六百十話 ルカちゃんとエドちゃんに妹が誕生しました

「「がはははは!」」

「陛下、アリアの赤ちゃんが生まれたから王城に帰るわよ」

「あなた、皆さんが帰るから見送るわよ」

「「へっ?」」


 陛下と皇帝陛下はすっかり出産や育児の大変さで盛り上がっていたけど、肝心な話はもう決着したしアリア様の赤ちゃんも生まれたから帰りますよ。

 ティナおばあさまと皇妃様も、呆れながら二人を促していました。


「リルムちゃん、バイバーイ」

「またね」

「リズちゃん、エレノアちゃん、バイバーイ」


 リズ達は挨拶を終えたし、ジンさん達も帰り支度完了です。

 僕も、王城にゲートを繋げました。


「では、また近い内にお会いしましょう」

「ええ、良い知らせを楽しみにしておりますわ」

「ちょっと、待つのだ!」


 ティナおばあさまと皇妃様が挨拶しているのを見て、慌てて陛下がゲートの方にやってきた。

 そして、全員がゲートをくぐった所で僕もゲートをくぐりました。


「にーに、おかえりー」

「ねーねもおかえり!」

「「わっ、と」」


 王城に着くと、満面の笑顔のミカエルとブリットが抱きついて来ました。

 もう、生まれたばかりの赤ちゃんをみたんですね。


「ジー、あかちゃ!」

「いもーと!」

「分かったから、ちょっと落ち着け」


 ルカちゃんとエドちゃんは、ジンさんの手を引っ張って妹に会わせようしていました。

 ジンさんもびっくりしているけど、大好きなジンさんに一刻も早く妹を見せたいんだね。

 そしてエドちゃんからの話で、生まれたのは女の子だと分かりました。

 でもその前に、王妃様が立ちはだかりました。


「リズちゃん、エレノア、帝国に行った陛下は何をしていた?」

「うんとね、リルムちゃんのお父さんとずっと話をしていたよ」

「出産時は男は追い出されるとか、育児は大変とかって話をしていたの」


 王妃様は、あえて陛下じゃなくてリズとエレノアに何をしていたかを聞いていました。

 リズとエレノアが素直に全部バラしたので、陛下の顔色が変わっていきました。


「安心して、肝心な話はしてきたわよ。お互いもう少し大きくなってから、話をしましょうってね」

「とはいえ、前向きな感じで進めましょうって事になりました」

「ティナさま、アレク君、ありがとうございます。あなた、ちょっとお話をしましょうね」

「おい、ちょっと、あー!」


 陛下は、相変わらず身内の前ではポンコツだよね。

 きっちりする時は、威厳たっぷりなのにね。

 王妃様にどこかに連れて行かれる陛下を見送りながら、僕達は赤ちゃんを見に行きました。


「あうあう」

「「可愛いなぁ」」


 リズとエレノアが、思わずニンマリしながら声を上げていました。

 王家らしく金髪の女の子は、とても愛らしい顔をしていました。


「アリア、おめでとう。名前は決まっていたわね?」

「ええ、事前に決めていました。女の子なので、エリンと名付けます」

「「エリちゃん!」」


 アリアさん曰く、今回は最初から名前を決めていたみたいです。

 リズとエレノアは、既に愛称で赤ちゃんの名前を呼んでいました。


「本当に可愛らしいですわ」

「エレノアが生まれた時みたいです」


 アイビー様もルーシーお姉様も、ベビーベッドの側で赤ちゃんを見つめていました。

 ルーカスお兄様は、もう飽きちゃった他の子の相手をしていました。


「はいはい、出産したばかりでアリアも疲れているから部屋を出るわよ。赤ちゃんは逃げないから、またの機会にしましょうね」

「「「はーい」」」


 ティナおばあさまが皆に声をかけて、僕達は部屋を出ました。

 これからまた、騒がしい日々が始まるね。

 因みに陛下は、僕達が帰る時も姿を現しませんでした。

 後日王妃様に何をしたのかを聞いても、一切教えてくれませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る