六百三十六話 リズとエレノアがやっていたこと

 次の日は、朝イチで書類の整理をしてから昨日に引き続いて学園に向かいました。

 リズ達も引き続きティナおばあさまと一緒に王城で何かをしているらしく、今日はプリンもリズと一緒に行動しています。

 ジンさん達もスラちゃんと一緒に捜査の続きを行なっていて、サンディに加えてミカエル達も礼儀作法の勉強を始めています。


「ルーシーお姉様、この分だと安息日以外は仕事になりそうですよ……」

「私も同じ事を考えていたわ。絶対に一時の仕事で済まないわ」

「「はあ……」」


 学園の応接室で僕とルーシーお姉様は同時に溜息をついたけど、入園式が終わったら別の仕事を任されそうです。


 カチャ。


「二人とも、だいぶお疲れモードだな」

「お兄様に、私の仕事を代わって貰いたいですわ」

「はは、代わってやれる物なら代わってやりたいさ。私も春休みになったら、色々とこき使われる予定だ」


 応接室に入ってきたルーカスお兄様が、ガックリとしている僕とルーシーお姉様を見て苦笑していました。

 卒園式が終われば学園も休みなので、皆忙しくなりそうですね。

 では、さっさと入園式の話をしちゃいましょう。


「と言っても、私が入園した時と同じ対応になる。流石に兵の数は減らすがな」

「兵の数を減らすので、代わりに少数精鋭にするんですか?」

「アレクは理解が早くて助かる。入園式にはアレクも来る予定だし、近衛兵かいれば間違いないだろう」


 入園式はジンさん達は呼ばない代わりに、僕は卒園式から連チャンで来賓として参加するのですか……

 ガクリとしている僕の横で、来賓にならずに済んだルーシーお姉様が思わずホッとしています。


「まあ、今年の新入生に問題のありそうな人はいない。先ず安心して良いだろう」


 そんな僕とルーシーお姉様の事を安心させるように、ルーカスお兄様が優しく話し掛けてきました。

 是非とも、何も起こらずに終わって欲しいです。

 今日の話し合いはこれくらいにして、僕達は仕事の続きをする為に王城に戻りました。


 ペラペラ、ペラペラ。


「はあ、今日も宰相は会議で不在ですか……」

「他の閣僚も会議らしいですよ。ここは割り切って、仕事をしましょう」


 ルーシーお姉様に励まされながら、僕は書類整理を続けます。

 朝イチで仕分けた書類には宰相のサインがしてあったので、どうも僕とルーシーお姉様が学園に言っている間に宰相が執務室に来ていたみたいです。

 僕はサイン済みの書類を持って、各部署に向かいました。

 各部署に行って、最後に農務部局に行った時でした。


「あったよ!」

「こっちにもありましたの」

「じゃあ、今度はこの戸棚を探しましょうね」

「「はーい」」


 何故か、農務部局の戸棚をごそごそと漁っているリズとエレノアとプリンの姿がありました。

 ティナおばあさまの指示に従っているので、イタズラで捜し物をしている訳じゃなさそうです。

 大抵の職員は気にしていないけど一部の職員は顔が青くなっていて、挙動不審になっています。

 そんな挙動不審な職員の側には、近衛騎士のジェリルさんとランカーさんが目を光らせながら監視をしていました。

 僕は取り敢えずいつもの書類担当の人にサイン済みの書類を渡して、ティナおばあさまの所に向かいました。


「ティナおばあさま、農務部局で何をしているのですか?」

「あら、アレク君じゃない。ふふふ、いわゆるお宝探しよ。アレク君は気にしなくて良いわ。キチンと陛下の指示書の下で動いているわよ」


 えっと、リズとエレノアのお宝探しって、不正を行なった屋敷とかで証拠品を見つける事を意味しているのではないですか。

 そして、顔が青くなっている職員は、リズ達に不正の証拠を握られていたんだね。

 うん、これは下手に色々と口を出さないでおこう。


「じゃあ、僕は宰相の執務室に戻りますので」

「ええ、アレク君も頑張ってね」


 各部署で不正の確認をしているけど、抜き打ちでティナおばあさま達が動いているんだ。

 この分だと、暫くはリズ達の調査隊は活動を続けそうですね。

 そう思いながら、僕は執務室に戻りました。


「「「「「はあ、疲れた……」」」」」


 そして夕方になると、グッタリとしたジンさん達が子ども部屋に戻ってきました。

 今日も、いっぱい動いたみたいですね。


「ジン、ご苦労様。明日は、この屋敷ね」

「ティナ様、俺達は何時まで捜査機関の真似をしているんですか?」

「当分よ。何せ、やらないといけない事は沢山あるわ」


 ティナおばあさまとジンさんのやり取りを見る限り、リズ達が見つけた不正の確認をジンさん達が兵と共におこなっているんだ。

 だったら、当分はジンさん達もとても忙しそうですね。


「じー、おみやげ!」

「おみやげ、ないの?」

「今日は何もないぞ、全く買う暇がなかったからな」

「「えー!」」


 ルカちゃんとエドちゃんがお土産がないのに怒っていたけど、こればっかりは仕方ないよね。

 暫くは、お土産を買う暇がないくらい忙しくなりそうですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る