六百十七話 ソフィアさんが産気づくのとちょっとした事件

 学園の卒園式が近づく中、ソフィアさんが産気づきました。

 最近出産が続いたけど、今日もリズ達にちびっこ軍団はドキドキです。


「おとーとかな?」

「いもーとかな?」

「どっちだろうね、楽しみだね」

「「うん!」」


 ジェイドさんは、ワクワクが止まらない双子ちゃんとニコニコしながら話をしていました。

 弟でも妹でも、どっちでも嬉しいよね。


「「はわわわわ……」」


 一方の辺境伯様と、産気づいたと聞いてスラちゃんが辺境伯領に連れてきたケーヒル伯爵様もワタワタが止まりません。

 因みに、スラちゃんは執務官の仕事をでケーヒル伯爵の屋敷に行った事があるんだって。


「あんなに挙動不審なお父さん、初めて見たよ」

「凄い落ち着きがないですわね」


 たまたま安息日だったので、エマさんとオリビアさんも王都から呼んできました。

 僕としてはワタワタしている辺境伯様を見るのは二回目だけど、双子ちゃんが生まれた時はエマさんとオリビアさんは学園に行っている最中だったもんね。


「エマ、オリビア、出産の時は旦那は役に立たないわよ。ステラとオリバーの時は、あえて王城に送り出したわ」

「そうね。うちの人も、軍人なのに出産の度にあたふたしているわ」


 そして、イザベラ様とケーヒル伯爵夫人からの旦那に対する強烈なダメ出しが出ました。

 そういえば、双子ちゃんの時は僕の誕生日パーティーと重なって、皆王城に行っていたもんね。

 何か辺境伯様とケーヒル伯爵の気をそらすイベントがあるかなと思ったら、何とイベントの方がやって来ちゃいました。


「お館様、街道を通っていた商人を盗賊が襲ったという報告がありました」

「なに、盗賊だと?」


 執事さんが辺境伯様に事件があったと報告したけど、これはあまり良い事じゃないよ。

 皆も、とてもビックリしているよ。

 でも、本当にビックリする報告はまだまだ続きました。


「そして、盗賊は森から出てきた巨大なクマによって倒されたそうです」

「「はっ?」」


 執事さんが報告した内容に、辺境伯様とケーヒル伯爵は思わず固まってしまいました。

 普通だったら、何言ってるのって感じだよね。


「「「クマちゃだ!」」」


 でも、ミカエル達は直ぐに何が起きたか分かりました。

 あのクマなら、生息域を脅かしたとして盗賊を倒しそうだね。


「商人はクマの護衛を受けながら、防壁の門まで来たそうです。ただ、商人は怪我をしているとの報告も上がっています」


 あのクマなら街まで人を案内するのは考えられるけど、怪我人が出ているとなると僕達の出番だね。


「いつも、皆が楽しそうに話をしているクマの事ね」

「あなた、ここにいても邪魔だから、あなたも様子を見に行ってきたらどうですか?」

「「うぐっ……」」


 イザベラ様とケーヒル伯爵夫人が、ぐさりと旦那に言い放ちました。

 確かに屋敷にいても、辺境伯様とケーヒル伯爵様は何もする事がないもんね。


「「「「クマちゃ、あいたーい!」」」」

「よし、私達も様子を見に行くか」

「事件だから、こればっかりは動かないとな」


 まだクマに会ったことがない双子ちゃんにレイカちゃん達は、ジェイド様とジンさん達と一緒に防壁の門まで向かう事になりました。

 さてさて、実際には何が起きているのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る