六百七十一話 悪い人を成敗!

 ズドドドーン!


「あっ、あっちで魔法の音が聞こえたよ!」

「随分と派手にやっているな」


 僕達が森について直ぐに、大きな爆発音が聞こえてきました。

 良く聞くと、ゴブリンやオークの叫び声も聞こえますね。


「この騒ぎに乗じて逃げる者がいるかもしれない。周囲の警戒も厳重に行うように」

「「「はっ」」」


 直ぐに内務卿が兵に指示を出して、周囲の警戒を厳重にしました。

 そして僕達は、爆発音のした方に走って行きました。


「はっ、せい!」

「やあ!」


 爆発音のした所には小さな小屋があり、その周囲をゴブリンやオークが陣取っていました。

 更に小屋の周りには何人かの武装した人がおり、ゴブリンとオークに指示を出していました。

 あの武装した人物を鑑定すると、職業欄に闇組織の構成員とばっちり出てきました。

 百体を超えるゴブリンとオークに、流石の近衛騎士と兵も苦戦しているみたいです。


「ケーヒル伯爵様、遅れて申し訳ありません」

「いやいや、助かったぞ。まさか、魔物を呼び出す魔導具を同時に使うとは思わなかった」


 指揮を執っているケーヒル伯爵の元に行くけど、やっぱり構成員が弱くても魔導具を使われるととっても面倒だね。


「アレク君とスラちゃんは、周囲に潜んでいる構成員がいないか探索魔法を使いながら戦ってね」

「はい!」


 ティナおばあさまの指示を受けて、僕とスラちゃんは探索魔法を使って周囲を警戒します。


 きらー。


「大丈夫ですか?」

「助かりました。ありがとうございます」


 同時に、僕とスラちゃんで怪我をした人を治療していきます。

 幸いにして重傷者はおらず、僕とスラちゃんだけで大丈夫でした。


「てやー!」

「「「キシャー!」」」


 というのも、一番回復魔法が強力なリズがドレス姿のまま愛刀のファルシオンを片手に大立ち回りをしているからです。

 スラちゃんも治療が終わると、これまた愛刀のロングソードを触手で持ってオークの群れに突っ込んでいきました。


 バキッ、ベキ!


「ブフォー!」

「ようやく、ちょっとは手応えのあるものが出てきたな」

「とはいえ、数が多いだけで大した事は無いぞ」


 内務卿と農務卿は、相変わらず剣を使う事なくオークを殴り飛ばしていました。

 一体その豪華な剣は、何のために腰に下げているのだろうか……

 ティナおばあさまは、普通にレイピアを使っていたけどね。


「くそ、一気にやられ始めたぞ」

「ここは一旦撤収……」

「逃がしません!」


 バリバリバリ!


「「「ぎゃあああ!」」」


 そして逃げ出そうとした構成員は、僕とプリンの電撃で動けなくします。

 治療も終わって、僕は周りを警戒することに集中出来ています。

 リズとスラちゃんに加えてツワモノ達の活躍もあり、僅か数分であっという間にゴブリンとオークは倒されました。


「くそっ、こうなったら!」

「仕方ない、奥の手を使うぞ」


 追い詰められた闇組織の構成員が、まだオークとゴブリンが残っているうちに小屋の中に入って行きました。


「おい、さっさと来い! 殺されたいのか!」

「へへ、ガキが殺されたくなければ、俺達を逃がすんだな」

「うぅ、助けて……」


 何と小屋から一人の小さな少年を連れてきて、首元にナイフを突きつけていました。

 もしかして、あの小屋の中には他にも子どもがいるのでは?


「なんと卑劣な事を!」

「へへ、悪人は悪人らしくするのさ」

「助けてー!」


 ティナおばあさまが闇組織の構成員を非難するけど、相手も焦って何をするか分からないぞ。

 子どもは殺させるかもしれない恐怖で、泣き喚いていました。

 という事で、素早く対処する事にしました。


 シュッ。


「えっ?」

「はっ? 何が起きた?」

「おい、ガキがいねーぞ!」


 ぶすり。


「「あーーー!」」


 人質に取られた子どもは、スラちゃんの短距離転移であっという間にこちらにきました。

 人質に取られた子どもは、何が何だか分かっていないみたいですね。

 そして、スラちゃんの怒りの一撃が、闇組織の構成員のお尻に炸裂しました。


 シュッ、シュッ、シュッ。


「はっ?」

「えっ?」

「「「ガルルル?」」」

「「「あーーー!」」」


 そしてスラちゃんは、小屋の中から捕らえられていた子どもと、檻に入っている動物の子どもを連れてきました。

 小屋の中から大きな叫び声が聞こえたけど、恐らくスラちゃんの正義の鉄槌が小屋の中にいた闇組織の構成員のお尻に炸裂したんだね。


 ガンガン、ガンガン。


「いてて、はっ!」

「ううっ、あれ?」

「尻が相当な痛みらしいが、その痛みはまだ序の口だぞ」

「もう十分に神に祈っただろう、祈る神がいればだがな」


 そして、お尻を押さえてうずくまる二人の構成員の前に、ガチギレモードの内務卿と農務卿が立っていました。

 その間に、ティナおばあさまとジェリルさんとランカーさんも、ささっと小屋の中に入っていきます。


 ガンガン、ガンガン!


「「あわ、あわわわわ……」」

「それでは、これからお仕置きの時間だ。覚悟しろ!」

「なに、お前らからも事情を聞かないとならないからな。五体満足ではないかもしれないが、お前らを生かしておかなければならない。ふふ、そこは安心しろ」


 ガントレットを打ち鳴らしながら、内務卿と農務卿がニコリとしました。

 もう、誰も二人を止められないね。

 というか、僕達も誰も止めてないね。


「「成敗!」」

「「「あーーー!」」」


 そして、僕の目の前の二人だけでなく小屋の中からも大きな叫び声が聞こえてきました。

 うん、周囲を探索しても構成員はもう誰も引っかからないね。

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