五百九十五話 バザール子爵領での薬草集めのチャンピオンは?
「では、私達は視察に向かうよ」
「夕方合流しよう」
軍務卿と農務卿は僕達に言うだけ言って、護衛を引き連れて治療研究所に向かいました。
色々考えてもしょうがないので、僕達も森に向かって薬草採取を行う事にします。
以前バザール子爵領の森で薬草採取を行っているので、ゲートを使って一気に移動します。
「風が気持ちいいね。今日は天気も良いし、午後も頑張れそうだよ」
リズは思わず背伸びをしているけど、確かにとっても気持ちいい陽気です。
早速、皆で薬草採取を始めました。
「確か、ここに沢山の薬草があったはずだよ」
サンディは前回僕と一緒に大量の薬草を見つけたので、その場所に他の人と一緒に向かいます。
その他の人も、思い思いに薬草採取に励んでいます。
「ここは襲ってくる動物や魔物が少ないな」
「そうね、周囲に特段気配は感じられないけど、このまま監視を続けましょう」
ジンさんとレイナさんが話をしているけど、念の為に僕が探索魔法を使っても周囲にはポツンポツンとしか反応がなかった。
という事で、僕もプリンも薬草採取を行う事にしました。
「まあ、競争してもしょうがないもんね。確実に薬草を採って行かないと」
僕は、いつも通りに自分のペースで薬草採取をしています。
薬草は大量に集めるけど、目の前には沢山の薬草が生えているので焦る必要は何もないもんね。
がさがさがさ。
「あー! プリンちゃんが沢山薬草を集めているよ!」
ふと僕の後方でリズの叫び声が聞こえてきたけど、スラちゃんが薬草採取の名人だから同じハイスライムのプリンが薬草を沢山集めていても不思議じゃないよね。
でも、プリンが沢山の薬草を集めた事で、リズはやる気を出してしまいました。
「むうー、プリンちゃんに負けないもん!」
「エレノアも頑張るの!」
「イヨも!」
こうして、三人と一匹による薬草採取競争が急遽始まってしまいました。
僕とジンさん達は、あーあって思いながらも薬草採取競争をしている組を眺めていました。
そしてリズ達が突発的にそんな事を始めても、良い結果など生まれない事は一目瞭然です。
「うーんと、これは薬草を一番集めたのはサンディね」
「「「えー!」」」
夕方になってカミラさんが皆の集めた薬草を確認していたけど、結果はサンディの圧勝だった。
以前貴重な薬草が生えていた辺りに普通の薬草も大量に生えていたので、サンディがいつも通りに薬草を集めていてもリズ達に勝ち目はありませんでした。
集めた薬草はバザール子爵領にある治療研究所で薬にするので、帰り道に治療研究所に寄って納品してきました。
そして、屋敷への帰り道、僕達はある人が店から出てくるのを見てしまいました。
「「「あー!」」」
「「あっ」」
以前にも寄った事がある食堂から、軍務卿と農務卿の一行が出てきたのです。
流石に軍務卿と農務卿も、ヤバい所が見つかったという表情に変わりました。
僕も、流石に買い食いレベルじゃないつまみ食いは駄目だと思うよ。
ブオン。
「軍務卿、農務卿。お帰りはこちらです」
「「う、うう……」」
僕は王城にゲートを繋いで、軍務卿と農務卿にニコリとしました。
二人ともリズ達の追及を逃れる為に、素直にゲートをくぐって王城に帰っていました。
「ふふ、二人から良い匂いがしていたから、王城に行ったら行ったで他の人から追及を受けるわよ」
少し笑っているティナおばあさまのいう通り、服から良い匂いがする所をよりによって陛下と王妃様に見つかってしまい、軍務卿と農務卿はバザール子爵領で何をしていたのかを追及されたそうです。
でも軍務卿と農務卿は、ちゃっかりとお土産用の最新ソースを購入済みだったそうですよ。
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