六百十八話 あっという間の事件解決と新たな命の誕生

 馬車に分乗して皆で防壁の門に向かうと、ざわざわと人だかりが起きていました。


「「ヒヒーン」」

「ガルルル」


 何とあのクマと商人の馬車を引いていた馬が、普通にお互いに会話をしていました。

 そりゃ、周りの人も何だと思うだろうね。

 取り敢えず門の近くの守備隊待機スペースに馬車を停めて、皆で騒ぎの現場を見に行きます。


「「「クマちゃ!」」」

「ガル!」


 ミカエル達がクマに挨拶をすると、クマも挨拶なのか腕を上げました。

 直ぐに、ミカエル達はニコニコしながらクマの所に走って行きました。


「取り敢えず、怪我をした人を治療しましょう」

「そうだな、やってくれ」


 僕は怪我をした商人と護衛の治療をして、何でこうなったのか僕と辺境伯様とケーヒル伯爵で商人から話を聞く事にしました。


「ちょうど街道の真ん中辺りで、いきなり盗賊に襲われました。すると、どこからともなくあのクマが現れて、盗賊を倒したんですよ」


 商人は、ちびっこ軍団と遊んでいるクマを指さしていました。

 因みに、クマと初めてあった双子ちゃんとレイカちゃん達も、楽しそうにしています。

 クマとちびっこ軍団の側にいる、ジェイド様とジンさんの何とも言えない表情が印象的でした。


「クマは、あなた達を襲わなかったのですか?」

「いいや、全く。寧ろ、怪我をした私達を気遣う紳士ぶりでした」

「「……」」


 質問をした辺境伯様とケーヒル伯爵様は思わず絶句しているけど、商人は嘘をついていなさそうです。

 でなければ、商人は盗賊もろとも食い殺されてここにいないはずです。


「そ、そうか、分かった」

「と、取り敢えず、巡回強化で良さそうですな」

「そうですな」


 未だに動揺を隠せない辺境伯様とケーヒル伯爵様だけど、やる事が無くなっちゃったからこれで終わりです。

 因みに、盗賊は既に牢屋に入っていて、「クマが……」って言って怯えているそうです。


「もうやる事はないな、帰るとしよう」

「そうだな、帰りましょう」


 辺境伯様とケーヒル伯爵様は、お互いに顔を見合わせて頷いていました。

 ポニーが魔法を使ったりとかしてるんですから、常識にとらわれちゃいけないですね。


「ほら、そろそろ帰るよ」

「クマに挨拶してきな」

「「「クマちゃ、ばいばーい!」」」

「ガウ!」


 ジェイド様とジンさんに促されて、ちびっこ軍団とクマはお互いに手を振って別れました。

 クマも、普通に走って森に帰っていきました。

 クマといっぱい遊んだからか、ちびっこ軍団はとっても良い笑顔でした。


「ほらほら、馬車に乗る前に生活魔法で綺麗にするよ」


 クマの匂いがついちゃうから、僕は皆に生活魔法をかけました。

 ちびっこ軍団も生活魔法で綺麗になったら、リズ達に手を引かれて馬車に乗ります。

 そして、辺境伯様の屋敷に戻りました。


「「「クマちゃと遊んだ!」」」

「あら、良かったわね。まだ赤ちゃんは生まれていないから、もう少し遊んでおいで」

「「「はーい」」」


 屋敷に戻ると、ちびっこ軍団がイザベラ様に元気よく報告をしていました。

 イザベラ様はあっさりとちびっこ軍団の話を受け流して、庭に遊びに行かせました。

 恐らく、今度は庭で追いかけっ子だろうね。


「「へぁぁ……」」

「あら、随分と静かになったわね」

「子ども達は、とっても元気よ」


 辺境伯様とケーヒル伯爵様は精神的に疲れちゃって、とっても静かになっていました。

 でも、オロオロしないだけ良いのかもね。


「ソフィアの赤ちゃんが生まれたわよ」

「「「わーい!」」」


 そして、ちびっこ軍団がお昼寝から起きたタイミングで、ソフィアさんの赤ちゃんが生まれました。

 お昼寝効果で元気が回復したちびっこ軍団は、早速皆と一緒に出産の為の部屋に向かいます。


「あうあう」

「「「わあ、可愛いね」」」


 元気な男の子で、髪の色はジェイド様に似た濃い茶色です。

 皆笑顔で、ベビーベッドで寝ている赤ちゃんを見守っています。


「ソフィア、良くやったな」

「孫は何人いても可愛いな」


 辺境伯様とケーヒル伯爵様も、新たな孫にメロメロになっています。

 双子ちゃんの時の様に、二人とも号泣しないだけ良いのかもしれないですね。


「目がクリクリしていて、愛らしいわね」

「将来美男になるわね」


 イザベラ様とケーヒル伯爵夫人も、赤ちゃんに目を細めていました。

 やっぱり赤ちゃんの誕生は嬉しいよね。


「ジェイド様、赤ちゃんの名前は考えているんですか?」

「幾つか候補があるから、ソフィアと一緒にゆっくりと決めるよ」

「「おとーと!」」


 ジェイド様も、双子ちゃんを抱っこしながらニコニコしていました。


「また、賑やかになるね」

「もう、十分に賑やかだけどね」


 エマさんとオリビアさんも、賑やかな家族を見てニコニコしていました。

 こうして、辺境伯家に新たな家族が増えました。

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