事は、直ぐに使える資金が欲しかったのかもしれません」
「物品は換金の際に足がつく事があるからな」
ルーカスお兄様と話をするけど、闇組織としてもこれだけの資金が手に入ればだいぶ楽になるだろう。
資金流出を防いだだけでも、大きな効果はあったと思うよ。
「この規模の資金を集めるとなると、街の中にも協力者がいるな。直ぐに兵をまわさないと」
「そうだね。間接統治しているバイザー子爵領に影響を出したって事にすれば良いですね」
「ルシアは本当に頭が良いな。やる気があればだけど……」
辺境伯様は、息子の嫁であるルシアさんの頭の良さにビックリしていた。
ルシアさんがやる気になれば、本当に凄いんだけどなあ。
「それで、他に怪しい所はあるかな?」
「えーっと、執務室と兄の部屋は捜索の手が入っていますので、後は捕まった侍従の部屋かと……」
「うんうん、小さいのに色々と把握していてとても偉いわね。お姉さんが頭を撫でてあげるわ」
そして、エマさんとオリビアさんは、一生懸命に説明するマテオ君の頭を撫でていた。
まあ、二人の兄が犯罪者として捕まったばっかりだし、気持ちを落ち着かせる意味もありそうですね。
「うーんとね、もう何もないと思うよー!」
「空っぽー!」
「アマリリスも他の従魔もそんなリアクションですし、本当にないみたいですわね」
暫くすると、探し尽くしたのかミカエルとブリットは終わりだと言ってきた。
アマリリスとかも終わりだとリアクションしているので、これで終わりですね。
「じゃあ、従魔達は念の為に屋敷内を捜索してもらって、僕達は応接室に戻ろう」
「あの、甘い物を出します。皆さん疲れていると思いますので」
「「わーい」」
「ふふ、気配りが出来る良い子ですわね。良い領主になりますわ」
一段落したので、マテオ君がお茶を出してくれる事になりました。
そんな頑張るマテオ君の事を、今度はアイビー様が撫で撫でしていました。
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