六百三十五話 卒園式の責任者になっちゃった

 昼食を食べてから、僕とルーシーお姉様は警護の近衛騎士と一緒に学園に向かいました。

 馬車を使う案もあったのですが、安全の為に僕のゲートで移動します。


「アレク君も大変だね」

「卒園式の責任者になっちゃってね」

「えっ?」


 学園の応接室に関係者が集まっていて、前生徒会長のエマさんと前副生徒会長のオリビアさんもいました。

 そして、全く聞いていない事を僕に伝えてきました。


「あの、僕全く聞いていないのですが……」

「えっ、そうなの? 宰相が色々と忙しいって聞いて、アレク君に責任者が変わったって聞いたよ」

「アレク君なら全然問題ないし、私達も納得していたのよ」


 エマさんとオリビアさんは何も問題ないって言っているけど、僕としては宰相から事前に教えて欲しかったよ。

 因みにルーカスお兄様とアイビーお姉様も生徒会のメンバーなのですが、僕が責任者だと知らない事にビックリしていました。

 くそー、宰相だけでなく陛下にもやられちゃったぞ。

 文句は後にして、先ずは話を進めないと。


「卒園式に来れる人は、卒園式の関係者だけですね。今年は卒園生は入校できないんですね」

「関係者以外は、極力校内に入れない様にいたします」

「警備も軍を入れるなど、入園式と同じ程度の警備を予定しております」


 話し合い自体は僕も入園式に出ていたのもあってか、スムーズに進みます。

 学園の警備担当者も入園式の時と特に変わっておらず、あっという間に話は終わりました。


「後は来賓となりますが、アレク殿下とリズ殿下のお二人を輿丁しております。ですので、来賓代表挨拶もアレク殿下に行なって頂きます」


 僕が卒園式の責任者にされた事で、挨拶するって流れも大体読めたよ。

 しかも、僕とリズの二人だけっていう公務って、これが初めてじゃないかな?

 エマさんとオリビアさんの保護者として辺境伯夫妻が来るし、生徒会にはルーカスお兄様とアイビー様もいて知っている人が会場にいるからちょっと安心です。


「できればという事で、クロスロード子爵様にも護衛を頼んでおります」

「絶対に頼んだ方が良いですね。ジンさん達なら、何かあっても直ぐに対処できます」

「アレク、済まないね。何かあったら、私達も動くから」


 ジンさん達は入園式でも体育館内で警備をしていたし、絶対にいてくれた方が良いよね。

 ルーカスお兄様も、ジンさん達がいた方が心強いって思っていました。

 という事で、卒園式関連の話し合いは終了なので僕達は学園から王城に帰ります。


「「「はう……」」」

「ジンさん、疲れてますね」

「ここの所、毎日捜査に付き合っているからな……」


 王城に戻ると、だいぶお疲れのジンさん達が子ども部屋のテーブルに突っ伏していました。

 ジンさん達も、もう少ししたら軍の捜索から解放される様です。


「あっ、ジンさん。疲れている所悪いんですけど、来週の卒園式にまた警備担当者として入って欲しいそうです」

「あー、警備な、良いぞ。捜索ばっかりで疲れていたんだ。警備の方がずっと楽だな」


 ジンさんは、テーブルに突っ伏したまま手をひらひらとさせていました。

 気分転換も、一緒にしたいみたいですね。


「じー、おみやげー!」

「かってきた?」

「あー、お土産な。ドライフルーツが売ってたから、買ってきたぞ」

「「やったー!」」


 ジンさんは疲れているのに、ちゃんとルカちゃんとエドちゃんのお土産を買ってきていたんですね。


「「ただいまー」」


 ルカちゃんとエドちゃんが喜んでくるくるとしている所に、ティナおばあさまとリズとエレノアが帰ってきました。

 リズとエレノアは、何だかやり切ったという表情ですよ。


「ティナおばあさま、今日は何をしていたんですか?」

「ふふふ、それはまだ秘密よ」

「「秘密だよ!」」


 ティナおばあさまだけでなく、リズとエレノアもナイショという表情をしていました。

 ティナおばあさまの言い方からすると、そのうち教えてくれそうです。


「あと、アレク君にルーシーは明日も学園関係の打ち合わせね。明日は入園式の打ち合わせだわ」

「「えっ!」」


 そして、ティナおばあさまからの無情な一言に、僕とルーシーお姉様は固まってしまいました。

 うん、これは入園式が終わるまでは目茶苦茶忙しそうだよ。

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