六百十一話 まさかのお仕事デビュー
エリちゃんが生まれた事で、僕達の身の回りにいる出産待ちはソフィアさんだけとなりました。
とはいえソフィアさんの出産予定は春前なので、まだまだ時間があります。
辺境伯家は、ジェイド様とルシアさんの結婚式の準備の方が忙しいみたいですね。
「ルカちゃんとエドちゃんは、絵本を読みましょうね」
「「はーい!」」
今日は王城に行って、皆でお勉強です。
薬草採取も一段落したので、お勉強再開です。
生まれたばかりの妹に良い所を見せようとしているのか、ルカちゃんとエドちゃんはレイナさんと一緒に張り切って絵本を読んでいます。
二人とも、ちょっとお兄ちゃんになっているね。
レイカちゃん達も、ルカちゃんとエドちゃんに負けじど絵本を読んでいます。
とっても可愛らしい光景ですね。
カリカリカリカリ。
リズ達も、一生懸命に勉強しています。
エリちゃんと触れ合えるのは、勉強が終わってからになっています。
ルカちゃんとエドちゃんが赤ちゃんの頃みたいに、エリちゃんと遊びたいパワーで課題をこなしています。
ミカエルとブリットも、頑張って文字を書く練習をしています。
「えっと、終わりました」
「えっ、もう終わったの? もう学園卒業レベルは超えちゃったね」
僕はというと、学園を卒業して官僚になる為の試験を解いていました。
前世の記憶にプラスして今まで勉強していた知識もあるので、スラスラと解くことができました。
採点しているカミラさんも、ちょっと苦笑しています。
「はい、官僚試験合格ね。しかも満点だわ」
「あら、レオ君凄いわね。でも、先にこの試験を解いていたスラちゃんも満点だったのよ」
ティナおばあさまの言う通り、執務官をやる上でスラちゃんも昨年末に同じテストを受けていたんだよね。
今回は、お互いに満点だから引き分けです。
かちゃ。
あれ?
勉強部屋に何故か宰相が入ってきたよ。
孫のカミラさんの所に行ったけど、何かあるのかな?
「そろそろ終わるかと思っていたわ。カミラ、どうだったか?」
「満点だったわ。全く問題ないわ」
「ほうほう、流石はアレク君じゃ」
話の内容はさっき僕が受けていた官僚試験だけど、二人とも良い笑顔だから何だか嫌な予感がするよ。
そして、宰相が満面の笑顔で僕に向き直りました。
「アレク君、お昼から儂の仕事を手伝って貰うぞ。試験もパスしたし、正式な官僚扱いじゃ。いやあ、産休で二人抜けたから人手が欲しかったんだよ」
「えー!」
宰相、何を言っているんですか!
いきなり官僚の仕事なんて無理ですよ。
僕は、思わず王妃様とティナおばあさまの方を向きました。
「アレク君なら何も問題ないわね。とっても真面目だし、直ぐに仕事を覚えるわ」
「他の官僚への刺激にもなるわね。服装も今着ている物で良いし、何も問題ないわ。頑張ってね」
も、もしかして、宰相とカミラさんだけじゃなくて、王妃様とティナおばあさまもグルですか?
という事は、今日受けたテストも仕組まれた物?
僕は大人の手のひらの上で踊らされていたと気付いて、思わずガクリとしてしまいました。
「アレク君、午前中はやる事はないからルカとエドの絵本を読むのを手伝ってあげてね」
「はい……」
笑顔で次の指示を出した王妃様に、僕は再びガクリとしながら返事をしました。
うん、大人達が何やらひそひそ話をしているけど、きっと僕にとって碌でもない事なんだろうなあ。
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