六百七十話 もしかし飢餓輸出?

 皆で闇組織の構成員を縛り上げて、僕とスラちゃんのゲートで王都郊外の軍の駐屯地に送ります。


「ふう、片付きましたね。でも、まだまだ闇組織の構成員がいるかもしれないですね」

「というか、いるみたいよ。もう出てきたわ」

「「「うらー!」」」


 僕もティナおばあさまもげんなりしながら、また襲ってきた闇組織の構成員を迎え撃ちました。


「「せりゃ! おりゃ!」」


 うん、またもや内務卿と農務卿が大活躍しています。

 勿論、兵を押しのけてって事は無いけどね。

 供述ができるレベルで、襲ってきた闇組織の構成員を倒していきます。


「わ、わわわわ、私はただの侍従です。何でも、ないです、よ?」

「あっ、この人が悪い執事だよ。スラちゃんが見破ったよ」

「なっ!」


 更に各部屋に入って、悪人を確認しながら捕まえていきます。

 というか、誰が悪人か一目みて直ぐにわかりますね。

 何も問題を起こしていない人はかなり痩せていて、悪い人は太っています。

 もしかして、食事もろくにしていなかったのだろうか。

 何だか、とっても嫌な予感がしてきたよ。


「内務卿、農務卿、まさかとは思うのですけど、カスバク子爵領では飢餓輸出が行われていたのではないですか?」

「可能性は高いだろう。貴族主義の領地では、既に前例があるからな」

「カスバク男爵領でも飢餓輸出が起きている可能性がある。早めに向かわないとならないな」


 向かってくる構成員を倒しながら、僕達は懸念材料の話をしました。

 直ぐにティナおばあさまが、王城に連絡して炊き出しや治療の手配をしてくれました。


「よし、こんなもんだろう。兵を増やして証拠を抑えるのと、治療と炊き出しをしないとな」

「じゃあ、王城にゲートを繋ぎますね」


 僕が王城にゲートを繋ぐと、調査官と炊き出し担当の侍従と共に、宰相と外務卿がやってきました。


「飢餓輸出までしているとなると、話がとても大きくなるな。状況を確認して、王都との交易量を増やさなければならない」

「こちらは私達が受け持つので、早めに男爵領に行って貰うと助かる。何せ、何かあっても王都から馬車で一日あれば着くからな」


 宰相と外務卿がありがたい事を行ってくれたので、僕達はスラちゃんのゲートでカスバク男爵領に向かいました。


「うりゃー!」

「おりゃー!」


 そして、残念ながらカスバク男爵家の屋敷でも肉体言語でのお話が始まってしまいました。

 しかも屋敷に入った瞬間に、闇組織の構成員が僕達を襲ってきました。

 うん、弱い、弱すぎる。

 完全に見掛け倒しのチンピラレベルの闇組織構成員なので、ここでもあっという間に制圧完了です。


「ここも侍従が痩せ細っていますね」

「あのね、ご飯ちゃんと食べていないから、お腹ペコペコなんだって」

「屋敷の者にろくに食事を与えずに、自分達は贅沢ばかりをしている。統治者として最低ね」


 大体の闇組織の構成員を捕まえた所で、カスバク男爵家にも応援を呼びました。

 うん、ティナおばあさまが余りの統治の酷さにガチギレしているよ。

 僕も流石に怒っています。


「はあ、ここまで酷いとは何という事か。バザール領よりも深刻な状況ではないか」


 今度は調査官と兵と王城の侍従と共に、商務卿がやってきました。

 商務卿も、余りの状況の酷さに顔をしかめていました。


「これじゃあ、どうにかしてと陳情が来るのは当たり前ですね」

「物流が止まって、物や人にお金の流れも止まったのだろう。急いで改善しないとならないな。このままでは、大量の餓死者が出るぞ」


 商務卿は商売に詳しいだけあって、直ぐに色々と指示を出していました。

 炊き出しだけじゃ、その場しのぎの対応になっちゃうもんね。


「うん? ケーヒル伯爵からの連絡だわ。まあ、大変! 闇組織がゴブリンやオークなどを召喚して、かなり抵抗しているそうよ」

「物量で押し切るつもりですね。早く助けに行かないと」


 森の方では、結構大変な事になっていました。

 そもそも屋敷だとスペースが限られるので、魔物を召喚しても余り意味がありません。

 でも、広いスペースのある森だと、幾らでも魔物を召喚できますね。


「お兄ちゃん、早く助けに行かないと」

「アレク君、こちらは任せて貰って大丈夫だ。早く行くのだよ」


 商務卿もここは大丈夫だと、僕達に言ってくれました。

 僕達は急いで、スラちゃんのゲートで森に向かいました。

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