六百六十六話 二領地への同行者
午前中の執務が終わって、僕は王家専用の食堂に向かいました。
はあ、何だかまだ午前中なのに疲れちゃったよ……
カチャ。
「戻りま……」
「「「へあー」」」
食堂には、魂の抜けたリズ達の姿がありました。
どうやら、ティナおばあさまとアイビー様の礼儀作法訓練がかなり厳しかったみたいですね。
そんなリズ達の姿に苦笑しながら、僕も席に座りました。
すると、ミカエルとブリットがトコトコと僕の所にやってきました。
「ミカエル、どうしたの?」
「にーに、あのね、あのね……」
何だか下を向いてもじもじしていたミカエルが、意を決して僕に話しかけました。
「ばーばがね、今度からちゃんとした所ではアレクお兄様って呼んでって」
「そうなんだね、ミカエルも頑張っているね」
「うん!」
おお、あのいつまでも天真爛漫だったミカエルが、僕の顔を見上げながらお兄様って言ってきたよ。
僕は思わず嬉しくなっちゃって、思わずミカエルの頭を撫で撫でしてあげちゃった。
「でも、お家や皆の前ではお兄ちゃんでも良いって言っていたの。だから、僕お兄ちゃんって言っても良いかな?」
「私も、お兄ちゃんって呼んで良い?」
「良いよ。二人の言いやすい呼び方で良いよ」
「「うん!」」
更に、ミカエルもブリットも僕や私って言える様になったよ。
ティナおばあさまと一緒に、頑張って練習したんだね。
僕は嬉しくなっちゃって、笑顔を見せる二人の頭を撫で撫でしてあげました。
「五歳の祝いもあるし、そろそろ言葉遣いを直さないとって事なのよ。ミカエルもブリットも一生懸命頑張っているわ」
ティナおばあさまも、ミカエルとブリットの練習の成果が出ているのでニコリとしていました。
五歳の祝いでは既に聖女候補生だった婚約者がいるミカエルは注目の的になるし、キチンとした挨拶ができればミカエルの評価も上がるね。
「さあ、昼食を食べて午後も頑張りますわ」
「「「ふわーい」」」
クリームパスタが運ばれてきて、ようやく覚醒したリズ達がもぞもぞと食べ始めました。
でも、アイビー様の口ぶりだと午後も大変な礼儀作法の訓練になりそうですね。
「そうそうアレク君、二領に行く際は私も同行するわ」
「リズも一緒だよ!」
クリームパスタを食べながら、ティナおばあさまとリズが話しかけてきました。
うん、この分だと他の人達もついてきそうだね。
「実はね、あのカスバク子爵家は前に私の快気祝いに木彫りのゴブリンを送ってきたのよ。カスバク男爵家は、木彫りのオークね。ふふふ、贈り物の真意を確認したいわ」
うわあ、ティナおばあさまがちょっとダークモードになっちゃった。
でも、確かにあの時は変な物を贈ってくる貴族が沢山いたよね。
木彫りのゴブリンやオークって、快気祝いとして意味ないよね。
「私は、弟くんが不在の代わりにお仕事よ。はあ、書類じゃなくて悪人をブチのめしたいわ」
そして、ルーシーお姉様もクリームパスタを食べながら、別の意味でちょっとダークモードです。
ここの所お仕事ばっかりで、だいぶお疲れですね。
「後はスラちゃんにポッキーが、どういう情報を持ってくるかだね。凄い情報を持ってきそうだけど」
「お兄ちゃん、一回来ていたよ。お土産持ってきて」
「既に軍が情報の分析を始めているわよ」
うん、流石スラちゃんとポッキーです。
お土産を持ってくる配慮までしているとは。
暫くは、情報を集めて分析待ちですね。
「ルカとエドも、いっぱい食べるのよ」
「「うん!」」
お土産があるからこそ、ジンさんがいなくてもルカちゃんとエドちゃんはニコニコなんですね。
口の周りをベタベタにしながら、美味しそうにクリームパスタを食べています。
アイビー様が、嬉々としながらルカちゃんとエドちゃんのお世話をしていました。
でも、ジンさんがお土産を買い忘れると、ルカちゃんとエドちゃんは大泣きしそうですね。
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