六百六十五話 現地に行く口実ができちゃった
「じゃあ、行ってくるよ」
「ジー、おみやげ!」
「おいしーの!」
スラちゃんと共に偵察に向かうジンさんに、ルカちゃんとエドちゃんがお土産をねだっていました。
買い物をするのは全く問題ないので、きっとジンさんならお土産を買ってくるだろうね。
「折角だから、皆の分も買ってくるわ」
「何が販売されているかによって、物流がどうだか調べられるわ」
「お前ら、程々にしろよ……」
レイナさんとカミラさんは、がっつり買い物をする予定です。
きっとジンさんの注意は、聞かなかった事になるはずですね。
こうして、カスバク子爵領とカスバク男爵領へ調査隊が向かいました。
「おお、そういえば、ルシアの従魔が長距離転移ができる様になったと聞いたぞ」
「えっ、本当ですか?」
「間違いないよ。この前得意気にバザール子爵領に行って、特製ソースを買ってきたよ」
そして、辺境伯様とジェイド様からもたらされたまさかの情報です。
でも、ポッキーは既に空間魔法が使えるし、全く不思議じゃないんだよね。
という事で、ルシアさんとポッキーも王城に来てもらいました。
「ふふふ、うちのポッキーちゃんはスーパーマジカルラットだからね。転移もお手の物だし、調査活動なんてちょちょいのちょいだよ」
「キュー」
ルシアさんとポッキーはドヤ顔でいるけど、目の前で転移魔法を披露して貰ったら確かに出来ていました。
因みにさっきジェイド様が言ったのは、ポッキー一匹でバザール子爵領に行ってアイテムボックスからお金を出して普通にソースを買ったそうです。
しかもルシアさん曰く、ポッキーは既に常連客でお店の人も気にしないそうです。
まあ、これはポッキーが頭が良いからだと思いたいです。
「じゃあ、今回はアマリリスに行ってもらいましょう。ルカとエドのマジカルラットは、夜にしましょうね」
「キュキュ!」
念の為の二人の護衛って事で、今回はプリンとアマリリスとポッキーでバイザー子爵領に向かう事になりました。
あえて連絡はせずに、抜き打ちで現地に向かいます。
「「「頑張ってね!」」」
「キュー!」
シュッ。
三匹は見送るリズ達に手を振って、バイザー子爵領の屋敷に向かいました。
これで僕達は、暫く調査待ちですね。
辺境伯様とジェイド様は王城で各部局に寄るそうで、ルシアさんもついて行きました。
「じゃあ、早めに終わったからリズちゃん達はティナ様の所に行って礼儀作法のお勉強ね」
「ルーシーもね。アイビー、良く教えてやってね」
「分かりましたわ」
「「「えーーー!」」」
そして予想以上に色々な事が早く片付いちゃったので、女性陣は王妃様とアリア様の指示で全員ティナおばあさまの所に合流する事になりました。
こればっかりは僕にはどうしようもないので、リズ達には頑張って貰わないとね。
当のリズ達は、とぼとぼと元気を無くして歩いているけどね。
「すみません、戻りました」
「アレク殿下、お帰りなさいませ」
昼食までまだ時間があるので、僕は再び宰相の執務室に戻りました。
因みに宰相は、部局再編の会議でまた不在です。
とっても忙しいですね。
ぺらぺらぺら。
僕は、会議中に溜まった書類を仕分けします。
「えーっと、これは出し直しでこれも出し直し。うん? これも出し直しだ」
何故か同じ部署で、三連続で添付書類不足があります。
職員に確認して貰っても、やっぱり必要書類がありません。
「うーん、ちゃんとチェックしたのかな? うん? これって、例のカスバク子爵家からの補助金申請だね。何々? 農地拡張に関する申請?」
うん、とっても怪しい申請書だね。
僕は三つの書類を持って、農務部署に向かいました。
「また、この申請を出したんですね。しかも、農務を通さずに直接宰相の所に送ったとは……」
担当者に書類を見せると、またかって呆れた表情をしていました。
農務部署に書類を送ると絶対に不許可になるから、敢えて宰相の所に送ったんだね。
「おや、アレク君じゃないか。どうしたんだい?」
「あっ、農務卿。会議お疲れ様です。例のガスバク子爵家から、農地拡張に関する申請書が直接宰相の所に届いたんです」
「ちょっと見せてくれ」
会議から戻った農務卿に、補助金申請の書類を見せました。
すると、農務卿はニヤリとしました。
「カスバク子爵家と男爵家にまたがる森を農地にするという、まあアホくさくて計画書も提出されていない申請書だが、これを元にして現地に向かう口実が出来るな」
「あっ、そういう事ですね。不許可にしても、計画書を確認に行くという名目が出来ます」
「そういう事だ。早速、陛下と宰相に連絡しよう」
農務卿は、通信用魔導具を取り出して陛下と宰相に連絡をしていました。
すると、直ぐに返事が返って来ました。
「ふむ、ジン達の調査を待って三日後に現地に行く事になった。これから、宰相が当家に連絡をするそうだ」
上の人って、仕事がとっても早いですね。
あっという間に、段取りを整えました。
「あと、書類を確認したのはアレク君だから、宰相補佐官として現地に行ってくれと陛下から連絡があったぞ」
「えー!」
そして、まさかの陛下からのご指名に、僕は物凄くビックリしちゃいました。
でも、書類の確認をしたのは僕で間違いないんだよね。
農務部署の担当者が、僕の事を気の毒そうに見ていました。
でも、一緒に行くとは言ってくれませんでした。
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