六百六十四話 手分けして調査する事に
シュッ。
「スラちゃん、お帰り!」
僕達が難しい表情をしているタイミングで、二領に行っていたスラちゃんが転移魔法で戻ってきました。
スラちゃんも、僕が手にしていた報告書を見て思わずビックリしていました。
久しぶりに、スラちゃんのマジかって表情を見ました。
「宰相、辺境伯様を呼んできた方が良いですよね?」
「勿論だ、事は急がないとならない」
宰相の話もあったので、僕は辺境伯様の所に行って事情を説明すると直ぐに指示を出しつつ王城に同行してくれました。
更に問題が大きいという事で、ジェイド様も一緒に付いてきました。
さて、こうなっているとは知らないだろうジンさんを子ども部屋に迎えに行きました。
「あーあー」
「エリンよ、鼻の穴に指を突っ込むな!」
「むー、ジーじゅるい!」
「ぼくも、エリちゃんとあそぶ!」
ジンさんがあぐらをかきながら、エリちゃんを抱っこしていました。
エリちゃんは、ジンさんの鼻や口に指を突っ込んで遊んでいます。
ジンさんにエリちゃんと取られちゃっているので、ルカちゃんとエドちゃんはちょっと不満気味です。
もう既におなじみの光景になりましたね。
「ジンさん、会議に行きますよ」
「分かったから、こいつをはがしてくれ……」
「あー」
ジンさん、流石に赤ちゃんとは言え一国の王女様をこいつ呼ばわりは駄目でしょうが。
そんなジンさんの所に、やれやれって感じのアリア様が向かいました。
「しょうがないわね。ほら。こっちにおいで。ルカとエドも手伝ってね」
「「はーい」」
「あー!」
うん、ジンさんから無理やり離されたので、エリちゃんは少しイヤイヤしていますね。
お兄ちゃんが頑張ってあやそうとしているので、ここは頑張って貰いましょう。
「はあ、俺も書類整理の方が良かったぞ。ルカとエドを構ったらエリンが泣くし、エリンを構ったらルカとエドが焼きもちを焼くし。王妃様とアリア様は、休みたいと言って見てるだけだし……」
何だか既に疲れ切っているジンさんと一緒に、皆で会議室に向かいました。
個人的には、王子様と王女様にとんでもなく好かれているジンさんが凄いと思うけどね。
「陛下、申し訳ございません。まさか、毎年全く同じ内容の物とは気づきませんでした」
「問題ないと報告を受けているのなら、そこまで深く確認する事はないだろう。国からも執務官を送っているのだから、余にも責任がある」
おかしい報告書を見抜けなかったと辺境伯様が謝っていたけど、前年の報告書なんていちいち覚えていないよね。
「既に、背後関係を調べさせております。また、辺境伯兵もバイザー子爵領に派遣しました」
「国からも軍を動かそう。軍務卿、ケーヒル伯爵、早急にホーエンハイム辺境伯領に駐在している軍を派遣する様に」
「「はっ」」
バイザー子爵領に関しては、一旦調査待ちですね。
僕達が下手に介入するとおかしな事になるけど、何かあれば直ぐに僕達も動ける様にします。
「そして、王都近郊の二領地も怪しいか。ジン、午後から早速調査活動に入る様に」
「分かりました。ただ、小さな王子様と王女様がぐずらない様にして下さい」
「ジンがそれを不安視するのは分かるが、何故息子と娘は余ではなくジンに懐いているのだろうか……」
あっ、今度は陛下が少し落ち込んじゃったよ。
陛下は、何故かエリちゃんに嫌われちゃってるんだよね……
間違いなく、エリちゃんがすやすやと寝ている所を起こしたのが原因だと思います。
ここで、元気よく手ではなく触手をあげたスライムが一匹いました。
「陛下、スラちゃんが今夜各屋敷に忍び込んで調査すると言っています。できれば、プリンとアマリリスとマジカルラットも一緒に活動したいらしいです」
「ふむ、それは許可しよう。情報が多い分には何も問題ない」
という事で、小さな隠密活動を行なう部隊が結成されました。
個人的には、この戦力なら何かあっても逆に抑え込める気がするよ。
「では、ジン達はこの後直ぐに出発する様に。バイザー子爵領に関しても同様だ」
捜査方針も決まったので、会議は終了です。
僕達は、会議室から子ども部屋に向かいました。
「おー、そうなんだ!」
「がんばって!」
「キュー!」
ルカちゃんとエドちゃんのマジカルラットも、作戦に参加する事になりました。
因みにルーカスお兄様のマジカルラットと、アイビー様のアマリリスも既にやる気満々でスタンバイしています。
僕の屋敷にいるマジカルラットの親は、ちっちゃな赤ちゃんが生まれて子育て中なので不参加です。
「ほら、エリンよ。パパですよー」
「あーん!」
そして、陛下がエリちゃんを抱っこした瞬間に大泣きをし始めました。
うーん、流石は陛下です。
そして、何で泣くと分かってエリちゃんを抱っこするのでしょうか。
王妃様とアリア様が、陛下の後ろで怒気を放ちながらスタンバイしていました。
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