六百九話 あっさりと難問は決着です

「ジン、新年なのに暗い顔だぞ」


 王城に行って王族のスペースに行くと、陛下がジンさんに先制攻撃を浴びせてきました。


「そういう陛下こそ、アリア様が産気づいて動揺が見えますよ」


 ジンさんも、負けずにカウンターを決めます。


「ほらほら、二人ともどうでも良い事で言い争いしないの。みっともないわよ」

「「むう……」」


 直ぐに呆れた表情を隠さないティナおばあさまが二人をとりなすけど、陛下と口喧嘩できるジンさんって凄い気がするよ。


「アリア様はどうですか?」

「今のところ、何も問題なく進んでいるわ。アリアも出産を経験しているし、大丈夫よ」


 ティナおばあさまはアリア様の出産は問題ないと言っているし、いる人でお任せして問題ないね。

 さて、じゃあ誰が帝国に行くのかな?

 あまり大人数で行ってもしょうがないので、僕とリズとジンさんにカミラさんとアレクサさんとアンリちゃんで行きます。

 他の人は王城でお留守番で、別の日に帝国に挨拶に行きます。


「今日は、私とエレノアと陛下ね。どうせ王城にいても、オロオロするだけで使い物にならないわ。ルーカスの方がしっかりしているわよ」

「ぷっ」


 思わずジンさんが吹き出してしまったけど、確かに男子がどうこう出来る事はないもんね。

 このメンバーで、帝国に向かいます。


「リズちゃん、エレノアちゃん!」

「「リルムちゃん!」」


 王城に着くと、三人は直ぐに再会の包容をしていました。

 本当に三人は仲が良いよね。


「これはこれは、わざわざ来ていただきたい恐縮です」

「こちらこそ急な来訪になり申し訳ない。連絡したがアリアが産気づいてな、男は邪魔だと追い出されたぞ」

「ははは、こちらも同じ事は経験している。気持ちは良くわかりますぞ」


 そして、陛下は皇帝と出産時には男は役に立たないという事で盛り上がっています。

 こっちは放置して良いですね。


「「わー、赤ちゃんだ!」」

「あかちゃ!」


 帝国の双子ちゃんとちっちゃなアンドリュー皇子は、ベビーカーの中にいるアンリちゃんに興味津々です。


「お母さんが美人さんだから、アンリちゃんも将来は美人さん間違いなしね」

「幼いのに、とっても可愛いわ」

「その、恐縮です……」


 皇妃様とケイリさんは、赤ちゃんに加えてアレクサさんの事も褒めていました。

 偉い人から褒められて、アレクサさんは顔を真っ赤にして下を向いていました。


「ケイリさん、アンドリュー皇子は今年二歳になりますよね?」

「はい。もう元気いっぱいで、遊ぶのが大好きなんです」

「分かりますわ、うちの子も男の子なので、早く薬草採取をしたいと言っていますわ」


 顔見知り同士のカミラさんとケイリさんは、お互いの子どもの話で盛り上がっています。

 ケイリさんも、しっかりとお母さんしているんですね。


「まだアンリが小さいのもあるので、もう少し大きくなったら話を詰めましょう。悪い話ではないと思いますわ」

「そうですよね。皇帝陛下もジン殿に女児が生まれたと聞いて、早くなんとかせねばと焦ったのですよ。勇者の血と教皇国のシスターの血をひく、素晴らしい人材を確保したかったみたいですわ」

「もう少ししてからに欲しかったですよ。出産祝いに紛れて手紙がきたので、本当に焦りました」

「皇帝陛下からの手紙を見た時、ジンさんは固まっていましたよね。レイナさんとカミラさんは、良いんじゃないかと言っていましたよ」

「暫くは外務担当で話を詰めるで

 肝心なアンリちゃんとアンドリュー皇子との婚姻の話は、ティナおばあさまと皇妃様とジンさんと僕が話をして決着しました。


「おや、どうやらアリアの赤ちゃんが生まれたみたいだわ。女の子らしいわね」

「「「わーい」」」


 そして、今度はアリア様の赤ちゃん出産のニュースが飛び込んできました。

 陛下ではなくてティナおばあさまの所に連絡がいったのは、きっと現時点で冷静に判断できるとされたんですね。

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